表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/68

夜を纏う男はかく語る_014

「…………」

 私は自分でも気づけないほど、憔悴してしまっていたのだろう。

 閉口し俯くことしかできないままでいた私を見かねてか、不意に声が投げかけられた。

「今日のところは一先ずこのくらいにしよう」

「そうか? 延ばした所で、結果は変わらんじゃろう」

 さらに言葉を続けようとしていた黄泉月の言葉を、不意に冥一郎さんが制した。

「あまり多くを話しても、みことの負担になるだけだ」

「……。仕方がないのう」

 渋々言いながら、それでも意外とあっさり引いた黄泉月を横目に見つつ、私は正座によって痺れていた脚をようやく崩すことができた。

「……疲れさせたか」

「少し……だけ、です」

 冥一郎さんと視線を合わせることができない。

 自分の置かれた状況。そして――魂魄(うつわ)としての今の現実をどう受け止め、行動していけば良いのだろう。頭の中がグルグルと言葉にできない言葉で埋め尽くされていく。

「……っ」

 気づけば、喉がカラカラに渇いていた。無自覚のうちに緊張していたのだろう。

 既に冷めたお茶に口付け一息つく。どんな言葉を交わしていけばいいのか。

 朝の出来事にはただただ驚くことしかできなかったが、魂魄(うつわ)という自分の今の状態がどれだけ脆く危ぶむものなのか。あまりにも認識と実感が乖離している。

「冥一郎さん。あの――」

 言葉を紡ごうとして、ふと躊躇する。

 何を話そう。何を訊こう。自分がどんな言葉を紡ぐことが相応しいのだろう。

「…………」

 今どんな言葉を紡いでも、きっと空虚なものになってしまいそうだった。

 そんな私の胸中を察したのか、

「……せっかくだ。気分転換でもしようか」

「……はい?」

 次の瞬間、フワリと視線の高さが変わった。

「え? あ、の……!」

 気づけば、抵抗する間もなく冥一郎さんの手によって抱き上げられていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ