第25話 お姉さんの作戦
碧斗が学校に着くと、生徒玄関で由佳里が待ち伏せていた。
昨夜、明日の朝大事な話がある、とメッセージが来ていたので会う準備はしていたが、まさか待ち伏せているとは思っていなかった。
「おはようございます」
「碧斗くんおはよ〜」
以前は彼女を寝盗られたことを馬鹿にする風に、碧斗に絡んできた人は居たが、今は昨日流れた根も葉もない噂によって、由佳里のように話しかけてくれるのは、限られた人となってしまった。
「大事な話ってなんですか?」
「えっとね……。ここじゃ人目もあるからこっちに来て!」
そう言って由佳里は、スタスタと廊下の方へ足を進める。すぐ後を追ったが、「うわっ、先輩を口説いてるよ」と周りからは勝手な解釈をされてしまっている。
誰もいない物置と化した空き教室に着くと、由佳里は口を開いた。
「噂……流れているよね?」
「あはは……。そうなんですよ」
「私、頑張ってその噂を無くしてあげるよ」
「えっ!?」
想像と百八十度違ったことを言われ、碧斗は驚いてしまう。──由佳里の性格上ありえないが、他の人のように嫌なことを言ってくるのかと少し身構えていたのだ。
「それって上手くいく可能性って何パーセントくらいですか?」
らしくないことを言っている自覚は本人にもある。しかしそうなってしまうくらいに噂のことで頭がいっぱいになっていたのだ。
「ん〜、百パーセントかな〜。私やっぱり天才かもしれないな〜」
「そこまで言われると気になりますね。教えて貰ってもいいですか?」
碧斗は思わず固唾を飲み込む。それくらい由佳里の作品に希望を感じているのだ。
「うん、いいよ〜。私が考えた作戦はね〜、『私と碧斗くんが付き合う』っていう作戦〜。どう?良いでしょ〜」
んふふ〜、と声を漏らしながら言う由佳里の周りには、見えないが花が咲いていそうだ。
「ごめんなさい。それは変な噂が増えてしまうと思うのですが……」
「えぇ〜?そうかなぁ〜。いいと思ったのに〜」
由佳里は口を尖らして言っている。本人は割りと本気でいいと思っていたようだ。しかし碧斗はつい先日、彼女と別れたところだ。それなのに一度ふった学校の中で人気のある女子と付き合うのは流石に噂が広まるに決まっている。
噂が広まるから付き合わない。決してそういう訳ではない。
しかし碧斗は由佳里と出会ったばかりで知らないことだらけだ。そんな彼女と付き合うというのは、本当にいいことなのだろうか?──それに碧斗は由佳里のことをいいとは思うが、好きではないのだ。
「せっかく考えてくれたのにごめんな。俺の為に頑張ってくれている。それだけでも俺は嬉しいよ」
「え、えぇ~?そんなに誉められると困っちゃうな~」
碧斗自信は誉めているつもりは無いのだが、由佳里にとっては誉め言葉だったようだ。
しかしこの碧斗の言葉が、由佳里の心に火をつける。
「もう少し待ってて!今度こそは碧斗くんの噂を無くせるように頑張るんだから~!」
「ありがとう。自分でもできることは頑張るよ」
──他のヒロイン達も、大好きな碧斗の為に力を尽くすそうと頑張るのだった。
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