私の名前はハル~何があったのでしょうの続き
一応‘何があったのでしょう’の続きだけどソロで読めます。
よろしくおねがいします!!
私の名前はハル。東方の言葉の意味だと春を意味するみたいなので、私は気に入っている。
平民です。16才です。元気っ子です!
今日も畑と戯れて一日を終わらせようと思います。
「はー、土の匂い♡この土地を耕して、苗を植えて野菜を収穫して…ウフフ」
「なんだ?変態がいる」
「あ、何よ?あんたにはこの土の匂いの神々しさがわからないの?」
「変な香水よりはいいけどよぉ、土の匂いLOVEとはなんないな」
こいつは幼馴染のウォルス。とはいえ、収穫期には消えちゃったりするんだよね。どこに行ってるんだろう?
「うちの母親もかなりの変態だけど、お前の方がヤバいな」
「ウォルスは兄妹多くていいわよね。私のとこは私一人だから羨ましいな」
「ん?俺、兄妹の話したっけ?」
「こないだ、ウォルスのお母さんのココさんが教えてくれた」
「あのくそババぁ」
「口悪いわね?農地が好きなイイ人じゃない」
「ああ、俺の中じゃ変態1号だ。2号がお前な」
そう言ってウォルスはどっかに行ってしまった。
ウォルス、謎なのよねぇ。幼馴染だとは思うけど、どこに住んでるのかも不明。
ウォルスのお父さんの事は知らないなぁ。今度聞いてみようかな?
なんだか突然農地にそぐわないスーツを着て、人相の悪い人が来た。
「ここは君の農地?言いにくいんだけど、君のお父さんが借金の担保にこの土地入れたんだよね」
言いにくいんじゃなかったの?饒舌に語ってくれるなぁ。
「だから、この土地は明日から君のものじゃなくなるんだ」
何てことなの?私の農業計画が!?
「あらハルちゃん大変ね。いい土地があるんだけど、耕さない?」
ココおばさん、あらためココ奥様☆ありがとうございます!!と私は拝んだ。後光が見えたから。
「ハルちゃんは大袈裟ね。でもそこが可愛い!じゃ、場所はウォルスに聞いて?」
ウォルスめ。いい土地知ってるのか?何て羨ましいんだ。
翌日私はウォルスに頼んで(癪に障るけど)ココ奥様が言ってた土地に連れて行ってもらった。
「ババぁが言ってたのは、ココか?私はウォルスに聞いてって聞いてる。ウォルスは聞いてないの?」
「クソ。何も聞いてねー。俺を試してるのか?気に食わねーな」
「口が悪いわよ。イイ人じゃない。ココ奥様」
「なんだよ?そのココ(・・)奥様ってのは?」
「ココおばさんじゃないわよ。ココ奥様よ。私にこんないい土地を紹介してくれるんだもん。水はけも日当たりも良さそう。最高の土地ね!私は拝んだわよ?」
「超笑えるんだけど?うちのババぁを拝んだ?おっと、この辺は親父も神出鬼没だからな。ババぁとか口悪かったりしたら、多分激怒される」
「へぇー、あんたに怖いものあったんだ。とりあえず、お父さんがコワイのね」
「ああ、怒った時の親父がコワイ」
余程だな。私に教えるんだもん。ウォルスのお父さんは怖い人なのかな?ココ奥様の旦那様がそんなに怖い人とは思えないんだけどなぁ。ただ単にウォルスが悪戯しすぎとかじゃないのかなぁ?
「君がココが可愛いって言ってたハルちゃん?私はウォルスの父親。これでも野菜を毎年作ってるんだよ。収穫期は家族総出で収穫が年中行事だなぁ」
顔が険しくなった。
「そうだろう?ウォルス?」
「はい、父上」
父上?借りてきた猫か?萎縮しすぎでしょ?
「それと、何度言ったらわかる?言葉遣いには気をつけろ。と」
「何度も肝に銘じています」
ウォルスのお父さんが怒った。
「お前の肝はいくつあるんだー!!」
なるほど、これは怖いかも。
「驚かせたね、ハルちゃん。それもこれもこのウォルスが悪いから」
いやはや、全く。
それにしてもウォルスのお父さん、どっかで見たことあるんだよなぁ。
あ、紙幣!紙幣なんて平民にはあんまり縁がないからなぁ。紙幣に印刷されている顔だ!という事は王様?
では、ウォルスは王子?
「あぁ、今頃気づきました。申し訳ありません。平民の私がなんて畏れ多い。王妃様にもお会いして、名前まで覚えて頂いて」
「あ、気にしないで。私たち夫婦はそういうの気にしないから。それよりも、ハルちゃん今から城に来ない?」
平民の私は城に行くような服は持っていません。ドレスとか着るはず!(あんまりわからない)
「服装とか気にしないで。城の中にも農地があるんだけど、そこをちょっと見て欲しいんだよね。ココ一人だとちょっと不安で」
「なんだよ。もしかして、おふくろまた妊娠か?」
「ウォルス、言葉遣いに気をつけろ!」
「なんですか?まさか母上また妊娠したのですか?」
ウォルス言い換えた?言葉を直したの?
「まぁそうだ。そうなると、城の中の農地の管理がうまくできなくて、出来る人材を探していたんだ。ハルちゃん可愛いしぃ、ココもお気に入りだし。いいだろ?」
「私で良ければ、手伝いマス」
王宮内の農地。ドキドキする。どんなに素晴らしい環境なんだろう?
「やっと来た~!ハルちゃ~ん!!」
「王妃様、妊娠しているそうで、あまり無理をなさらないでくださいね」
「え~、6人目だもん。大丈夫よ、慣れたもんよ」
肝が据わった王妃様だなぁ。そっかぁ、ウォルスは5人兄妹なんだ。
「今のところ、3男2女よ。ウォルスは長男!」
ウォルスは地味に皇太子じゃん。言葉遣い気をつけろって言われても仕方ないよ。次期国王だし。
「妊娠してるし、今年は収穫期に私は収穫できないなぁ。ハルちゃん!私の分まで採ってきて!!」
なんだか採ってくるのか、盗ってくるのかわからないくらい鬼気迫った力の入れ方だった。
「わかりました!」
平民の選択肢はイエス一択。
「で、この農地なんだけど、まだ耕す段階じゃないのよ。まだ肥料も混ぜてないの」
「普段はどのような肥料を混ぜているのですか?」
これ重要!有機肥料だろうか?化学肥料だろうか?購入するんだろうか?い
「言いにくいんだけど、残飯を発酵させた有機肥料。私たちの食事の残飯。結構多いのよ?でもね、男の子って成長するとよく食べるのねぇ。今年はあんまりその肥料が作れなくて…」
「残飯が少ないのはイイことですよ!」
フォローを入れておく。
「混ぜる肥料は有機肥料がいいんですよね?でしたら、厩舎に行って馬糞を分けてもらおうかな?きっとたくさんありますよね?」
「ああ、馬糞なら山のようにある。騎士にこちらに分けるように手配をしておこう。ウォルスはハル嬢の手伝いをするように!」
「「ハル嬢?」」
流石に私もウォルスもビックリした。そのような呼ばれ方をするとは…。
その時は知らなかった。自分が他の令嬢に疎まれている事。
「なんなの?あの子、平民なんでしょ?」
「平民の分際で、陛下と王妃様と皇太子様と親しくして!」
「特に皇太子様は何であんな平民といるのかしら?」
城の中に部屋を賜った(そこから農地に通うべし)ので、城の廊下で貴族令嬢とすれ違った。
「廊下はすれ違う時に爵位の高いものが真ん中を歩けるように、避けるのがマナーよ?ああ、貴女は平民ですものね。マナーをご存じなかった?ご存じでも、爵位はありませんものね。オホホ」
???
だから何なのだろう?私には理解できない。ああ、私の服に土がついてるから避けて欲しかったのかな?せっかくのドレスが汚れちゃうもんね。
「あ、すみません。ドレスが汚れたら大変。避けるんでどうぞ通ってください」
避けたんだから、早く通ってよ!私は私の心のオアシス☆農地に一刻も早く行きたいんだから!!
何故か怒って通っていってしまった。私は何かしたかなぁ?ドレス汚したら洗濯が大変そう。あの人が洗濯をしないにしても、土付きのドレスの洗濯は大変そう。
そんなことが2・3回あったので、世間話のつもりでココ王妃様☆に話した。
「―――ということがありましてね。私は何かしたのででしょうか?彼女たちは概して怒って通り過ぎるんですよ」
「あぁ、それはね。本当はあなたを凹ませるつもりで言ってたのに、ハナちゃんは何にも感じなかったでしょ?悔しいのよ?」
「何で私を凹ませたいのですか?」
「ハナちゃんが平民という身分で陛下とか私もそうだけどに可愛がられて、なおかつウォルスと親しいでしょ?」
「だって、ウォルスは村にいた時からの幼馴染みたいな感じだし…」
「そんなの彼女たちは知らないわよ~。ウォルスは一応皇太子だし?彼女たちは、というか、彼女たちの家かなぁ?皇太子妃を狙ってるのよ。ウォルス、香水嫌いなんだけどね。彼女たち、香水臭いでしょ?」
そうだなぁ。そういえば、前にウォルスが『変な香水の匂いは嫌』みたいな事は言ってたなぁ。
「彼女たち、美人ですけど?」
「可愛いハルちゃんを凹ませようとするんだもん。性格は悪いわよ?」
それはウォルスも嫌がる。避ける。その結果村に来たのか…。
「あ、ココ王妃☆!私はウォルスの弟妹に会いたいです!」
「うふふ、私のお腹にもいるんだけどね。えっと、ウォルスが17才よね?そこから、10才・9才・8才・7才の弟妹ね」
なんて年が離れているんだろう?聞いた話によると、弟妹は、姫・王子・姫・王子の順で生まれているから、お腹の子は女の子説が有力。
「明日にでも連れて来ようかしら?みんなハル姉さまに会いたくて仕方ないのよ?」
ハル姉さま?子供が集まると年上の子を呼ぶ敬称だよね?
「「「「ハル姉さま~!!!!」」」」
??
何?この可愛い集団は?天使たち?ここは天国?
「うふふ。ウォルスの弟妹よ。ほら、挨拶!」
「第一王女のアリスです。10才です。ハル姉さまにはずっとお会いしたかった。兄さまから話は聞いてるのよ?何よ、兄さまの嘘つき!ハル姉さまは十分可愛いというか、美人じゃないの!」
「第二王子のビクターです。ハル姉さま、アリスの言葉で顔が真っ赤で可愛いですねっ、母上」
仕方ないじゃない。可愛い女の子に褒められたんだもん。ココ王妃様☆に同意求めないでよ~!!
「そうよ~。ハルちゃん可愛いでしょ?今までウォルスが独り占めしてたのよ?」
「「「「兄さまずるい!!!!」」」」
「第二王女のクリスです。兄さまが独り占め…。これからはみんなと遊んでくれる?」
天使たちの要求…。平民じゃなくても返事はイエス一択です。
「第三王子のデニスです。兄さま羨ましいなぁ。これからはみんなで遊べるんだ♪」
遊ぶって、農地を管理する仕事あるから、その合間でいいかな?それなら全力で遊びますとも、ええ。
「こらこら、ハルちゃんを困らせたらダメよ。ハルちゃん、この子たちの遊ぶっていうのは、農地で遊ぶの。一緒に農業ってのが遊びの一環なのよ。特別に時間を取って何かをするわけじゃないのよ?」
一安心。農地を疎かにしたくないから。…かといって天使達の要求も疎かにしたくないわけで…。
翌日から天使達と農地を耕すこととなった。
馬糞が肥料なんだけどな。王族が馬糞にまみれて農業。ありなんだろうか?
「「「今年は兄さまとビクターがよく食べたから、残飯が少なくて肥料が馬糞になったって聞いた~」」」
そうなんだけど、‘馬糞’って王族が口にする言葉なんだろうか?
「残飯が少ない事は良い事よ。それにほら、馬糞だって役に立つのよ!」
「「「「へぇ」」」」
知らなかったんだ…。残飯が肥料ってのは知ってて馬糞が肥料は知らないのか…。
「発酵させないといけないんだけどね。もう、発酵させてのがあるから、今日はそれを土に混ぜ込もうか?」
「「「「わ~い♪」」」」
ウォルスと違って農業楽しんでるみたいでなにより♪
「王家の者がそのような事をするなんて恥ずべきことです。今すぐに、やめて貴族らしいふるまいをすべきですわ」
この間の令嬢?どうも令嬢の区別がつかない。おそらく流行のドレスを着て、流行の化粧をして、とか全身流行だから、みんな同じに見えるんだろうケド。
「えー?母上も父上も農業するけど?」
と一人の無邪気な天使が言うと令嬢は顔を青くしてその場を去った。
それにしてもウォルスはやんないのかなぁ?
「兄さまは仕事があるから」
「今までハル姉さまを独り占めしてたんだもん」
等、天使はなかなか辛辣だった。
ふん、今まで皇太子って内緒にしてたんだから、助け舟なんか出してやらない!
その頃のウォルス。
ハルはさぞかし農地をエンジョイしていることだろうな。あのババぁも…母上もハルを気に入ったみたいだな。オヤジまで…陛下まで気に入ってるみたいだし。
今日は俺の弟妹がハルに会うみたいだなぁ。
あのやんちゃたちが会うのか…。ちょっと見物だな。抜け出したいが…。
「殿下、執務が滞りますゆえここの書類の山に目を通しサインをお願いします」
って言われる始末。無理だな。俺は農業あんまり好きじゃないけど、弟妹は楽しむタイプだからなぁ。
放っておけばいいか。
私の生活は心のオアシス、王宮の農地♡で天使達と農業に勤しむという、ここはパラダイス!!ってものになった。
ところで、
「ウォルスはあんまり農業好きじゃないわよね。理由知ってる?」
天使達に聞いてみた。
「私達が産まれる前は、兄さまだけで収穫期に行ったから、なんかトラウマ?みたいになったみたい」
アリス天使が答えてくれた。
何てこと!収穫の喜びがわからないなんて!
でもまぁ、たった3人でこの広い農地の収穫はきついかも。でもトラウマって…。
「野菜、収穫するの嫌かなぁ?」
天使達に問う。
「「「「大好き!」」」」
はぅっ!天使の大合唱!鼻血吹いてしまう。
「今は春から冬まで収穫期がずれる様にしたけど…あと、ハーブで年中採れるやつがあるなぁ。それは王宮の厨房で重宝するんじゃないかしら?乾かして使ってもいいし、生で使ってもいい。厨房次第かな?」
「「ハル姉さま物知り!」」
姫さまたちに言われた。
「うーん、これでも自分で料理してたからね!」
「「私たちもできるかしら?」」
「おそらく陛下の許可が必要かと思う…」
愛娘が包丁を持ち、火のそばに立つなど、ありえないのでは?と思ってしまう。
意外にも陛下の返事は「いいよー、ハルちゃんの話をよく聞いて頑張って!」という話だった。
私、超責任重大じゃん。姫さまたちに怪我でもさせたら…と思うと恐ろしい。
10才と8才の女の子。何ならいいかな?陛下に食べて頂きたいな(娘の初料理!)。野菜も使いたい。
うーん、『野菜炒め』にしましょうか。野菜多いし。
玉ねぎ・人参・モヤシ・ピーマン…とにかく農地で作ってる野菜いっぱい!
「玉ねぎって皮をむくだけで涙が…。ハル姉さまどこまでむけばいいんですの?」
「茶色いのがなくなればOK.。野菜切る時は絶対言ってね?切り方教えるから!」
コレ重要。姫たちのキレイな可愛い白魚のおててに傷でもつけたら…と思うと恐ろしい。
「ピーラーも気をつけてね!刃物なんだから!」
後ろの方で厨房の方がハラハラとこちらを見ている。気持ちはわかる!初めてなんだよ!頑張る姫たちだよ!!
「あぁっ、ピーラー使わなくても玉ねぎの皮は素手でむけるから!」
クリスちゃ~ん!わかってー、アリスちゃんは素手でむいてたよ?
私は忙しい。相手は超初心者2人。しかもVIP。
野菜を切る段階になった。下手をすれば私の首が飛ぶ。
「えーっと、よく「猫の手」って言うんだけど、わかる?」
「「あんまりわかんない」」
そうでしょうとも。城の中で猫を見たって経験ないもんなぁ。
「よく見ててね。こんな感じで、手は丸くするの。親指に気をつけてね?包丁は常に抑えてる手にくっつけとくといいよ。あと、野菜は大きさが均等になるように切ろうね!」
非常に時間がかかったが野菜を全部切り終わった。
「さて、火に通すんだけど…。全部同じタイミングじゃないのよ?固いもの優先。人参とかかなぁ?あと、玉ねぎを長い時間痛めるとしなーっとするから玉ねぎも炒める。野菜から水が出るわね。気にしないで。それが旨みになるから。野菜を全部入れたら味付けよ!」
「「味付けはハル姉さまがやって!」」
あぁ、天使のおねだり…。もちろんイエス。
天使withハルの『野菜炒め』が完成した。さっそく陛下に食べてもらおう。
2人の天使の顔が曇った。
「どうしたの?」
アリス天使が応えてくれた。
「本当は出来立ての温かいのを食べて欲しいんだけど、父上が口にするまでにいっぱい毒見するから、冷めちゃうの!」
何てことなの?王様というのは温かい食事を食べられないの?
クリス天使は今にも泣きだしそうな顔をしてる。
「2人ともそんな顔をしないで!食べてもらうために、食事を持って行くんじゃなくて、陛下を招待しましょう?」
よかった。2人の天使に笑顔が戻った。
「じゃ、さっそく陛下を呼んでくるね!」
私は陛下が仕事をしているという執務室へ行った。
途中、なんか貴族令嬢にからまれたけど、無視した。
知らない人だし、いいよね?
陛下の執務室の入り口には騎士さんがガッチリガードしていた。
「ハルがきたと取り次いでください。王女たちの使いです」
と言っても、入り口の騎士は「陛下は今仕事中」と言って取り次いでくれなかった。
しかし、遠くから…。
「ハルちゃ~ん!!どうしたの?」
とココ王妃さまが助け舟を出してくれた。
事情を説明。
「アリス王女とクリス王女、初めての料理を温かいうちに陛下に食べて頂きたいみたいなんです。健気ですね」
「まぁ、そんなことをしてたの?私も参加したのに。私は料理できるわよ?これでも昔は一人暮らし経験あるんですから!」
そんなココ王妃。今更です。大変だったのに…。
「そんなわけで、陛下に目通りを。ほぼ命令よ。さあドアを開けて!」
王妃の言葉は強いなぁ。
「話は聞かせてもらった」
地獄耳ですか?けっこう分厚いドアの外での会話なんですけど?
よし、今からアリスとクリスのもとに急ぎ行こう。
そう言って、私案内で陛下とココ王妃と3人で王城の厨房へ行った。幸い作った野菜炒めは冷めていない。なんなら、また温める?
「えーと、王女たちwith私で作りました。野菜炒めです。野菜は王宮の農地で収穫したものです。王女たちは野菜の皮をむき、野菜を切り、炒めました。私がしたのは味付けだけです」
「ハルちゃん、十分だよー。そして温かくて美味しい!料理するのははどうだった?」
「難しかったけど、面白かった!!」
アリス天使は無邪気に答える。でも、その後ろで厨房職員がハラハラしてたんですよ。
「クリスは?」
「んー?まだわかんない。私は野菜作ってる方がいいなぁ」
意見が分かれた。それでいいんです。
「陛下はいつも冷めたものを召し上がってるんですか?」
「んー、そうなんだよね。職業柄仕方ないのかなぁ?冷めると美味しくないよね。というか温かい方が美味しいよね。何とかならないのかなぁ?」
陛下が毒殺されるのは避けたいし、でも毒見している方が毒に侵されるのを見るのもなぁ。
「とりあえず、銀の食器ですかねぇ。銀はすぐに毒に反応して黒くなりますから」
そのくらいしか浮かばない…。
「うーん、皇太子はもう決まってるし、銀の食器で生活しようかな?」
なんと!私のちょっとした発言が採用された。しかも重要案件!
「はははっ、あいつが執務しながらクシャミでもしてるかもなぁ。ところで、アリスにクリス。この野菜炒め、弟達にも食べさせないか?」
あ、天使集合?ウォルスは仕事を続けて下さい。
「「うん!」」
そして厨房は美しい家族絵になった。はた目に見ると非常に美しい。宗教画か?と思ってしまう。
「一応、ウォルスに食べさせないんですか?」
「あいつはハルちゃんの手料理も食べたことあるんじゃないか?」
そういえば、村ではあったかも。
「そんなやつに愛娘の初の手料理を食べる資格などない!」
陛下は厳しいなぁ。
「陛下…、陛下も私の手料理で良ければ食べます?」
「えー?「私も」」
「「僕も」」
「私もいいかしら?」
ココ王妃まで?私の手料理に価値はあるかなぁ?
「簡単な物になるけどいいですか?」
「「「「もちろん」」」」
「ええ」
「関係ないだろう?それと、執務室の入り口の騎士にはハルちゃんはVIPだからって伝えておくね♡」
VIP…。平民なんだけど…。
そんなわけで、調理した。簡単だし、量が稼げるから、チャーハン。
陛下曰く「すっごい美味い!厨房職員はハルちゃんに料理習ったら?」
言いすぎです。厨房の方に失礼です。私が出来るのは家庭料理だけです。
天使たちにも好評。ココ王妃様も懐かしの味と以外にもたくさん召し上がっていた。妊娠してらっしゃるからかな?
おかわりが殺到で、見事になくなりました。ウォルスの分はありません!
「お粗末様でした」
「どこが粗末なんだ?こんなに美味しかったのに?」
「「「「そうだ」」よ」」
「ふふふ、料理を作った方の作法みたいなものかしら?ほら、「いただきます」「ごちそうさま」とにたようなものよ」
「「「「母上物知り~」」」」
うん、そうだなぁ。
最近は農作物の収穫も時期をずらしているから、そんなに忙しくないし(天使たちのアシストがあるし♡)、農作物も順調だし、なによりココ王妃の出産が近づいている。王宮内が騒がしい。どうやら、本当にココ王妃が出産に臨むようです。
私がすべき事。天使たちと待つこと。出産は時間がかかるというけれど、ココ王妃、肝が据わっているだけあって超安産。数時間で産んでしまった。陛下は喜んだけど。天使たちも大喜び。天使が増えました。やはり女の子でした。
その間ウォルスは仕事をしていました。何の感慨もなし。もうちょっとなんかあってもいいのに。
うーん、産褥期が過ぎたら私はお役御免かなぁ?などと考えてたのに、
「ゴメーン、ハルちゃんの家売っちゃった」
陛下、それでは私はどこに行けばよいのですか?
「いやぁ、このままここにいると思ってたから。ほら、ハルちゃんの足にしっかりアリス達4人がくっついてるし」
そうなのだ。私に天使がくっついている状態。これはいったい??
「ハル姉さま、ずっとここにいて下さい」
「それもこれも、兄上が不甲斐ないせいだ」
「兄上のせいなの?」
「「「「ハル姉さま~」」」」
天使のおねだり。平民のハルの心臓にクリーンヒット!
「うん、いたいんだ。でも、居場所がないよ?」
「部屋ならたくさんあるよ?」
天使は言うけど、精神的居場所とか職業もない。どうしようもないじゃん。
ウォルスが現れた。
「誰だ?俺が不甲斐ないとか言ったのは?」
「「「「みんなで言った。全会一致」」」」
天使は仲がいいなぁ。声が揃ってる。
「はぁ、ハル。ちょっと来てください」
ウォルスに呼び出された。
「恐らく、あの弟妹はお前が実の姉さんになることを望んでいる。俺としてもお前を娶りたい」
はぁ?
「しかしだ。なんとも身分がなぁ…」
結局、そこに着地するんだよね。わかってるよ。
「話は聞かせてもらった」
「「陛下?」」
いったいどこから聞いてたんだろう?どこで聞いてたんだろう?地獄耳なのはわかった。
「私の計画を告白しよう。ハルちゃんを生粋の貴族にはしたくない。そのままのハルちゃんに魅力があるんだよ」
「俺はハルを妾にするつもりはない。堂々の正妻だ」
「だろう?なんで、正式に国王になるのはビクター。ウォルスはビクターが成長するまでの繋ぎだ。ビクターにみっちり帝王学やらを教え込む。可哀そうに政略結婚かなぁ?ビクターが成長したら正式に妻として迎え入れるといい。それまではハルちゃんには悪いけど事実婚というやつかなぁ?あ、ウォルスはその後は公爵にでもなれば?領地は王宮内の農地。それでどうだ?」
「俺はいいけど、ハルは?」
「私は了承しました」
ええーーー!!ウォルスと結婚?皇太子(今は)?事実婚?
「孫の顔見たいなぁ♡」
「父上、俺の弟妹が増えるじゃないですか弟妹、生まれてすぐにオジサンとかオバサンですよ?一応」
「いいじゃん!それはそれ!これはこれ!」
親子で話を進めないで欲しい。はぁ、事実婚かぁ・・・。実際に結婚するのは10年後くらいかな?・・・あと10年。
「ビクターが成長して皇太子になるまでウォルスが政務とかやってね♡」
「成長促進剤とかないのか…?あと10年位?結構あるな。父上は急死しないでくださいよ。ついでに遺書書いておいてください。俺がハルと結婚できるように」
そういうわけで、私はウォルスの事実婚の相手として城に部屋を賜った。
社交はしなくていいらしい。助かった。王宮内の農地では天使達と毎年農業をしているけど、アリス天使が政略結婚で、他国に嫁いで行ったりして人数が減ったりするとやっぱり悲しい。
私も、事実婚だけあって妊娠しました。陛下より農業禁止令が出ました。毎日のように天使達がお見舞いに来てくれます。病気じゃないのに。ウォルス…喜んでたな。仕事忙しそうだけど。ビクター王子はまだ14才。先はまだまだ長い!頑張れウォルス!負けるな(何に?)ウォルス!
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