第10話 告白の行方
金曜日の昼休みが始まってすぐの頃──。
碧斗のクラスに一人の少女が訪れた。 隣に風紀委員長、鬼塚遥希という学校一強いと名高い女子を連れて。
「碧斗くんいる〜?」
由佳里のおっとりとした口調の声が教室中に響く。
「おい碧斗どういう意味か説明しろ」
「俺は知り合ったばかりだ」
と、誰よりも早く碧斗に苦情を言いに来た冬馬に言う。
真面目な顔で言われ、嘘では無いことが分かった冬馬であったが、それはそれで引っかかることがあるようだ。
そして「お前はこの学校の美女達と仲が良すぎだ。 この女たらしめ。 と言い捨ててこの場を去ってゆく。
勝手に苦情を言いに来て、帰り去った冬馬の背中をぼんやりと眺め、碧斗は「なんだアイツ」と思う。
「見つけた、碧斗く〜ん♡」
「うわっ!」
耳元で由佳里の声がしたと思うと、いきなり後ろから強く抱きしめられる。 いわゆるバックハグと言うやつだ。
碧斗の防衛反応が働き直ぐに由佳里の腕を解くが、周囲は激しくザワついている。
「碧斗くんのお陰で、お母さんが知らない男の人を家に連れてくることがなくなったよ。 家の外ではどうかは知らないけれどね」
「そうですか。 やはり俺のお陰ですよね」
嬉しそうに言う由佳里に、碧斗はわざとらしくドヤ顔を決める。
碧斗はつい周りから見られていることを忘れている。 そんな時に由佳里は意を決して口を開いた。
「碧斗くん、実は今日私がここに来たのは理由があってね」
「理由?」
いきなり言われ、碧斗は首を傾げる。
「碧斗くんのことが好き♡ 私と付き合って!」
「「「「「はぁ〜!?」」」」」
由佳里は出会ってから一週間も経ってない男の子に告白をする。 しかしそれに答えたのは碧斗ではなく、クラスメイト達。
この出来事はすぐに隣の教室へ、そして違う学年へ、そして最終的には学校中に広まる。
「え、えと……。 白石先輩は俺に告白をしたってこと?」
今ここにいる人の中で、碧斗は一番状況を理解出来ずに一人混乱していた。
「そうなの。 私は碧斗くんのことが好きすぎちゃって告白しちゃった♡」
この光景を見ている男子はハンカチを噛み締め、女子は黄色い声援をあげる。
碧斗はと言うと……。
(う、嘘だろ。 俺、白石先輩と会って間もないんだけど……。 絶対に告白ドッキリとかそんなんだろ。 だって隣に鬼塚先輩もいるし……)
この告白はドッキリだと勘違いしていた。
しかし勘違いをしているなどと周りは気づいていない。 碧斗が返した言葉は──。
「ごめんなさい。 俺、好きな人がいるんです」
まさかの嘘をついた。
良くないことだが、由佳里の隣から遥希の睨むような視線をひしひしと感じる。 それに怯え、つい嘘をついてしまったのだ。
(白石先輩もドッキリということは実質嘘ですよね? だ、だから俺も嘘をついても大丈夫なはず)
由佳里は振られた。 しかしその表情には一切悲しさは見当たらない。
「振られるのわかってた。 でもね、私は諦めないからね《《あおくん》》♡」
(その呼び方って……。 いや、ないか)
碧斗の心の中に何かが引っ掛かったが、すぐに忘れ、コンビニパンの入った袋を持ち屋上に向かう。
教室でその様子を見ていた生徒は、全員静止していたのだった。
この告白イベントは、碧斗には好きな人がいるというところまで含め、学校中に広まった。
もちろん碧斗に思いを寄せるヒロイン達。 そして碧斗の元カノである瑠花や、その今の彼氏の颯斗までも。
この時は誰も知らなかった。 この告白が様々な人の人生を狂わすということを──。
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