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賑やかなになった日常


 瞳さんと一緒に下校した翌朝、いつもの様に詩織と一緒に駅に行き途中で亮と梨音が電車に乗って来た。梨音がスクールバック以外に手に大きな袋を持っている。何だろう?


学校の最寄り駅を降りて学校に向かうと一度は落ち着きを見せていた周りの視線が凄い。女子からは興味の視線、男子からは嫉妬や妬みの視線だ。ひそひそ話をしている子達もいる。


瞳さんとじゃなかったらこんなにはならなかっただろう。やっぱり学校で美少女一、二を争う人だ。でももう後には引けない。


「柚希、凄い視線だな」

「…出来れば欲しくない」



 学校の近くになるとそれはもっと多くなった。

「柚希のお陰で私達まで有名人になった気分だわね。でも神崎さんを見ている人も結構いるわね」

「嬉しくないんですけど」


「神崎さん仕方ないよ。あなたって上坂先輩と同じ位人気があるの知らないの?」

「えっ、全然知りません。声掛けられた事も無いし」

「それはいつも私達と一緒に居るからよ。男子達は虎視眈々と狙っているわ。柚希が上坂先輩と恋人同士だという事が知れ渡って時点で、結構告白してくると思うわ」

「そんなぁ」


 私は柚希以外興味ない。他の人なんてはっきりって迷惑。今日はそのアピールをするには丁度良い。



 周りからの視線を潜り抜け、教室に入ると渡辺さんが

「おはよう山神君、今日一緒に帰ってくれないかな。また小林先輩から言われてしまって。お願い」

 渡辺さんが胸の前で手を合わせて上目遣いで見て来る。断れないよう。


「そういう事なら仕方ないな。分かった」

「ごめんね、ありがとう」

 ふふっ、これでまた山神君と一緒に下校出来る。小林先輩を当分利用するか。



 午前中の授業が終わり、昼休みになると

「亮、購買に行こうぜ」

「待って柚希。私、今日お弁当作って来たの。一緒に食べて」

「えっ、俺の分も?」

「うん」

クラスメイトの注目を集めてしまった。



「柚希、俺一人で購買言って来るよ」

「ああ」


 亮が購買から戻って来るのを待って、梨音からお弁当箱を受け取った。蓋を開けると鶏もも肉の甘辛煮、ひじきの入った卵焼き、マヨネーズが掛かった茹でたブロッコリそして肉団子が入っていた。

「これって」

「うん、柚希の好きな物は覚えているから。好み変っていないよね」

「ああ、とても嬉しいよ」


 梨音は中学の頃、一緒に家にいる時はご飯を作ってくれた。だから俺の好みも知っている。



「わーぁ、柚希のお弁当旨そうだな。これ神崎さんが全部自分で作ったの?」

「そうだよ。松本君にも作って来ようか?」

「あはは、それは流石に良いけど」




 皆で昼食を摂ろうとしていたその時、いきなり教室の後ろの入口から男子が三人入って来た。

「山神って奴はいるか!」


 髪の毛は金色で耳にイヤリングしている。制服は着崩してどう見ても不味い人種だ。女の子は顔が硬直し、男子は視線を合わせないようにしている。



 やがて俺を見つけると近付いて梨音のお弁当を食べていた俺の胸倉をいきなり掴んで

「手前か、上坂の彼氏気どりしている奴は」


 不味い状況だが、何も言わない訳には行かない。

「俺が山神です。何ですか。止めて下さいよ」

「ウザい顔してあいつの彼氏気どりとはいい度胸だな。ちょっと顔貸せよ」


 そう言って強引に俺を椅子から立ち上がらせようとして梨音の作ってくれたお弁当が机から床に転げ落ちた。

「っ!…。ふざけるな!」


 俺は思い切りその男に立ち上がり様におでこを思い切り顔にぶつけてやった。


「ぐえっ!」


 後ろの反りかえって俺の胸倉から手が離れたとたん、無意識に右足が出て相手の股間を打ち抜いてしまった。そいつは、床の上で股を両手で持って苦しんでいる。


「えっ?」


「おい、そこまでだ。やりすぎだぞ」

「…………」

「ううっ、こんなに喧嘩強いって聞いてないぞ」


「悪かったな。こいつ、校内ネットにお前と上坂がネットに上がったのに我慢していたんだが、この前一緒に下校したのを見て、頭に血が上ってしまってな。話すだけと言っていたんだがこの始末だ。

 しかし、噂じゃあお前喧嘩も出来ない男と聞いていたんだがな。こいつこう見えても空手の有段者だ。負けた以上、もうケチ付けるのは止めさせるよ。おい帰るぞ」


 股を押さえて俺に蹴られた男が立ち上がった時、俺に声を掛けた男に聞いた。


「あの、あなたは?」

「俺か、俺は空手部主将真浄寺誠司、空手は三段だ。山神とやら良い筋をしている、入らないか空手部」


「…いえ遠慮しておきます」

「そうか、他の部にも一応声を掛けておく。上坂の彼氏は強い男だとな。気を付けろよ。はははっ」

「…………」



 いきなり入って来た男達が教室を出て行くと武田が

「凄いじゃないか山神。空手有段者を倒すなんて。見直したぞ」

「いやあれは、偶々偶然で」

「はははっ、偶然じゃ、あんな事は出来ないよ。やっぱり上坂先輩がお前を惚れる理由も分かった気がしたよ」


 武田の一言でクラスの雰囲気が和んだ。俺は頭が冷静にならないままに梨音を見ると床に落ちた弁当のおかずを拾っていた。


「ごめん梨音、せっかく作ってくれたのに」

「ううん、今のは仕方ない。でも柚希嬉しかった。また作って来るから食べてくれる?」

「もちろんだ」



 不味い。偶然とはいえ神崎さんがますます山神君と近くなっていく。でも山神君ってこんなに強かったの?喜多神社ではボロボロにやられたって聞いていたけど…。

まさか相手が上坂先輩だったから、それを利用しようなんて思って。でもそんな子じゃない。…そう思いたい。



 授業が終わり、朝約束した通り渡辺さんと一緒に帰ろうとした時、

「柚希!」


 いきなり瞳さんが教室に入って来た。

「瞳さん」

「柚希、昼休み三年生が来たんですって。大丈夫だった?」

「ええ、特に。でも梨音が作ってくれたお弁当が床に落ちてしまって」

「神崎さんが作ったお弁当?」

「今日作って来てくれたんだ」


 瞳さんは梨音の顔をじっと見た後、

「そう、悪かったわね神崎さん、柚希の為に作ってくれたのに」

「いえ、また作りますから」

「もう作らなくていいわ。私が毎日作るから」

「えっ!」


「瞳さん、それは無しです。約束です」

「でも柚希、心配だわ。私が毎日作ってきてあげる。一緒に食べよ」

「駄目です。それとそういう話はここではちょっと」


 瞳さんが周りを見ると俺達にクラスメイトの視線が思い切り注がれていた。


「そ、そうね。じゃあ今日は一緒に帰ろう?」

「それも駄目です。今日は渡辺さんと一緒に帰る予定です」

「そんなぁ」


「明日一緒に下校出来るからその時に」

 瞳さんは俺の顔をじっと見ると渡辺さんを次に見てもう一度俺を見ると

「分かったわ。気を付けてね」


そう言って教室を出て行った。


「ねえねえ、今の見た。あの上坂先輩が山神君の前だと恋する女の子よ」

「やっぱり、恋人同士っていうのは本物?」

「「「きゃーっ!」」


 私、神崎梨音。今見るまで半信半疑だったけど間違いない。上坂先輩は柚希の事が好き。でも柚希はまだ躊躇している。まだ間に合う。でも時間も無さそう。


―――――


 むむっ、柚希これからどうする?


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価(★★★)頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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