告白の後に
俺、山神柚希。金曜日の午後、瞳さんを抱いてしまった。いや抱いた。俺の意思でしたと思いたい。
次の土曜日とその次の日曜日も朝から夕方まで二人で一緒にいた。映画を見たり、公園に行ったり喫茶店で話したりした。
瞳さんは、またしたいような事を言っていたけど、あれは溺れる危険を感じる。それだけ気持ちがいい。だから週一回だけにしようと約束した。最初ブツブツ言っていたが、納得して貰った。本当は俺だって毎日したい位だけど。
学校では、学食で一緒に食べると言っていたが、流石にそこまでの勇気はなく、雨の日だけという条件をのんで貰った。今はまだ外で食べていれるがいずれ寒くて中で食べる事になるだろうから、今の内はこれで良いと思う。
それより問題は梨音が作ってくれるお弁当だ。俺は瞳さんに頼んで三学期からは瞳さんだけにするから二学期末までは今のままにしてくれとお願いした。
いきなりもういらないは流石に言えない。でも今学期中には俺と瞳さんの仲を理解して貰うしかない。
これには瞳さんも同じ意見だと言っていた。彼女の優しさを見た感じがしたが、それとも精神的に余裕が出来たからだろうか。
いずれにしろ、今日からは自分の意思を周りに隠さずに行くしかない。
「柚希おはよ」
「なんか割り切った感じしているけどこの休みで何か有ったの?」
流石詩織は俺の幼馴染だ。見抜かれたか。
「ああ、正式に上坂瞳と付き合う事にした」
「それってどういう意味?今までだって付き合っていたでしょ。まさか柚希…」
「詩織、想像に任せるよ」
「ずるい。私まだなのに。でも良かったじゃない。神崎さんの事はどうするの?」
それ幼馴染だとしても男の俺に言うか。まあ俺を男としては見て無いから言えるんだろうけどな。
「梨音はあくまでも友達だ。この事は彼女には関係ない」
「柚希、大切な幼馴染だからはっきり言っておくね。彼女はまだ柚希とよりを戻せると思っている。そう思わせているのはあなたの彼女に対する態度よ。私ははっきりすべきだと思う」
「詩織、ありがとう。その事についても瞳さんと相談して二学期中に徐々に分かって貰う事にした」
「もう柚希は甘いんだから。でもよく上坂先輩がそんな事許したわね。余裕が出来たからかな?」
「さあ?」
そんな話をしている内に駅に着き、途中亮と梨音が乗って来た。学校の最寄り駅で降りると亮が
「柚希何か有ったのか?」
亮も流石だな。
「亮、後で話すよ」
流石に梨音のいる前では話せない。
私、神崎梨音。松本君の言葉じゃないけど、明らかに柚希の雰囲気が変わった。この土日で何か有ったとしか思えない。まさか上坂先輩と…。
でもあの人なら十分にあり得る。柚希に対する接し方を見ていれば分かるから。でもそうだとすると非常に不味い事になった。何か早く手を打たないと。
下駄箱に着いて蓋を開けるとあれっ手紙が入っている。柚希は気が付いていない。さっと中身を見ると放課後の呼び出しだ。行く気は無いけど、でもこれ利用できるかも。
四人で教室に入るといつもの様な賑やかさに戻っていた。
「山神君、神崎さん、松本君、おはよ」
「おはよ渡辺さん」
「柚希ちょっと良いかな?」
「なんだ梨音?」
二人で廊下に出ると
「柚希、これ見て」
「これ告白だろ」
「うん、だから柚希一緒に来て。約束だよね」
「ごめん、今日は瞳さんと一緒に帰る。だからいけない」
「そう」
梨音が悲しそうな顔をしたけど仕方ない。
午前中の授業で早くも中間考査の結果が返って来た。三教科分だがどれも七十点は超えている。まずまずだ中の中じゃなく中の上位になったのは、勉強会のお陰かな。期末でもやろうかな。
あっという間に昼休みになり三分も経たない内に
「柚希、お昼食べよ」
クラスの皆が一度ちらりとこっちを向いたが、もう気にしていない様だ。良かった。
いつもの様に校舎の裏庭に行くとベンチは空いていた。
「はい、こっちが柚希の」
「ありがとうございます」
「ふふっ、その内敬語も止めてね」
「慣れる様に努力します」
「じゃあ、食べようか」
「はい」
「美味しいです。瞳の作ったお弁当本当に美味しいです」
「ふふっ、そうでしょう。瞳と呼んでくれたのね。他の人の前でも呼んでね」
「はい」
まあ、そうするしかないだろう。
お弁当を食べ終わると二人で話をしていたが、少し寒い。
「柚希、やっぱり次は学食で食べようか。風邪引いたら困るから」
「そうですね。雨の日待つ前にもっと寒くなりそうですから」
ここも慣れるしかない。
「ふふっ、覚悟決めたのね。私の彼氏って。嬉しいわ柚希」
いきなり俺の頬にキスをして来た。
「瞳、学校内ではしない約束でしょ」
「うん、分かっている♡」
本当に分かっているのか?
授業も終わり放課後になると
「柚希、また明日な。そう言えば聞いてないな、あの事」
「そうだった。明日昼食べたら」
「分かった。じゃあな」
「ああ、さて俺も帰るか」
あれ梨音がスクールバッグを持ってそのまま帰ってしまった。いいのかな?
下駄箱に行くと既に瞳さんが待っていた。やはり俺の心の中ではさん付きだな。
「柚希帰ろ」
「瞳そうしようか」
周りの生徒が一瞬目を丸くしたが無視をした。下駄箱を出て直ぐに手を繋いで来た。
「ふふっ、名前で呼んでくれるって嬉しいね。柚希の彼女って思い切り感じられる」
「そういうものですか?」
「そういうものです」
駅が近くなって来ると
「ねえ柚希、学校終わって駅まで一緒でさよならは寂しい。もう少し一緒にいれないかな?」
「うーん、俺もそう思うけど、ファミレスや喫茶店じゃあ、毎日は財布持たないし、公園は直ぐに暗くなるし、ゲーセンなんて行った事無いし…」
「そうかあ、じゃあそのゲーセンってとこ一緒に行ってみない。でもお金かかるんでしょ。だったら私の部屋は?」
「いやそれは流石に」
「じゃあ、今日の夜スマホで相談しよう」
「そうですね」
俺もこのまま別れたくないがどうしようもない。仕方なく家に帰ろうとすると
「ねえ、今日だけファミレスに行かない?」
「はい、いいですね」
「ふふっ、良かった柚希も同じ気持ちで」
結局、俺達はあのファミレスで一時間位話をしてから家に帰る事になった。
―――――
平穏な一日でした。
次回をお楽しみに
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