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夜を纏う男はかく語る_002

「こ、こは……?」

 喉奥が擦れ、ろくに声が発せられない。

 それでも身動ぎをし、なんとか起き上がろうとする。

 だがすぐに、男の人の手によってやんわりと制された。

「……まだ、動くな。身体に障る」

「で、も……」

 徐々に意識がハッキリしてくるにつれ、湧き上がる不安感。

「貴方は? どうして私……寝てるの……」

 なんとか唇を動かし、頭の中に浮かぶ疑問を次々と口に出す。

 男の人は何者で、私はどこにいて、何があったのか。

 疑念と疑問。混濁した記憶の不安から、恐怖を宿した視線を男の人に向ける。

「…………」

 私の問いかけに、その男の人は何かを言いかけた。

 けれどそれは言の葉になることなく、微かに吐き出された吐息に混じって消える。

「……説明は後だ」

 低く淡々とした口調。切れ長の夜色の瞳がよりいっそう鋭く細まる。

 怒らせてしまっただろうかと、萎縮し、思わず視線を逸らすとそれ以上言葉を発することができなくなった。

「…………」

「…………」

 互いに無言のまま、数秒とも数十秒とも分からない時間が過ぎる。

「すま、ない……」

 やがて沈黙を破るように、千切れた言の葉が男の口から零れ落ちた。

「こちら側に来て間もないうちは、魂魄うつわが安定していない。……無理をすれば、魂魄うつわに傷を付けることになる」

「うつ、わ……?」

「説明は……後で、きちんとする。今は、とにかく休め。それだけだ」

 短く切るように言葉を一方的に紡ぎ、そのまま男の人は顔を背けてしまう。

 疑問も疑念も、明確な答えは得られていない。

 それが悲しくもあった。けれど告げられた言葉の数々は、私の身体を労って発せられているのだと不思議と理解できた。

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