くそな朝
人間はくそだ。
あれやれ、これやれと言ってきてはなにもしない。
してくれない。
俺の父さんもそうだ。
「部活もう終わるんだから、全部行けよ。」
と怒る。
お前は未来が分かるのか?
違うだろ?
だから、俺は大事なこと以外は約束しない。
部活は大事じゃない。
今学校にも行けてないのに、部活行けだ?
冗談じゃない。
冗談でも許せない。
お前は俺の未来よりも一時の部活を取るのか?
未来も分からないのに?
だから人間はくそだ。
今日もそんなことを考えながら父さんの車に乗る。
そうしないと移動できないのだ。
Suicaの残高は残ってない。
定期もない。
つまり移動手段が車しかない。
スマホを手に取り、こんな小説を書いている。
本音で喋る関係でもないし。
怒ったら怖いし。
俺は空を見上げる。
父さんの肩が揺れる。
来た。
俺は言い訳を考える。
頭をフル稼働させながら。
「……昨日は部活行ったのか?」
俺は正直に答える。
正直に言わないと気づかれるから。
結局嘘を付いても怒られて終わりだから。
正直に言わないと……いけない。
「行ってないけど。」
あくまでも平常心を保て。
怒られても右から左に聞き流せ。
そう自分に言い聞かせる。
身体が無意識の内に揺れ始める。
やっぱり親子なんだな。
その事実を受け入れ始めている自分に気づいた。
「やっぱりか。」
父さんはため息を吐いた。
そして言った。
いつもと同じことを。
「いつも言ってるよな?」
「もう最期なんだぞ?」
「もう部活出来ないんだぞ?」
「部活に行け。」
何が最期だ。
部活が出来る専門学校に行くつもりなのに。
そもそも部活は俺にとっては苦痛でしかなかった。
身体中痛くなるし、下手くそだから怒られるし。
もうたくさんだ。
あと二週間だけ。
そう言い聞かせても心が動かない。
そんな場所なんだ。
だから、俺はたまにしか行かない。
まあ、今日がたまにの日なんだけど。
父さんがフロントガラスを見つめながら言う。
相変わらず肩を揺らしながら。
「部活に行け。」