幽世の護人_012
「それであの、私に何かご用ですか?」
「おおっ、そうじゃそうじゃ。どうやら冥一郎たちが帰ってきたようじゃぞ」
「え? ほ、本当ですか……」
「先ほど報せが飛んできおったからのう。みことにも言うておこうと思うてな」
「ありがとうございます……!」
禍津者というものがどんな姿をしているのかは知らない。
それでも、怪我をしていないだろうかと不安が過る。
思わず立ち上がると、食い気味に黄泉月へと問いかける。
「何処に行けば会えますか?」
「ふむ。まあ、もう屋敷には戻っておるじゃろうから……部屋よりかは離れにある外井戸かもしれん――」
「井戸ですね、ありがとうございます!」
言葉は、最後まで聞かなかった。
足早に部屋を後にすると、ひとまず屋敷の外側が見えるであろう廊下を進む。
(私、どうしてこんなに急いでるんだろう……?)
自問する。
(冥一郎さんに逢いたいから? なんで……)
それは言葉に言い表すことのできない何か。
第六感、とでも言ってもいい。
だから断言なんてできない。そんな自信もない。
逢ってまだ間もない関係だけれど……ただ、私の杞憂であって欲しかった。
それこそ、現世で過ごしていた時のように――。
「冥一郎さん」
今だから思う。ソレは、私の〝特性〟だった。
人の視線や声の強弱、高低。その日、その時の些細な変化に怯えていた。
けれど同時に、変化していく人に対して早めに対処できる時もあった。。
たとえば、体調の良し悪しを微細な声の変化だけで感じ取り、早めに休みを促すことができた。他にも痛みを我慢している人、些細な怪我をした人――こと〝我慢〟をしている相手に対して反応できることが多かった。




