第24話 目的達成
「ねーねー由佳里ちゃん。橘碧斗くんが二股、三股ってしてるって話、知ってるー?」
昼休みの教室。麗華はいやらしい笑みを浮かべて言う。
今朝、颯斗が言った事は真実だと思っていない。
ただただ面白そうだったから乗ってあげただけだ。
「碧斗くんはそんな事しないと思うけれどな〜」
「でもみんなそう言ってるよ?」
「私は碧斗くんのことを何も知らない子達よりも、大好きな碧斗くんのことを信じたいかな〜」
由佳里は本気で碧斗に恋している。それはそれは麗華が、私もこんな風に誰かを好きになりたいな、と思うくらいだ。
「でももし、その橘碧斗くんが二股、三股ってしてたらどうするー?」
「ん〜……」
由佳里は顎に人差し指を当て、可愛らしく考える動作をする。
「それでも私が碧斗くんのことが大好きなことに変わりないから」
「そっか」
麗華は内心、面白くないな、と思うが決して顔に出さない。由佳里は今や颯斗と並ぶほどに学校内での人気が高い。よって由佳里に嫌われてしまうと、由佳里ファンから総叩きにあうからだ。
「ところで麗華ちゃん。碧斗くんの話は誰から聞いたの?」
「颯斗だよー」
「なら颯斗くんは誰から聞いたのか聞いてくるよ〜」
「うん、頑張れー」
颯斗を売ってしまった方が面白そうと感じた麗華は、躊躇うことなく言ってしまう。
◆
「ねえねえ颯斗くん。ちょっと今いい〜?」
「あ、ああ。いいぞ」
いつもは颯斗からは話しかけるが、由佳里から話しかけることはあまりない。だからか颯斗は話しかけて貰えたことをとても嬉しく思う。
(もう碧斗の噂が広がったのか。──もしや、由佳里は俺のことが好きになったのか……?あはっ、あはは。あははははっ)
脳内がお花畑となった颯斗は嬉しさのあまり、んふふ、といやらしい声を漏らしてしまう。
「実は聞きたいことがあって、颯斗くんに話しかけたの〜」
「聞きたいこと?」
(キター!!これは絶対「好きな人いる?」ってやつだ。モテモテで困っちゃうな!)
ナルシスト思考の颯斗は、今から由佳里の話すことを一言一句聞き逃さぬよう、しっかりと耳を澄ます。
「碧斗くんの悪い噂を麗華ちゃんに話したのは颯斗くんだよね〜?」
「うん、いないよ」
「いない?」
「えっ!?」
聞かれる前から言おうと決めていた言葉を放つが、どうやら話が噛み合わなかったようだ。
「ごめん、もう一度言ってくれない?」
「えっと、碧斗くんの悪い噂を麗華ちゃんに話したのは颯斗くんだよね〜?」
「ち、違うぞ……」
予想外の質問で、颯斗は理性を失いかける。
(麗華め……。どうして由佳里がそこまで知ってるんだ?アイツ、裏切りやがったのか……?)
「あれ、違うの〜?麗華ちゃんは颯斗くんから聞いたって言ってたけれどな〜。おかしいね〜」
「それは多分麗華の嘘なんじゃないか?」
「う〜ん、麗華ちゃんは嘘をつかなさそうだからな〜」
由佳里は、明らかに颯斗よりも麗華のことを信頼しているらしく、颯斗の嘘がバレるのも時間の問題なのかもしれない。
「白石さん。颯斗が朝、悪い顔して青柳さんに話しかけているところを見かけたよ」
クラスカーストの高い男子生徒がいきなり会話に混じってきて、一言言うとすぐに去っていった。
「どういうことなの?」
「そ、それは麗華が嘘つくといいんだよって俺に言ってきたからなんだ。だから俺は悪くないっ……!」
由佳里に嫌われたくない一心で、颯斗は麗華に罪を擦り付けるような言動をしてしまう。
それを間近で聞いた由佳里は、頬をぷっくら膨らませている。
「颯斗くん。自分の罪を、他の人に擦り付けたらだめだよ。私そういう人だいっきらいだから」
背筋が凍るような低音ボイスで、遠回しに嫌いと言われた颯斗は、教室の真ん中で人目を気にせず膝から崩れ落ちる。
「答えてくれてありがとね~」
物凄く早いスピードで声色の変わった由佳里に、傍観者でいたクラスメイトは少し怯える。
その後、颯斗はショックで保健室に運ばれた。
平和が訪れた教室で、由佳里はこの悪い噂をなくして碧斗くんにすかれちゃお~。と一人意気込むのだった。
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