第21話 彼女をNTRれた少年は誤解さ…
「おい碧斗。この写真はどういう事だ!?」
学校に来て早々に碧斗はクラスメイト達からの質問攻めにあっていた。
クラスメイトを代表し、冬馬が見せてきた写真は、スーパーで朝陽と一緒に居る写真。
碧斗はこの写真がどこで、誰に撮られたのかを考えるよりも先に、クラスメイト達からの冷たい視線に気になっていた。
「それは学校の近所のスーパーで買い物していたら、偶然一年生に会っただけだ」
「じゃあこれは?」
冬馬はスマホを操作し、次は二人が駅で並ぶ様子が撮られた写真を見せてくる。
(これはやってることストーカーだろ)
碧斗は思ったことを思わず口に出してしまわないように気をつけながら──
「降りる駅が同じなんだよ」
「「「「へー?」」」」
「絶対信じてないじゃん!」
いつも通り碧斗がツッコミを入れたその時だった。教室の扉が開かれ、金髪のポニーテールを揺らしながら恵奈が入ってくる。
「おはーっ!」
「「「「おはよ」」」」
「えっ、どうしたの。みんなテンション低いね」
「碧斗が付き合ってることが判明したんだよ」
通常運転かのように、根も葉もない噂を流す冬馬の言葉に碧斗はすぐに「付き合ってないぞ!?」と訂正を入れる。
「嘘、でしょ……」
手に持っていた鞄を床に落としながら、恵奈は呟く。目は虚ろで顔は下を向いている。だから嘘だぞー?と、後から言う碧斗の言葉にも耳を貸さずに。
「アオっち。いつから付き合っていたの?……もしかして前に付き合っていた時にはもう──」
「だから違う!好きな人なんていない〜!」
その言葉は廊下からも聞こえる。
廊下には偶然にも優愛や朝陽も居て、心に絶対不可避の大ダメージを受ける。
「好きな人なんていない」は恋敵達に気がないことを示すのと同時に、自分にも気がないことを意味するのだ。
碧斗は少し前に由佳里から告白を受けた際に、よろしくはないが「好きな人がいる」と言った。しかしみんな忘れているようだ。
「うっ……」
一番至近距離で目を合わせて言われた言葉に、誰よりも恵奈がダメージを受ける。
その瞬間、周りからの冷たい視線は更に冷たくなり、碧斗は教室に氷河期が訪れたと錯覚するほどに寒気を感じる。
「女子を弄ぶ趣味があったなんて……」
「嘘ぉ……」
「美女達はみんなの美女だ」
「そうだそうだ」
などと言われ碧斗も面白くない。そんなギスギスした教室にも助け舟が来る。
「碧斗くんはその子と付き合ってないよ」
ハキハキとした口調で言ったのは碧斗達の一つ上の先輩。白石由佳里だった。
「「「「……」」」」
「もう一度言うよ。碧斗くんはその子と付き合ってないよ」
「何か証拠とかあるんですかー?」
「うん。あるよ」
ゆっくりと一度瞬きをしてから由佳里は言う。
「だって碧斗くんは私のことが大好きだから。私のことが大好きなのに他の子に手を出すわけがないんだよぉ〜」
「「「「「?」」」」」
「ふふふ」と微笑みながら言う由佳里に、碧斗を含めたそこに立ち会わせた人全員が首を傾げる。数秒後、教室の扉が力強く開かれる。そして風紀委員長であり由佳里の親友の、鬼塚遥希が姿を現す。
少し気まづそうな表情を浮かべ、由佳里のセーラー服の襟を掴んで言う。
「頼むから馬鹿なことを言うのは辞めてくれ」
「馬鹿なことじゃないですぅー。事実ですぅー」
まるで拗ねた子供のような事を言いながら由佳里は引きづられてゆく。
「この写真、降りる駅が同じで偶然一緒に居ただけだな」
冬馬は自分のスマホを見つめながら言う。それに続いて、クラスメイト達も「うんうん」と頷いている。
由佳里の意味不発言で全員の目が覚めたのだったのだ。
「だからそう言ってるだろ!?」
碧斗の発言も無視して、みんな目を閉じて頷いているのだった。
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