不幸な人間_006
「……つ、着いた……」
駅から出て、どれくらい経っただろう。
家とは違う方角に足を進め、ようやく辿り着いた『願いを叶える心霊スポット』は――交通量の多そうな四辻の交差点だった。
深夜であったとしても、車の往来がありそうな大通り。
偶々なのか人っ子一人、一台の車の影すら見られなかった。けれど、
「あ……」
交差点すぐの道端には、幾つかの花束やお菓子など、供養の残り香がある。
それだけで、この場所が『心霊スポット』と呼ぶに相応しい場所なのだと再認識させられた。
動画で見た内容よりも生々しい現実。
願いを叶える為に来た人もいたのかも知れない。
もしくは全くの無関係で……ただ事故に巻き込まれた人もいたのかも知れない。
そんな人達のことを思うと、胸が痛む。
(でも、私にだって叶えたい願いはある)
「……ふぅ」
ザワつく感情を落ち着かせるため、深呼吸を一つ。
そして私は改めて『心霊スポット』での〝作法〟とやらを思い起こす。
動画で話していた内容はどこか仰々しいものだったけれど、簡単に要約すると四つに分類されていた。
壱――〝決められた場所〟を通ること。
弐――〝願い事〟は人目を避けた時刻に行うこと。
参――〝ナニ〟が遭っても、『中央』に留まること。
肆――〝願い事〟は四回唱えること。
やたら漠然としたところと、具体的なところが混在している不思議な〝作法〟だと思う。
それでも手順を守ることで『願い』を叶えてくれるのなら、御の字だ。
意を決して、私は四辻交差点の中央を目指して歩き出した。