第二十話 アタシの初仕事
今回は題名の一人称から分かる人は分かると思いますが、ピアナラ視点で物語を進めます。
この先もそれぞれのみんなの視点で進めてみよっかなぁ~
アタシは今街に向かっている。フルファンテでの初仕事として、魔力暴走で発生した風の悪魔の解放をするためだ。
元々、ヴェントと同じ仕事に行くつもりだったけど、コレンテが剣しか使えないことと、アタシが母の魔力暴走を解放したことから、交代となった。
魔力暴走には魔物と同じような核がどこかにでき、魔力暴走を起こした人を包み込むように形を形成する。それを破壊すればいいのだが、核は魔力暴走で生じる要因の生命源であり、同時に魔力暴走を起こしてしまった本人の体の一部でもある。
核だけを破壊すれば問題ないのだが、核と体を繋げる線を傷つけると繋がっている体の部位に深刻な傷を負わせてしまう。
この大陸では魔力暴走した場合、解放の際の怪我はすべて自己責任となるが、解放の際に誤って体の肺や心臓、脳と言った部位を傷つけたり、誤って殺してしまった場合は死刑とまではいかないが罪に問われる。
つまり、フルファンテがやるこの魔力暴走の解放は恐らく細心の注意を払って仕事をしなければいけない。
アタシ達はフェルメッツァを除いて魔法を基本として戦う。そのため移動速度はヴェントのような近接戦闘を中心にする人達と違い、かなり遅いため移動手段としてマナテが手懐けたと言う二足歩行のトカゲのような生き物に乗る。この生き物は確かビプチェトラ……だっけ?アタシの家の近くに生息してるはず。というかこいつって人を平気で襲うような危険種じゃなかったか?
ま、まあ、それだけマナテが凄いってことにしておこう。考える時間よりも今は仕事の方が大事だからな。
乗り心地は結構快適。最初は慣れなくて結構グワングワンして何回も振り落とされてたけど、一工夫加えれば乗れた。そう、ビプチェトラと枝で体を結べばいいのだ!
フッ、我ながら天才だぜ。
しばらく移動すると、本来向かうべき街が見えるのだが、それは風の悪魔によって見えなくなっていた。
風の悪魔は、アタシの見た母の草の悪魔とは違い、大きく、人を巻き込み竜巻や嵐といった天気をもはるかに凌駕する風を放っていて、かなり離れたところにいるこの場所にも強風が来る。つまりあの街はそれよりも何倍、何十倍も強い風が吹いているというわけだ。
でも1人で突っ込んでどうにかできるレベルじゃない。だから仕事に4人以上と書いているんだ。それくらい誰だって分かるし、改めてここへ来てこれでも足りないんじゃないかという疑問さえ湧き始めた。
そう思いながら私は焦りと恐怖による冷や汗をかいた。でもみんなはいつも通りの表情、動きだ。
みんなを見ていると、不意に自信が湧いてきた。ここで立ち止まってたら、オリジンなんて殺せない。
母が安心できる状況にしてあげられない。
アタシは思いっきり深呼吸する。ヴェントは戦闘を始めるときに集中するために深呼吸しているのを聞いた。アタシは戦闘のためじゃないけど、今のこの状況に正面から対抗するために。
まずはみんなで風の悪魔をどう対処するか、作戦を練り始める。
作戦の主軸となるヴェントの母、ヴォラーレは吹いている風に炎を入れ込み、風を操る。案外魔法の使いようによっては多くのものを操れると、初めて知った。
リセルカは風の悪魔の誘導をする。幻影で挑発したりして街から遠ざけるようだ。街の近くには、森が広がっていて、風が弱くなる。これは今まで植物と触れ合った私だから言える。
フェルメッツァは地形を変化させて、風の行き場を減らす役目だが、アタシの方が向いているということを説明し、フェルメッツァが核を破壊することになった。フェルメッツァもその方がよかったのか、即決していた。
アタシの役目は風を弱くすること。炎に風が集まると言っても強すぎたら集めても炎が安定せず、消えてしまう。
やることが各自決まったので、街へと向かう。
「コンフォルジェレ。」
ヴォラーレのその魔法の一言から始まった。
火災旋風。これは風が強い時に起きやすい一種の災害。竜巻と炎が混ざった光景は人のものではないと思えるだろう。
でもそれが1人の手によって、現実となっている。いつも見ている火とは違う、青く輝く炎が風を巻き込み、1つの竜巻となって、天高く伸びている。それなりにその火災旋風から離れているものの、空気が吸われていき、今ここにいるアタシだってあの中に吸い込まれそうだ。
でもそれは取り込んだばかりで、周りの風も強いから。少しずつ火災旋風も風が強すぎて少しずつ形を崩してきている。アタシは言われた通り、植物をそこら中に生やして風を弱くする。上空の風も弱くできるよう、木だってどこまでも伸ばしていく。
「大海樹林。」
アタシは火災旋風の周辺を植物でいっぱいにした。地平線にどこまでも広がる海。見たことはないけど、母が行っていたいつかは入ってみたい海。そんなことを思う広大な樹林を作った。
風も大分収まったのか、火災旋風も一定の位置で止まっていく。
せっかくなので風の悪魔の方を見てみると、風の悪魔は、街を出ている。よーく目を凝らして見れば、フェルメッツァが空中で移動しているのが見える。
しばらくすると、風の悪魔が離れたこともあって、風が吹かなくなった。
アタシとヴォラーレは魔法を解除し、風の悪魔の方へと向かう。
街を出た先は草原。でも風が強いので、もう一度さっきと同じことをする。
大海樹林を使った後、アタシは体にドッと疲れが舞い込んできた。恐らく魔力の使いすぎだろう。
「大丈夫?無理しなくていいわよ。」
ヴォラーレにそんな優しい言葉をかけられたけど、ここでやめれば、ヴォラーレにだって負担がかかるし、何よりオリジンを殺せない。
アタシは今の状況を少し楽にできないかと、魔力を多く含む果物を作り、口にした。疲れている体に魔力と水分が広がっていき、疲れが取れる。
「これ、いる?」
アタシはヴォラーレにその果物を差し出した。
「ありがと。」
ヴォラーレは果物をもらい、頬張った。余程おいしかったのか、少し体の力が抜けてた。
なんか嬉しい。
魔力の使い過ぎによる魔力不足は解消できたので、風の悪魔の方を見て、どうなったかを見る。
すると初めて会議をした後の特訓の時に見た大きな土の塊。
「火山塞ぎォォ!!!」
土の塊が風の悪魔に当たった後、少し遅れて聞こえてきた。
その声が聞こえた時、風の悪魔は解放され、1人が出てきた。
その人は恐らくヴェントほどの歳かそれ以下であろう少年だった。
土の塊が風の悪魔に当たった時、全身を傷つけるんじゃ……と心配していたのだが、最初に核を破壊できたらしく、解放された人は無傷だったが土の塊に驚いたのか、気絶している。
気絶から覚めた少年からどうして風の悪魔になったのか、経緯を聞く。
その人は魔法育成所という、大陸全土で営業している魔法使いの鍛錬所に通っている生徒だった。成績も、この街の中ではいい方で、魔力暴走になる原因が分からなかった。
ただ、少年は変な言葉を口にした。
「風の悪魔になった日、変なおじさんに指で組んだ変な模様を見せられたんだ。」
指で組んだ模様?なんだそれ。そう思っていた時に、
「呪いの類。」
リセルカがその言葉を放った。
呪いは指で組んだ模様から術者の意思と魔力を流すことで発動する。効果もかなり大きく、やり方さえ理解できればだれでも使える、バイニツィオ歴の最初の頃はかなり普及していた攻撃方法らしい。
その分、発動のために大量の魔力を消費すること、発動の前に詠唱が必要なこと、言葉で説明できる現象でないことでないといけない。
でもバイニツィオ歴後半に生まれた魔法は少量の魔力でほぼ無詠唱、頭でイメージできれば何でもできるため、呪いよりもはるかに使い勝手がいいため、呪いはほぼ使う人がいない。
どうして呪いを使う人がいるのか。魔法は使い勝手がいいが、性質を変化させることが難しい。例え出来たとしても、それには長い年月をかけてやっとできるようなものだし、できてもそれは属性という括りを出ることが出来ない。対して呪いはその属性の括りを言葉で説明さえできれば抜けることが出来る。人は魔法の用語では無属性に分類される。例えるなら、鉄や金といった金属は魔法の用語では土に分類される。
とリセルカから長々と説明を受けた。全然分からない。
分かるとすれば少年が言っていたおじさんが呪いを実質無詠唱で発動したということ。
このことは、全員で話し合いフルファンテに報告することになった。
呪い……ちょっと気になるな……
書くに当たって思ったんですけど、ピアナラの考えていることを弱気にするか、強気にするか、迷いました。考えはしたんですが、考えと行動が散り散りだとなんか変なので、まとめました。一応、弱気になった時は考え方も弱気にするつもりですが、何か忘れそうですね。




