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幽世の護人_008

 幽世に現れる穢れの吹き溜まり。

 現世と幽世の間では時間が傾ぎ、年月の概念などは関係がない。

 だがそれでも現世で起きたことは幽世にも必ず大きな爪痕を残す。だがら――、

「――導いてやろう」

 懐からおもむろに一つの道具を取り出した。

 それは一見どこにでもあるような盃だ。

 だが、それを足下に置くとすぐに盃に異変が起きた。

 カタカタと……まるで何かと呼応するかのように盃が細かく震えだした。

 そのまま割れてしまうかと思った刹那、カラカラに乾いていた盃の内側から液体が溢れ出す。

 同時に吟醸香にも似た芳しい匂いが周囲の死の香りと混ざりゆっくりと溶かしながら、並々と溢れて森を濡らしていく。


 みずしるべ はたて

 おちてしずむは ついのみち

 ねいなさりょ はたて

 むかいいれるは ついのみち

 うつしよ はたて

 かくりよ はたて

 あまつちわかつは とがのみち

 あわせねがうは けがれみち


 鎮魂の唄。

 それは薄暗い森の中に溶け、消えてゆく。

 誘いの唄。

 それは空めがけて開いた扇子によって更に広範囲に拡散していく。

 人知れず行われる儀式。

 それは人の世の裏に在る、秘匿されたもの。

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