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第15話 エセギャルちゃんは解釈する

 放課後。二年生の教室にまたしても客人が来ていた。


「碧斗くん!この前のお礼としてカフェで奢りたいのだけど、いい?」


 恵奈が前にいるというのに由佳里は堂々とデートに誘う。碧斗は申し訳なさそうにしている。

 以前由佳里の家までついて行ったが結局なにもしていない。それなのにカフェで奢って貰っていいのだろうか、と。


 由佳里の誘いは誰がどう見てもデートのお誘いだが、恋愛には鈍感な碧斗は気づいていない様子だった。

 結局碧斗が「分かった」と言い二人はカフェに行くことになった。


「良かった〜」


 由佳里は相好を崩しながら言う。

 その隣で恵奈は「良くないよぉぉ〜!!」と心の中で叫んでいる。

 しかし声に出していないから届かない。

 他に生徒の居ない教室が静寂に包まれる。


 恵奈は少し間黙り込む。そして、よし、と声に出して決める。

『私は白石先輩なんかに絶対に負けないぞ』と。


 ◆


「アオっちおはよー!」


 恵奈は満点の笑顔で教室に入る。

 周りからはクスクスと暖かい目で見られているが、少しも気にしない。

 なぜなら由佳里に負けたくないから。今も「絶対に最後に笑うのは私なんだから」と思っている。


「おはよ……」


「あれ〜?アオっち眠そうだね」


「ん?ああ。昨日寝た時間が遅かったんだ」


「そう。寝た時間ね……」


 真顔で話す恵奈。しかしその内側は焦りと混乱で、大量の"ミニ恵奈"が叫び合っている。

「もしかして昨日白石先輩とそのまま!?」と。


「そういえば昨日のアニメ見たか!?」


「アニ、メ……?」


「そうそう!名前、なんだったっけな」


 そう言って碧斗は右手を顎に当て、難しい表情をする。

 恵奈の前に一筋の希望が現れる。


 寝た時間が遅いのは由佳里は何一つとして関係ないのでは?

 それに私も昨日は好きなアニメの放送日だったからリアタイで見ていた。

 もしかしたらアオっちも?


「そのアニメって、ゴブリンが日本人に転生するって話?」


「そうそう!名前は確か……」


「ゴブ転!『ゴブリン。日本人に転生する』!」


「あ!それだよ!──あぁー、スッキリした!」


 碧斗は嬉しそうに微笑む。恵奈は急に胸を掴まれたような感覚になり、少し苦しくなる。


 好きな人は目の前にいるのに、思いは伝わらない。その上、私なんかよりも綺麗で可愛い先輩に告白されている。

 それなのにアオっちは、私に微笑んでくれた。嬉しい、嬉しすぎるよ。


 恵奈は顔を、カァー、っと熱くする。

 胸の鼓動が早くなって、自分でも首の脈が分かるようになる。

 心臓の音が碧斗に聞こえるのではないか。と思うが、そんなことはないようだ。


 ん。そういえば、『ゴブ転』の新刊の発売日に、サイン会が近くの書店であったはず……。

 行きたい!──アオっちと行きたい!


「アオっち」「恵奈」


「「……」」


 タイミングが重なり少し気まづくなる。


「何?アオっちが先に言って」


「今度『ゴブ転』のサイン会が近くであるの知ってるか?それに一緒に行かないかな。って思ったんだが……。どうだ?」


「へ?」


 自分が今から言おうとしていたことと同じことを言われ、恵奈はつい間抜けな声を出す。


「行く。絶対に行く!」


 思ってもみなかったことで、多少言葉は詰まってしまったがすぐに賛成の意を示す。


「良かった」


 以前、初めてサイン会に行った時は女性ばかりで気まづかったからな。女子の恵奈が居れば安心だな。


 碧斗は過去の失態を思い出す。



 どんなジャンルの作品にでも冒険する碧斗は、その日少女漫画のサイン会に出向いていた。


「うげっ。女性ばっかじゃん……」


 周りにはギリギリ聞こえないくらいの声で、碧斗は呟く。

 周りにはたくさんのファンが集まっているが、碧斗以外は全員女性。

 女子生徒にでも普通に話すことの出来る碧斗でも、眉間に皺を寄せるくらいにたくさんの女性がいた。


 所々から『お前少女漫画読んでんの?』という冷たい視線が飛んできたのだ。


 それが原因で碧斗は少年漫画やラノベのサイン会に顔を出さなくなったのだった。



「『ゴブ転』、読み終わったら感想共有しようぜ」


「いいね」


 言葉ではシンプルに伝えたが、恵奈の心の中では先程まで叫びあっていた"ミニ恵奈"達が一斉に踊り出す。


 きゃー!!!アオっちは私とサイン会に行きたいって思ってくれていたの!?(※碧斗は気まずくならないようにするために誘っただけです)

 それってつまり、私を好きってこと!?(※勘違いです)でも言葉で「好き」って言うのが恥ずかしいからって、サイン会に誘うんだ~。アオっちって案外可愛いところあるじゃ~ん!


 碧斗はただ、一人では行きにくいから誘っただけなのだが、その隣で恵奈は都合のいいように解釈をして勝手に楽しんでいるのだった。

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