表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小説家になろうラジオ大賞4

虐げられる令嬢は、量子力学的恋をする

作者: 夜狩仁志

小説家になろうラジオ大賞4

参加作品

テーマは「量子力学」です。

 唯一の肉親である御父様が亡くなられ、これで公爵家は私の代で途絶えることに。


 そこに目を付けたのが男爵様。公爵家の財産を目当てに、私に婚約を申し出てきた。


 身寄りの無い私は断ることもできず、そのまま男爵様のもとに。

 しかし私の扱いはまるで奴隷のよう。

 掃除に洗濯、小間使い。


 そして今日も、人里離れた先生の所まで薬を受け取りに向かう。


「やあ、いらっしゃい」


 細身で眼鏡をかけた温厚な紳士は、遠い世界から量子力学?を研究しに、この地に来たと言う。その合間に薬を調合し生計を立てていた。


 先生はいろんな話をしてくれた。


「この世界の魔法は、私の研究している量子力学によく似てるんですよ」

「そうなのですか?」

「粒であり波であり……量子のもつれ……テレポーテーション……」


 正直、量子力学というものが私には全く理解できなかった。


 ただ、


 笑いながら楽しそうに語ってくれる先生を見ているだけで、私の心は安らいだ。


 いつしかこの空間は、私の心の拠り所となっていた。






「お前を姦通(かんつう)の罪で投獄する!」


 それは突然のことだった。


 いわれなき罪により、私の財産は没収された。

 男爵は最初からそれが目的。別に驚きもしない。


 でも、


「お前を(たぶら)かした男も処罰する!」


 先生の作る薬や器材など、貴重な物も押収するつもり?

 最初からそのつもりで、私を先生のもとへ?


 私の身はどうなっても構わない。

 でも先生は関係ない。どうにかして、この事を先生に伝えなくては。



 私は見張りの隙をつき、地下牢から逃げ出した!


 素足のまま外へ……急いで、先生の所に……


 と、その時!


 目の前に奇妙な銀色の馬車?が現れ、

 中から先生が!?


「潮時のようですね。貴女(あなた)も行きますか?」


 どこへ行くのか検討もつかない。

 でも不思議と恐怖や不安はなかった。

 むしろ先生に会えたことが嬉しくて。


 馬のない馬車は、すごい速さで追手を振り切り街を抜け出す。

 そして一瞬で国境へと辿り着く。


 振り向けば、生まれ育った街があんなに遠くに。


「どうしました? なにか未練でも?」


 瞳を閉じて首を横に振る。


「自分が去ればこの国も、粒子の波動に飲まれて消えてしまうでしょう」


 それももう、私には関係のないこと。


「どこへ行きますか? 量子力学を使えば過去でも異世界でも」


「先生のお側に居られれば、どちらでも」


 先生がかつて語ってくれた量子の話。

 一つの粒を強引に引き裂き遠く離しても、何故かお互いは共鳴し合うと……



 きっと私と先生も、


 量子力学でできているのだわ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ