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第2話 エセギャルちゃんは前を向く

【如月恵奈】について話すとしよう。


 恵奈はクラスの中で、否、学校中で認められているギャルだ。

 髪は明るい金色。 高い位置でポニーテールをされている。

 そして耳にはピアス。 誰もが一目見て「あ、ギャルだ」と口ずさんでしまうくらいだ。

 更にはスポーツも抜群。 部活には所属していないが、試合などに救援を求められることも多々ある。


 そんな恵奈にも絶対にバレたくない秘密がある。

 それは学力が中の下ということや、処女であるという低次元の話ではない。

 その秘密とは、恵奈はエセギャルということだ。


 恵奈は東京とは遠く離れた、北陸の山奥の中学に通っていた。

 当時の恵奈はクラスメイトからイジメの対象にされていた。 理由は重度のオタクだと言うこと。

 「オタクの何が悪い!」と言いたくなる気持ちも分かる。 しかし人のいない田舎では、オタクの数が極小数。

 自分とは趣味嗜好(しゅみしこう)の違う人、ましてやその人には頼れる友達(なかま)がいない。 気がついた頃にはイジメは始まっていたのだ。


 耐えられぬような罵詈雑言(ばりぞうごん)の嵐。

 思い出すだけで涙が溢れ、眠れぬ夜。

 両親は愛する娘を思い、学校に相談をしてみたがあまり効果は無かった。


 不幸中の幸いにも、イジメが始まったのは中三の秋。 恵奈は約半年の間我慢したら、辛く涙する生活は終わったのだ。


 恵奈は両親と話し合った結果、誰も知っている人のいないであろう東京の高校に受験し、住むことにした。

 恵奈は稼ぎのいい両親のおかげで、東京のセキュリティ設備が完璧なマンションの一室を借りることができた。



 ◆


 引越しの大イベント、『荷物が多すぎて一向に荷解きが終わらない!?』を終了した恵奈の表情は、疲労感を感じさせないような達成感で満ちていた。


「ふぅー、パパとママには感謝だよね。 こんな私のためにたくさんお金を使ってくれて……」


 することが無くなり、一人ぼっちを実感してしまった恵奈の胸に罪悪感が黒く渦を巻く。

 しかし──。


「いや、ダメだ! 私は高校で変わってやる! きらっきらのギャルになって、みんなに誇れる自分になる。 そして、大好きなパパとママに最高の親孝行をしてやる!」


 恵奈は自分の頬を『ペチン!』と叩き、そう宣言する。 その目には強い光が宿っており、つい半月前までイジメられていただなんて、誰も思わないだろう。


「ギャルになるなら形から入らないと!」


 恵奈は静かな部屋の真ん中でそう口にすると、勢いよく立ち上がる。 そしてダイニングテーブルの上に、置かれている封筒を握る。


(パパとママは、「これで少しでもオシャレをしなさい」って言ってたくさんのお金をくれたけれど、こんなに貰っちゃって良かったのかな……)


 封筒の頭から中を覗き込むと、諭吉や栄一と目がバッチリ合ってしまう。


「使っていいね?」


 聞く人がいないので、ちょうど目が合った二人に聞く。


「「……」」


 当たり前だが反応はない。

 もし反応があれば、恵奈は大声出叫び、新幹線で片道約三時間かかる北陸-東京間を、猛ダッシュで駆け抜け、懐かしの実家に(※家を出て一日も経ってません)帰ってしまうところだった。


 こう迷っていても時間の無駄。

 判断力を付けることは『ギャルになるための険しい道のり』と自分の心に叩きつけて、必要最低限の物の詰まった鞄と共に部屋を出た。


 少し先に隅田川を眺められる、千代田区のマンション。 恵奈は初・東京&初・一人暮らしにテンションを上げ、お得意の運動力を生かし東京駅まで駆け抜ける。

 スマホの指示に従い電車に乗り、着いたところは(オタクの聖地)秋葉原。


「ついつい来ちゃった、秋葉原! でもこれでいい」


 何故かって? それは家を出る前に予約を完了した美容院が、秋葉原にあるから。

 恵奈は抑えきれない「美容院を出たら聖地巡りでも……」という欲求に釣られ、その美容院を選んでしまった。


 しかし当の本人は全く気にした様子でもなく、うきうきとしている。 何色にも染まっていない純粋な黒の長い髪を揺らし、スキップを交えて目的地へ向かう。


 ちょうど十字路に差し掛かったその時──。


「「うわっ!」」


 死角からいきなり現れた人に、恵奈も通行人も、お互いに驚くが、咄嗟だったため静止することができずにぶつかってしまう。


 恵奈は尻もちをついてしまったが、痛みは残らなかった。

 ここで骨折でもしていたら『ギャルになってみんなに誇れる自分になる計画』が水の泡だ。 だから大した怪我をしなくて良かった。


「ごめんなさい。 俺、急いでて気づきませんでした」


 そう言って通行人はしっかりと頭を下げた。

 咄嗟となると、社会人でも極わずかの人にしかできない頭を下げた謝罪。 恵奈も負けじと頭を下げた。


「大丈夫です。 私こそごめんなさい!」


「俺も大丈夫だよ」


 通行人は爽やかな笑みを浮かべて言うと、スマホで現在時刻を確認した。

 恵奈の視界に映る通行人は、恵奈と同い年くらいの男の子だった。


(都会の高校はいい人が多そうで良かった、良かった!)


「ごめんね、グッズの期間限定発売が終わっちゃうから俺は行くね!」


 恵奈はフラグに近い事を思っていると、通行人は慌てた表情で言い、その場を去っていった。

 東京に来て初めて話した人は、自分と同じくらいの年齢で優しかった。 それに私と同じでオタク。

 恵奈は心から通行人と出会えたことを喜び、足早に美容院に向かった。



 もしかしたらもう気づいている人もいるかもしれない。 そう──、恵奈が出会った通行人とは橘碧斗その人だった。

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