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不幸な人間_002

「えー。四季さんと組むの嫌ですよ、私。だって必ず失敗するじゃないですか」

 休憩室の一角。その言葉を聞いてしまったのは、本当に偶然のことだった。

「わかるわかる。無駄に怒られたくないしなぁ」

「失敗するって分かってて、一緒にやりたがる人なんていないでしょ」

「…………」

 誰にも聞こえないと思っているのか、敢えて聞こえるように言っているのかは分からない。

 それでも聞き覚えのある高い声が次々と発するのは、棘のある言葉ばかりだ。

「……ッ」

(そう、だよね……)

 心の中で、同意する。

 私自身でさえも、嫌なのだ。

 仕事は嫌いじゃない。人間関係も、特別嫌いな人がいるでもない。

 でも、あらゆることが上手くいかない。上手く、できない。

「要領が悪いって言うの? あれ」

「わざとしてるとかないよね……」

「そんなまさかー」

 交わされる言葉の数々。

 その一つ一つが、鋭い刃のように胸に突き刺さる。

 そんな輪の中に入っていく勇気など当然なく、手にしていたコンビニ袋を握り締めると大人しく移動する。

 どこでご飯を食べるかなんて、考えてない。

 とにかく人目の付かない静かな場所で、味のない食事を摂ろうと思った。

「仕方ないよね」

 誰にいうでもなく、呟く。

(全部、私が悪いんだから……)

 それは、もうすっかり口癖になった言葉――。


『一緒に仕事なんかしたくない』

 

 ハッキリと告げられたその言葉を胸の内で反芻する。

 反芻したくなくても、どうしてもしてしまう。

「なんで、そんな言葉を平気で言えるんだろう……」

 言葉に傷つきやすいだけと言えばそれまでだ。

 だが言葉を発することで及ぼす影響を、その重みを、私は身を以て識っている。

 一度口に出した言葉を生かすも殺すも自分次第。

 取り返しの付かないことになる〝イキモノ〟であることを――私は、識っている。

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