変って行く日常
俺、山神柚希。今日も上坂先輩と二人で一緒にいた。姉ちゃんは生徒会の仕事がるからと学校に行ってさっき帰って来た。あれって大変なんだな。
夕飯を食べてお風呂に入って自分の部屋で予習でもしようとしていた所にスマホが震えた。
詩織からだ。
『何、詩織?』
『柚希、今日上坂先輩とデートした?』
『デートはしていないけど喜多神社にいったり公園に行ったけど』
『それ、世の中ではデートって言うの。そんな事よりクラスネットにとんでもない物が載っているわよ。直ぐに送るね』
クラスネットには気付かなかった。何だろうと思って詩織から同時に送られてきた写真を見た。
えっ、そこには上坂先輩が喜多神社の階段の下で俺に覆いかぶさっている動画や公園で一緒に歩いている動画が載って行った。
『詩織これって?』
『柚希、あなた上坂先輩と付き合っているの』
『そんな事はない。偶々一緒に喜多神社に行っただけだ』
『それで公衆の面前で抱き合っているの?不味いわよこれ』
『どうしようかこれ。俺先輩と付き合っていないし』
『どちらにしろ、直ぐに学校内にも広まるわ。取敢えず明日はクラス内対策ね。じゃあ明日の登校の時に』
『ああ、そうだな』
この後直ぐに亮からも連絡が有った。やはり詩織と同じ事になって、とにかく明日という事になった。
翌朝、ダイニングに行くと姉ちゃんがじっと俺の顔を見て
「柚希、派手な事しているわね」
「何の事?」
「昨日の事よ。上坂さんとのデート。特に階段の下の抱き着きはインパクトあるわ。彼女とは付き合っているの?」
「付き合っていない。それにあれは事故だ」
「じゃあ、公園デートは?」
「それは…」
「いずれにしろ当分の間、覚悟して学校に行く事ね。彼女は校内では人気がある。それなりの反動があなたに行くわよ。でも困ったら私に言いなさい。私もそれなりに顔が聞くから」
「ありがとう姉ちゃん。でもやっぱり大変になるか」
昨日のあの時で俺の平穏な高校生活は終わったのかな。喜多神社には平穏な日々が送れます様にってお祈りしたんだけど。
俺は、家の玄関を出ると詩織が自分の家の前で待っていた。直ぐ隣だから。
「おはよう柚希。思ったより情報が流れるのが早い。昨日の内に校内ネットにも流れた」
「知っている。姉ちゃんから教えて貰った」
「ちょっとクラス対応だけではすまないわね」
「詩織助けてくれ。こんな事になるなら助けなければ……」
「柚希、それは言っては駄目な事よ。特に先輩の前ではね。それにもう遅いかも。彼女、柚希に興味を持ち始めている。どちらかと言うと好きという方向の興味」
「そ、そんな事ある訳無いだろう。俺だよ、どう考えたら先輩が俺なんかに」
「じゃあ、なんで喜多神社の後、公園に行ったりしたの。当然お昼も一緒だったんでしょ。好きでも無かったら普通行かないわ」
「俺、先輩を助けただけなのに…」
二つ先の駅から亮が電車に乗って来た。
「柚希、ちょっと不味いな。クラスの中だけなら良いが、クラス外じゃ、結構人を集めるかもな」
「勘弁してくれ」
学校の有る駅二つ前から梨音が乗って来た。何故か怒った顔をしている。なんで?
学校の最寄り駅を降りて改札を出た所から、周りの視線が気になりだした。俺達の方を見て何か話している。
学校の側に来ると俺の顔見てひそひそ話す姿が更に多くなった。さっきより興味、嫉妬、妬み色々な視線が俺に集まる。特に男子からはきつい視線が多い。
下駄箱で急いで履き替えて教室入ると一斉に視線を浴びた。
自分の机にスクールバッグを置くと直ぐに後ろに座る渡辺さんが
「山神君、上坂先輩と付き合っているの?」
それを答えようとした時
「山神、昨日の件、説明してくれ」
「上坂先輩と抱き合う程の仲なのか?」
「山神君、上坂先輩とどこまで進んだの?」
もうめちゃくちゃだ。そこに俺の前に座る亮が
「皆、待った待った。柚希が困っている。一度に聞かれても答えられないぞ。順番に聞いてくれ」
亮助かったよ。
亮の言葉に渡辺さんが
「じゃあ、私が最初ね。山神君、上坂先輩と付き合っているの?」
「付き合っていない」
「じゃあ、あの抱き着きは何?」
「あれは事故だ」
仕方なしに喜多神社に先輩と一緒にお参りをした事を皆に説明した所で担任の祥子先生が入って来た。助かった。
でも授業の中休みの間、みんなの質問攻めに有った。
そして昼休み。
「柚希、俺が購買に行って来るから、お前はここで待って居ろ。今日は教室の外に出ない方がいい」
「亮、悪いな」
亮が教室から出て行った。詩織が直ぐに俺の側にやって来て
「柚希、明日からこれが落着くまで私お弁当作ってあげようか」
「流石に詩織にそこまではさせられない」
「構わないよ」
「ねえ、それなら私が作ってきてあげてもいいわよ。どうせ一つ作るも二つ作るも同じだから」
「いやいや渡辺さんに作って貰うのは悪いよ」
梨音がじっと俺の顔を見ている。その時亮が帰って来た。
「柚希、買って来たぞ。ここで食べるか」
「ああ」
クラスの皆は俺に興味津々の様だが、亮と食べ始めると
「柚希、私がお弁当作って来る」
「梨音、それは要らない。おまえ一人暮らしで大変だろう。俺に手間をかける必要はない」
「柚希、おまえ神崎さんと…」
「ああ、友達としてなら話していい事にした」
「「えっ?」」
詩織と渡辺さんが驚いた。なんでって顔をしている。
私、渡辺静香。不味いわ。山神君が神崎さんと何が有ったか知らないけど、彼女急に山神君に接近し始めている。
設楽さんは、山神君と幼馴染で恋愛感情は無い様だから良いけど彼女は不味い。上坂先輩と多分校内一、二を争う程の容姿このまま進んだら…何となくだけど。
「そうか、柚希が神崎さんと話すと言うなら俺もそうするよ。でも…あとで教えろよ」
「ああ、後でな」
私、上坂瞳。昨日柚希と私が抱き着いている所や公園で歩いている所を誰かに撮られて夜校内ネットに投稿された。
案の定、教室に入ってからクラスの子達に質問攻めに有ったが、まだ友達だからという事で逃げた。
柚希の姉の山神さんからは弟が迷惑掛からない様にしてねとちょっときつく言われた。
まさか、彼と会っている所を校内ネットに投稿されるなんて思いもよらなかった。私は告白される事も多いが全て断っている。男子何か興味ないという感じで。それだけにこの情報は不味い。なんとかしないと。
とにかく彼と連絡取りたいが、今は学校の中。放課後まで待つしかない。
でも…。良く考えるとこれは好機かも。彼と校内でもおおっぴらに会う事が出来る。ならばこの状況を逆手に取って…。でもまだ付き合っている訳でも無いし、彼に恋心…ないなあ、どうしようかな。
まあ、とにかくこのままでは変な方向に話が進む可能性が高い、ここは彼とは友達として付き合っているという体で行くしかないか。
―――――
柚希と瞳大変な事になっています。
次回をお楽しみに
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