Part 3
「……え?」
あまりにもさらっとした発言に、アスタ達弟子組は固まってしまう。
「金色? サラだけじゃなくて、ノネさんも金色なの?」
「そうだぞユキ、私とサラは金色剣士だ」
「さらっと言うレベルじゃないですよ、ノネさん」
フェイだけなく、弟子組は皆、師匠がいかに凄い人間だったのか、改めて知ったのだった。
なんせ金色剣士は、世界に二人しかいなく、しかもその二人が、自分たちの師匠なのだから、驚くのが自然な反応だ。
「あの~、参加する方は、こちらに来てもらってもいいでしょうか?」
試験官の少女がアスタ達の方へと来て、もう試験が始まると告げる。
「お! 時間か、皆……行ってこい」
アスタ達はいよいよ、剣士試験に挑む。
「では、これより剣士試験およびカラー昇格を始めたいと思います」
先程の少女が、皆の前に立ち、ルールの説明を始めた。
「これより先の森には、様々な剣士様が捕らえた魔物が潜んでいます。 強すぎる魔物はいませんが、油断をしていれば、確実に殺されます。 そしてこの試験では、試験内の内容であれば、死を覚悟してもらうと同時に、命の保証はできかねます。 それが嫌な方は、試験開始と同時に、帰っていただいて結構です。 覚悟ある方のみ、試験に挑んでください。 皆様の審査は、会場内にいる試験官と、上空を飛んでいる鳥を通して、審査させて頂く形となっております。 説明は以上です。 なにか、質問がある方はいらっしゃいますか? なければ、試験を始めさせて頂きます」
「なぁ」
一人の男性剣士が手を挙げた。
「はい。 なんでしょうか」
「これは試験なんだよな」
「その通りですが、それがどうかなさいましたか?」
「ガキが四人いるが、コイツらも参加者か?」
「はい。 彼らもあなた方同様、試験挑戦者です」
「おい、ガキ。 悪い事は言わねえ。 さっさとママんとこ帰んな」
アスタに話しかける男性剣士。 他の剣士も、話しかけないだけで、内心では思っていた。
「悪い。 集中してるから、黙ってくれないか」
「このガキが」
「試験開始前に、争いは止めてください。 それと、アスタさん、フェイさん、ユキさん、ミユキさん、以上の四名は、金色剣士、ノネ様とサラ様の承認を得た者達です。 実力は問題なしかと。 気になるのであれば、試験で感じてください」
「ちっ……」
「……では、試験開始です」
巨大な門が開き、参加者は皆森へと入っていった。
「(頑張れよ、皆)」
師匠二人は、応援しつつ、見守っていた。
試験会場には、先程の言葉通り、たくさんの魔物、そして安全な位置に鳥や試験官が審査していた。
鳥を操作する者と、鳥の視界の光景を映像として流す者、それらを通して、試験を見に来た者たちは、試験を観ていた。
皆が予想する様に、試験を何度も経験してる者たちは、強い魔物には少し苦戦しつつも、安全に、確実に倒していた。
「楽勝だな、これで俺も青から銀に」
先程の男も同様、上手く立ち回り難なく倒していった。
「あのガキども、さっきから見当たらないが、死んだのか?」
試験が始まってから、アスタ達の姿が見えなくなり、気になっていたが、モンスターが襲いかかり、切り替えようとした。
「まぁ、どうでもいいけ……」
斬り倒そうとした時、アスタが現れモンスターを倒した。
「おまっ! いつの間に」
アスタは急所を確実に捉えて、斬りさいた。
「(コイツ、このモンスターの急所を確実に狙いやがった)」
「よし、次……」
「(あのガキ、一体……)」
アスタが気になっていると、他の魔物達を、フェイ、ユキ、ミユキの三人も、アスタ同様急所を確実に斬り裂いた。
「(コイツら、まさか)」
男はアスタ達が急に現れたことに、ある可能性を考えた。
「(最初は俺たち経験者の戦い方や魔物の動きなど、観察の方へ身を置き、確実に倒せる魔物から倒してるのか)」
参加するのはアスタ達だけではない、その事はアスタ含め四人とも当然知っている。
各々の判断で行う試験という名の初めての実践。
アスタ達は、しっかり冷静に考え、導きだし実行していた。
それを映像で観ていた師匠二人は思わず笑みをこぼし、喜びが隠せなかった。
「サラ、弟子の成長って、嬉しいもんだな」
「そうね。 にしてもアスタ君にフェイ君。中々やるわね。 実力的にはアスタ君が上みたいだけど、フェイ君は自分の力とできる事を理解している。 その上での隠密行動、流石ね」
「ユキとミユキもやるな。 ミユキは剣での戦いとその場に合った魔法を的確に見極めて動けているし、ユキに関しては、ありゃあ本能で動いているな。 身体能力がかなり高い上に、移動も剣捌きもとても少女のものとは思えない実力」
お互いがお互いの弟子の動きを観察し、見極め関心していた。
「これなら、心配なさそうだな」
~試験会場 森~
「ふぅ……よし(具体的な説明こそなかったけど、魔物を倒すのはもちろん、その動きや無駄の無さ、冷静などを見定めているんだろう) もうひと頑張りしますか」
「アスタ君」
「……ユキ?」
「どう調子は?」
「まぁ、今のところ順調かな。 ユキは?」
「ボクも似たような感じ」
「さっき見えたけど、ユキって凄い強いんだな。 速すぎて見えなかったよ」
「ホントに!? ありがとう!」
「でも、なんか気にしてなかったか?」
「あぁ……アスタ君にはバレちゃったか」
「なにか気にかかることがあったのか?」
「いやさぁ、周りをよく見ろって、サラに普段から言われてて、気づけばそれが癖になっててさ」
「あぁ、なんか分かるわ」
「それで、試験官の人、最初に比べて、減ってる気がして」
「え? 減ってる?」
「うん。 最初は十人ぐらいいたんだけど、さっき数えたら、五人ぐらいで」
「……(たまたま? いや、移動とか、でも……)」
「ボクの気のせいかな?」
「分からない。 とにかく前に……」
進もうとしたら、アスタは足元にある《《何か》》にぶつかった。
「ん?……!?」
「アスタ君?……!?」
二人は、見たくないものを見た。
「アスタ……君、これ」
「あぁ……死体だ。 試験官の」
アスタとユキの視界には、ちょうど五人、試験官のバラバラ死体が広がっていた。
「ど、どうしよう。 アスタ君」
「ひとまず戻ろう、皆のと……こ……」
アスタとユキは後ろから感じる圧に、身動きが取れなくなった。
背筋が凍るような、身体が震え、恐怖を感じた。
そんな状況で、元凶であろう男が、二人に語りかける。
「あれ、君たち……見ちゃった?」