幽世の護人_013
だから、だろう。
(出かける前の冥一郎さん、なんだか様子が変だった……)
感覚でしかモノが言えないもどかしさはある。
冥一郎さんに突然押し倒されたあの時も、そうだ。
夜色の瞳でまっすぐに見つめられた時は、心臓が爆発しそうなくらいドキドキした。
でもどこか苦しそうな、辛そうな瞳をしていた。
(結局、禍津者が侵入してきたことで、うやむやになっちゃったけれど……)
ザワリと胸の内側が不安で掻き乱される。
「冥一郎さん……」
冥一郎さんの姿が浮かぶ。
早く逢いたい。
早く顔を見て安心したい。
そんな感情、今の今まで異性に対して思うことなんてなかった。なのに――今はこんなにも心が掻き乱されている。
(外に通じそうな扉は……あそこだ!)
目敏くも視界の端に捉えた木製扉へと飛びつく。
そして、重たいながらも施錠されていない扉を思い切り横に開いた瞬間、
「ン?」
「おや?」
「みこと……?」
一目見ただけでもがたいが良いと分かってしまうほど――上半身をはだけた男らが立っていた。しとどに濡れた髪、水によって肌に張り付き透けた着物。言い表すことのできない色香に当てられ、
「ひゃあああぁ――――!」
子供のような悲鳴が、私の口から迸った。




