幽世の護人_005
「みつねちゃん、やみねちゃん。訊いてもいい?」
「みつねでいいの、なの」
「やみねでいいの、なの」
「そ、そう? なら……二人に訊きたいんだけど。幽世って、あまり明るくならないの?」
「明るく、なの?」
「月の光、なの?」
「ううん。そうじゃなくて……太陽の光、みたいもの」
「幽世は時が傾いでる、なの」
「陽の恩恵も月の加護も、一定ではないの、なの」
『だから〝幽世の護人〟様が護ってくれてる、なの』
「〝幽世の護人〟……?」
また、新しい言葉だ。
その〝幽世の護人〟様とやらのことを深く聞いてみたい。
けれど、今の自分では一度に聞いたところで、深く噛み砕いて理解が及ばない気がした。
『あまり急ぎすぎては事をし損じる。それはみことも本意ではあるまい?』
黄泉月の言葉を思い返す。
私は私のスピードで、事をこなしていけばいい。
そう自分に言い聞かせていると、不意に二人が一つの部屋の前で止まった。
小さな手で、左右に襖を開き、その部屋へと入るとそこはどうやら茶道をする部屋のようだった。テレビなどでは見たことはあるものの、実際に触れる機会の無い道具の数々が、決まった位置にきちんと収まっていた。
「そういえば……。二人の身につけている着物って、どことなく黄泉月の物と似ているのね?」
茶室の一角に座りながら、私はふと思ったことを呟いた。
「黄泉月様は『方術』のお師様なの」
「厳しいけど優しい御方、なの」
「お師様……? 黄泉月が」
少し意外に思う。
二人の年齢も、多分十二歳かそこらだ。そんな二人に教えている『術』とは、いったいどんなものなのだろう。




