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夜を纏う男はかく語る_013

「ほ、んと……に、私っ、死んでる、ッんですか……?」

 嗚咽が込み上がるのを抑えられないまま、どうにかならないのかと問う。

 不意に、冥一郎さんの指が涙で濡れた頬を滑る。

 着物の袖を使い、涙の痕に沿わせるようにして優しく拭われた。

「……黄泉月、もっと言葉をよく選べ」

「否。他に言いようがあるのか?」

「……」

 黄泉月さんをひと睨みしてから、小さな吐息を零すと冥一郎さんはそっと私の両手を握りゆっくりと諭すように言葉を紡ぐ。

「正確に言葉を選ぶのなら、まだ完全に死んではいない。今のみことの魂魄(うつわ)は不安定だ。だから、みことがいた世界――(うつし)()に戻れるかも知れん。だが、その不安定さが故に魂魄が壊れる可能性もある」

 ゆっくりと発せられた言葉が、耳朶から身体の内側に浸透していく。

 理解できない言葉。理解できない仕組み。理解できない死。

 そんな中でも唯一縋るように、もとの世界に戻れるかもしれないという希望に頭を垂れた。

 不安定でもいい。もし、本当に生き返られるのだとしたらその方法を模索する。

 だって、私は不幸なまま死にたくはない。

 幸せになりたい。幸せなまま、最期を迎えたい。

 そう、神様にお願いした筈なのだ。あの場所、あの時、あの瞬間。

 心の底から願った純粋な想いすら、簡単に打ち砕かれてなるものか。

「戻れる可能性も、あるのね……?」

 それがどんな形であれ――選択肢がないまま諦めるより、ずっとマシだ。

 彼らが口に出す〝魂魄(うつわ)〟。それが、今の私の〝状態〟を指し示すのだとしたら――、

魂魄(うつわ)が……壊れたら? どう、なるの」

 嗚咽を噛み殺しながら、問いかける。

「どうもこうもない。(かくり)()――つまりはあの世の住人となろうなぁ」

 黄泉月は平然と、恐ろしいことを口走った。

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