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幽冥の月に見初められし者_006

 ☽ ☽ ☽


「……。みこと、大丈夫、なの?」

「……。みこと、返事するの、なの?」

「……うぅ、大丈夫じゃない……」

 私の不安そうな様子を気にしてか、二人が声をかけてくれた。

 けれど情けない声しか出すことができない自分が、そこにはいた。

『みこと。遊ぼう?』

 朝の挨拶をしようと二人の姿を捜し、見つけ出したはいいものの、挨拶を終えるや否や早速遊びをせがまれたのだ。勿論、拒否する気など微塵もなく「いいよ」と即答した。

 けれど次の瞬間、取り出された遊び道具に硬直したのだ。

(てっきり、かくれんぼとか鬼ごっこくらいだと思ってたのに……)

 手元にはトランプよりも一回りほど小振りな札。

 そしてそこには、猪や藤、盃など色鮮やかで古風な図絵が描かれている。

 そう――所謂、花札という代物だった。

「これとこれが……花見、酒? それでこっちが猪鹿蝶……?」

「もう少し、なの。みこと」

「タンって、短冊を集めればいいのね」

「そうなの。やって覚えるの、なの」

「うぅ……ん」

 それぞれの絵柄によって決められた役を、覚えられそうで覚えられない。

「次にやみねともう一回、遊ぶ?」

「ま、待ってね、二人とも。……まだ札を覚えられてなくて……」

 黄泉月譲りなのか、生来の性格からなのかは判らないが、二人は意外にもスパルタだった。

 それでも嫌にならないのは、やはり二人と遊べるのが嬉しいからだろう。

 妹のようで、可愛い。今までにはない感情が生まれ、浮かんでは弾けていく。

「あっ、そういえばね。冥一郎さんから、屋敷の外に出て良いって言われたんだよ」

 さりげなく花札の話題から逸れようと、先ほど許されたばかりの話を二人に振った。

「ん……。手の甲に徴があるの、なの」

「護人様と〝番〟になったの、なの」

『だから、大丈夫なの』

 口を揃えて、大丈夫という二人。

 それは昨日まで話していた『屋敷の外』への危険性を回避できるという意味で、二人にとっても良いことなのだろうと思った。

「だから、今度三人で出かけよう? 色々教えて欲しいなぁ」

「みつねの判ることなら」

「やみねの話せることなら」

 同時に頷く二人に微笑み返すも、気を抜いた次の瞬間、

「花見で一杯、猪鹿蝶、なの」

「あっ」

 みつねの手によって役を決められてしまった。

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