第27話 恋する少女達同盟っ☆(前編)
恵奈が来ると、碧斗の良からぬ噂が広まっていた。──偏頭痛で昨日休んでいたので、どういうことなの、と焦りを覚える。
教室で挨拶を交わした碧斗の表情は暗く、それは見ているだけで苦しくなりそうだった。
恵奈は碧斗を好きな一女子生徒なので、見るのが辛くなり教室を出ようとしたその時だった──
「「痛っ」」
教室の扉の死角に人が居た。身長は低く、ぶつかるまで存在に気づけなかった。
「この子は……」
恵奈はぶつかった子のことを知っている。
(この低身長で整った顔のパーツ。—―伊集院朝陽さんだ。過去にアオっちと話しているところを見たことがあるし、あの時の顔は恋をしている顔だ)
よって恵奈は朝陽が同志であることに気づく。—―そして強敵だということにも。
「あの、伊集院さん。あなたってアオっちのことが好きなの?」
「はいっ⁉」
当たり前の反応だ。しかし恵奈は歩みを止めない。
「私はアオっちのことが好き――いや、大好きなの。今ってなんか噂流れてるじゃん?あれを無くすための仲間が欲しいなって思ってて……。伊集院さんも好きなら協力したいなって思って……」
「好きです……。私は先輩のことが大好きです」
いとも簡単に朝陽の本音を吐き出させてしまった。これが恵奈のカリスマ性だ。
「じゃあ協力ね」
そう言って恵奈が握手の為、右手を前に出したその時だった――
「そのお話、本当なのですか?」
影を消した優愛がふふふ、と微笑みながら問いかける。しかしその目は笑っていない。強敵の出現に焦っているのである。
「本当ですよ。あれれ、もしかして佐倉さんもアオっちのことが……?」
「……ええ、駄目ですか?」
お嬢様モードで言う優愛の姿に恵奈は両頬に手を当て、「きゃーっ!」と黄色い声援を上げる。
敵が増えているというのに、その敵を思わずきゅんとさせる。この力は佐倉グループを継ぐものとして、作り笑いや様々な表情を作っている内に身についたのである。
そしてスケバンとして生きていく中でもこの表情は強い。かよわい少女をよそをってナンパをしてきた男共を返り討ちにしてきたことは数えきれないほどあるのだ。
「よ~っし、私達三人が揃えば怖いものなんてない。頑張ってアオっちの噂を消し去るぞ~、お~!」
「「お、おー……」」
こうして恋する少女達同盟が結成されたのだった。
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