第23話 嫉妬心の爆発
その日、東條颯斗の機嫌が悪かった。
原因はもちろん橘碧斗だ。
今朝中学時代からの親友から、とある情報を聞いた。それは、碧斗が朝陽と付き合ってるらしいよという情報。
瑠花という可愛らしい彼女を持ちながら、密かに由佳里に恋心を抱いている颯斗は、非常に腹が立った。
(新参者のくせに、由佳里に愛されて……。どうして、どうして、どうして?俺は碧斗と違ってずっと由佳里のことが好きだった。──それも碧斗が由佳里と出会うずっーと前から。それなのに……っ!)
教室の自分の席で、颯斗は歯を食いしばる。こめかみが刺激される。だが、全く冷静になれない。
「颯斗〜。普通に白石が橘碧斗と関わりたくないって思うようにしたらいいんじゃない?」
「……」
「颯斗さ〜ん?」
「そうだな。それがいい」
じっくりと考えてから颯斗はやっと口を開く。
「でもどうしたらいいのかが、思いつかない……」
「そんなの簡単だよー。颯斗は女子からの人気が高いだろ?それを利用するんだよ」
「……利用?」
「そうだ」
つい数ヶ月前までは純粋に由佳里を好いていただけなのに、今では他人の彼女を寝盗り、勝手にキレている。
そんな颯斗の耳元で悪魔は囁いたのだ。
「は、ははっ……。そうだ、使える《《物》》は利用したらいいんだ」
心の芯まで悪魔の掌の上で踊らされている颯斗には、もういい事と悪い事の区別がつかなくなってしまった。
「やあやあ、おはよんっ!」
そんな最悪のタイミングで、教室に更なる悪魔が現れる。耳に沢山のピアスをつけた彼女の名前は青柳麗華。
彼女は耳に入った情報を、いち早く学校中に広めるという、スピーカーのような人だ。
「おはよう、麗華」
挨拶を返す颯斗の口元はニヤケているをこえて、もうぐちゃぐちゃだ。
謎の圧を放つ颯斗に、麗華はワクワクを感じる。
「どうしたの颯斗。何だかすっごい嫌な顔してるね」
「そうか?ちょっと麗華に話したいことがあってな」
「ふふ〜ん?面白くなかったら許さないよ」
「安心しろ。最高のネタだ」
そう言うと、麗華の耳元で沢山の嘘をついた。
颯斗自身は事実と勘違いしているが、碧斗と朝陽が、付き合っている。という話題から始まり、次は二股、三股をしているという話題。
次第には瑠花が颯斗と付き合ったのは、碧斗が何人もの人を好きだから、と言った。
麗華は終始、目を輝かせて聞いていた。
(麗華も楽しそうだ……。これはもう俺の勝ちだな、ざまぁ橘碧斗……!)
今にも声が出てしまいそうだが、颯斗は必死に堪える。そのせいか、肩は上下に揺れているが誰も気づいていないので良しとしよう。
颯斗と麗華が話している隣で、この作戦を提案した男はと言うと、颯斗よりも酷い顔をしていた。
しかし麗華はいい意味でも悪い意味でも口が軽い。それが今後、颯斗の首を強く絞めることになるが、この時は誰も知らない。
だが、少なくとも今颯斗から麗華へと渡った情報は、碧斗の精神をしっかりと蝕むのだった。
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