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第3話 エセギャルちゃんは慕われたい

「こんな感じでどうでしょうか?」


 思わず見とれてしまうようなオシャレな髪型の店員が恵奈の髪を染めて、毛先を綺麗にすいた。

 恵奈は鏡で自分の姿を確認すると、見違えるほど変化していた。

 金色なのに、透き通るように綺麗な髪色。 恵奈は心から「この美容院にして良かった」と思った。


 元から顔の形の整っている恵奈は、黒髪の時でさえ人目を集めていたが、金髪にしたことにより、更に人目に付くことになるだろう。


「わぁ! とっても綺麗です! これでいいです。 いや、これがいいです!」


「そんなに喜んでもらえると、頑張った価値があったよ〜」


 店員はニコッと大人の優しさのこもった笑みを浮かべながら言う。


 全ての過程が終わると、恵奈はレジに向かう。

 対応は先程の店員がしてくれた。


「私実はあと少しで、経営者の立場を譲ってこの仕事を辞めようと思ったの。 正直やりがいを感じられなくなってきたの」


(この人経営者さんだったんだ!)


「でもね、あなたの嬉しそうな笑顔を見て思い出したの。 「この仕事をしたい」って思った時のことをね。 私はあなたのお陰で私はこの仕事を続けられる。 いや違う、この仕事をもっと続けたいって思えたの」


「ちょ、ちょっと待ってください! 仕事を辞めようと? でも続けたいって思えるようになった? あれ、よく分からないです!」


 いきなり感謝され、この経営者の人生を変えてしまったこのに、恵奈は驚く。

 この人の目は本気(ガチ)の目。 だから今言ったことは嘘偽りのない真実。 それでも話を理解できない。


「混乱させちゃってごめんね。 それでも私があなたに救われたことは本当よ。 だからお代は払わなくていいよ。 また来てくれると私も嬉しいわ」


「お、お代は払います!」


 経営者は成り行きで、恵奈がお代を払わないように仕向けたが効果は無かった。

 ギャルになると決めたが、真面目が残っている。


「いいえ、お代は結構です!」


「いえいえ、お気になさらず!」


「「ぐぬぬぬぬぬぅ……!」」


 数分間の言い争いの結果、経営者が勝った。 少し納得のいかぬ表情を浮かべる恵奈だが、負けは負け。

 経営者のご好意に甘えることにした。


「ほ、本当にいいんですよね……」


「えぇ、大丈夫よ。 今度来てくれたら、その時はお代を払ってもらうわ」


「当たり前です! ありがとうございました、また絶対に来ます!」


 申し訳のなさそうにする恵奈であったが、最後には笑顔で店を出ることが出来た。 それに対し、経営者は明るく手を振ってくれたのだった。


 ◆


(お金に余裕が出来たから、何かグッズでも買いに行こう!)


 当初の願いを叶えられそうでご機嫌な恵奈。 ちょうど十字路に差し掛かったその時──。


 死角から現れた謎の通行人と正面衝突をしてしまう。 と、思ったら恵奈は十字路に敏感になっており、華麗に交わす。

 それは恵奈だけではなかったようで、通行人も交わしていた。


 「もしや」と思い恵奈は通行人の顔を覗くと、先程出会った同士(オタク)であった。

 その左手には大事そうにレジ袋を握っている。 中に入っている物が大きいことが、袋を見たらすぐに分かる。


「あ、さっきの人……」


 通行人はしれっと呟くが、恵奈は驚きを超えた恐怖心を覚える。


「ど、どうして分かったんですか……」


「いや、さっき会ったばかりじゃん。 そんなすぐには忘れないよ。 ごめん、早く帰らないといけないんだ、じゃあね!」


 「当然だろ?」と言いたげな表情で言う通行人。 恵奈の胸に、変わっても自分を見つけてくれたという嬉しさが芽生えたのだった。


 ◆


 そして高校の入学式の日──。


 生徒達がソワソワしながら登校する中、恵奈は胸を張り、堂々と歩く。


(もしかしたら前の通行人さんに会えるかも?)


 視線を集める恵奈は、そう思いながら足を進める。

 生徒玄関には名前と、クラスが書かれていた。 恵奈は自分の名前を見つけ、そのクラスへ向かうと奇跡が起きた。


「通行人さん!?」


 恵奈は思わず大きな声を出してしまう。 恵奈の視線の先で席に座る男子は、通行人その人だった。


「ねぇねぇ、私のこと覚えてる!?」


 通行人の元に足早に歩み寄り聞いた。 ナンパの常套句のようになってしまったことは気にしないであげてくれ。


「ごめん、誰だ?」


 碧斗は初めて合う人を見る目を向ける。

 ギャルとなり、心機一転した恵奈であったが、大ダメージを受ける。 キメ顔で「いや、さっき会ったばかりじゃん。 そんなすぐには忘れないよ」と言っていた碧斗を思い出し、夢を見ているような気持ちになる。


 とにかく碧斗は恵奈のことを覚えていない。 その事実に恵奈は屈辱を感じ、高校生活で絶対に成し遂げる目標を決める。


(絶対に私にメロメロにさせてやるんだからね。 覚悟しておいてよね!)



 この時にはすでに始まっていたのかもしれない。 恵奈の片想いは──。


 ◆


 そして現在──。


「恵奈、この頃いつもと違うけれど大丈夫か?」


 碧斗は一年前の五月に瑠花に一目惚れをした。しかし恵奈は特に気にすることなく、瑠花がどこかに消えることを待っていた。 一年間ずっとだ。

 そして夢は叶い瑠花は先輩に寝盗られる。


(危ない危ない。 『悲しんでいる碧斗に優しくしたら、私に惚れるのでは作戦』がバレてしまうところだったわ)


「そうかな? いつも通りだよ」


 平然を装う恵奈。 口元はややひきつっているが碧斗は気づかない。


「私喉乾いたから飲み物買いに行ってくるわ」


 そう言って恵奈は逃げるように教室を去ってゆく。


 碧斗は朝からずっと誰かに話しかけられていたため、一息つく暇もなかった。 やっと訪れた平穏な時間に感謝し、大きな欠伸と共に、背伸びをする。

 昨日迂闊にも見過ごしたライブ配信があるため、スマホで観ることにした。


 しかし平穏な時間はもう終わってしまう。


「こんにちは碧斗さん」


 背後から声をかけられ、碧斗は何事かと体を声のした方へ向ける。

 そこには制服を上品に着こなした少女がいた。 非の打ち所のない立ち振舞い。 まさに大和撫子のような少女が微笑みを浮かべて碧斗をジッと見つめる。


「どうした、優愛(ゆめ)


「少しお時間をよろしいでしょうか?」


 優愛、こと佐倉優愛(さくらゆめ)は上目遣いで言う。

 この必殺技を出されると碧斗は自然と反対できなくなる。 気がついた頃には「いいよ」と言っていた。


 優愛に連れてこられたのは、非常階段の踊場。


「碧斗さん、彼女さんから振られた話というのは事実ですか?」


「あぁ、事実だよ」


 自分の黒歴史を掘り返されているようで、少し恥ずかしく思う。

 碧斗が認めた途端、優愛は笑顔で「ありがとうございます」と言って去っていった。


 佐倉優愛も、瑠花が寝盗られてからおかしくなった女子の一人だった。

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