幽世の護人_004
黄泉月の合図と共に、襖が静かに開くと、そこには幼い二人の少女がいた。
身形は、胡蝶さん達とは違う。
どちらかと言えば、黄泉月と近い身形をしている。
(あ……。この子達……)
静々とこちらに近寄ってきた少女達は、双子だった。
「此奴らの名は、みつねとやみねじゃ。ほれ、挨拶せい」
「初めましてなの、みこと。みつねなの」
「初めましてなの、みこと。やみねなの」
一見しただけでは正直なところすぐに区別はつかない。
だがそれぞれが似た装飾品を対照的な位置に点けているお陰で、慣れれば何とか見分けがつけられそうだった。
「宜しくね」
『宜しくお願いしますなの』
二人はそう言って、床に小さな両手をつくと深々と頭を垂れた。
慌てて私も同じように倣う。
二人の動作はズレることなく一心同体。とても礼儀正しくて、可愛らしい。
そしてその二人が纏う空気は柔らかく穏やかで、どこか小動物的な印象を受けた。
『みこと。一緒に行こうなの』
そう言うと、みつねとやみねはそれぞれ私の両手を握り締めると、別室に行こうと促す。
「甘い物もあるの」
「しょっぱい物もあるの」
「そ、そうなの?」
思わず二人の口調に合わせてしまいながら、私は大人しく着いて行った。
「足下、気をつけてなの」
「ギューギュー鳴るのなの」
細く長い板張りの廊下を三人で歩く。
二人の歩調は短い。けれどゆっくり歩いてくれているお陰で、足袋に不慣れな私でも板張りで滑ることなく移動することができた。
「ん……」
刹那、障子の隙間からわずかに漏れた光が目に刺さる。
気づけば、外は昼間とは言わないものの、明るさを取り戻していた。




