第14話 ミスターコンの覇者は語る
「実はな──」
颯斗はゆっくりと語り始める。
◆
三年生に進級する前の春休み──。
俺は友達に「週末にカラオケ大会をするが、お前も来ないか」と誘われた。ストレスも溜まっていたから二つ返事で引き受けた。
そしてすぐに週末は訪れた。待ち合わせの駅前に向かうとそこには数人の男子、だけではなく女子もいた。
今までに何度も女子も含めて遊んだことがあったから何も問題はない。しかし今回は後輩がいた。
名前は瑠花と言うらしい。
顔はとてもいい。愛想もよく話しやすい。
俺はカラオケに来たというのに一曲も歌わず、終いには瑠花と連絡先を交換した。
そしてカラオケ大会はお開きとなり、《《俺と瑠花以外》》は各々家に帰った。
そして俺と瑠花は夕食を共にして別れた。
あの時俺は瑠花とはもう遊ぶことは無いと思っていた。なぜなら瑠花は一年年下の橘碧斗とか言う男子と付き合っているらしい。
俺は努力を二年間積み上げてきたお陰で全校生徒からの人気は高い。そこで浮気疑惑などを付けられると困るからな。
しかし三日後。瑠花から遊びの誘いが来た。
最初は断ろうと思っていたが、文字だけだった連絡はいつしか通話となり、俺は瑠花と遊ぶ約束をしてしまっていた。
断ろうとしていた割には、俺は乗り気で瑠花との待ち合わせに向かった。
瑠花は布地面積が小さい服に身を包み、姿を現した。
とても美しく、俺は思わず見とれてしまった。好きな人がいるというのにも関わらず。
そうやって何度が瑠花と会い、俺は瑠花と付き合ったのだ。
◆
「へー。そういう事だったんだね。颯斗は昔から一途だからどうして瑠花と付き合ったのかを気になっていたんだよ」
「一途ね……」
クラスメイトから言われ、颯斗は寂しそうに下を向く。
目の前の二年生の教室からは、由佳里が楽しそうに碧斗に話しかける声がする。
「俺は一途なんかじゃねぇよ」
と、眉間に視線を寄せながら颯斗は自分の教室へ去った。背中で由佳里の楽しそうな声を聞きながら──。
『颯斗先輩、今日の放課後部活ないですよね。一緒にカフェにでも行きません?』
昼休みにスマホを開くと、瑠花からメッセージが届いていた。
颯斗は自分にウンザリしていた。
自分は高校に入学してからずっと白石由佳里のことを好いていた。それなのに他の女の子を好きになってしまった。そう、二股だ。
その上、彼氏持ちを寝盗ってしまったのだ。
『わかった。どこに集まればいい?』
颯斗はすぐに送信する。自分にはウンザリしているが瑠花は好きだからだ。
◆
放課後。颯斗は瑠花と共に今人気のカフェに訪れていた。
店内には学校帰りの制服を着た生徒がまばらに見える。その中に碧斗が居るところを颯斗は見つける。
しかも目の前の席には美味しそうにパンケーキを頬張る由佳里の姿が。(※碧斗は以前由佳里を助けたお礼を受けている)
颯斗は眉間にシワを寄せるが、すぐに「今は瑠花とのデート中」と考えを改める。
本当は由佳里が碧斗に見せるあの笑顔は俺に向けてほしかった。しかしそれは叶わぬ願いだ。
そして颯斗は決意する。「由佳里のことは絶対に碧斗には渡さない」と。
こうして碧斗の回りにはまた一つ、厄介なことが起きようとするのだった。
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