16話
公爵邸には、ケプラー子爵夫妻も招待を受けているので、一緒に向かう。他にロイド伯爵の一家も招待を受けていた。あと、知らない男性が一人。あまり上等の生地ではないけれど、キチンとした身なりをしている。
「街の警邏隊の隊長です。伯父上の学生時代からの友人です。」
ギルベルト様がそう教えてくれた。
その隊長は、どうやら公爵と言い争いをしているみたいだった。
「だから、王女が来るような場に平民の俺を呼ぶな!」
「強情な男だな。せっかく鹿肉をご馳走しようというのに。」
「鹿肉をご馳走様しようと思うなら、鹿肉だけを寄越せ。
お前やハルは気にしないかもしれんが、常識的に考えて王女と平民が一緒のテーブルに着くなんておかしいだろう。お前らの常識は世間の非常識だ。」
明らかに揉めている。
盗み聞きする気はないけれど、聞こえてくる。どうやら、警邏隊の隊長は平民で、王女の私と同じテーブルで食事をするのが嫌らしい。平民の自分と王女である私が一緒に食事をするのは非常識だと言っている。まあ、普通はそうだよね。キチンとした身なりをしているし、ギルベルト様の話では王立騎士養成学校を出ているというから、マナーもちゃんとしているだろうし、私は構わないかな?でも、どうやって伝えたら良いのかしら?
気づくと、ギルベルト様が不安そうな顔をしている。
「その、平民と接するのはお嫌ですか?下級貴族も?」
どうしてそんなことを聞くのかしら?あ、私がさっき「公爵は平民に友人がいるのか」と聞いたからだ。「ギルベルト様がそうしたいのなら、私は構わない。ヴェストニアで
は平民の学者に教わったこともある」と返事をすると、ギルベルト様はホッとした顔をした。
「級友のほとんどは平民なんです。家に来ることもありますし、卒業しても付き合っていきたいと思っているんです。」
ああ、そういうことね。ギルベルト様の級友がどんな人なのか知らないけれど、王立高等学院に通っているくらいだから平民といってもそれなりの家の人に違いない。成り上がりの下級貴族よりも、マナーとかしっかりしてるに違いないわ。
後日、私の認識が間違っていたことがわかった。王立高等学院は家柄や財力ではなく、学力やどれだけ学びたいかを重視しているので、いろいろな階級や家柄、資産の人が在籍している。ギルベルト様の学年は特に下層階級の人が多かったみたい。けれど会ってみると、彼らは王女としての私を形式的に敬う貴族よりも私個人を尊重してくれており、多少のマナー違反も気にならなかった。マナー云々を言うなら、王女の私が一番あやしい、、、
公爵がみんなを簡単に紹介して食事が始まった。公爵には奥様がいないので、ギルベルト様と結婚したら私が公爵家の女主人の務めをしなければならないのかしら?招かれた場合の振る舞いは?せっかくの鹿肉だというのに、味わえないかも!
なんて思ってたのに、前菜から美味しくて、ケプラー子爵夫人やロイド伯爵夫人を観察することなんて、すっかり忘れていた。それに気づいたのはほとんど食事が終わって、公爵に話しかけられてからだった。
「殿下、ご満足いただけたようで良かったです。」
どうしましょう、観察もだけど、あまりにも美味しくてパクついて食べてしまったかも。パクつくくらいならかわいくて、ガツガツ食べちゃったかもしれない。ハンナにあんなに言われていたのに、、、会話もあまりできていなかったかも。
グロリア様が女性陣を先導する。
「もう少し、みんなでお喋りしましょう。」
女性と男性と分かれてそれぞれの部屋に行った。
気を使ってか、グロリア様が私の隣に座ってくれる。何か、話をしなければ。私は今日、ラトル、王都で人気のショコラトリーの併設されているカフェに行ったことを話した。
そのことを話すとイザベル様が羨ましがった。
「え〜、殿下、ラトルに行かれたのですか?いいなあ、私も行きたい。
ねえ、お母様、明日、ラトルに行きましょうよ。ウィリアム様も誘って。学校は明明後日からなのだからいいでしょう?」
「ダメよ、イザベル。イザベルはお休みだけど、ウィルは明日から学校だもの、無理よ。」
グロリア様の言葉を聞いて、残念そうな顔をするイザベル様。大好きな婚約者と行けないなんて、悲しいよね。
ため息をつくイザベル様。
「どうしてお父様は私を王立高等学院に行かせてくれなかったのかしら?ウィリアム様を私のお相手にと考えたのは私が入学する前からだったと思うのよ。だったら、一緒の学校に通えるようにしてくれても良かったと思うの。」
うん、そうだよね。好きな人とは少しでも一緒にいたいよね。学校が一緒なら、一日の大半は一緒にいられるわけだし。
私もギルベルト様と一緒の王立高等学院が良かったけれど、お父様やお母様を説得できそうになかった。卒業後の人脈のことを考えると、聖白百合学園一択。でも、イザベル様は少なくとも卒業後の人脈のことは私ほど切実じゃないだろうし、王立高等学院に行かせてくれれば良かったと思うのも道理よね。
「でも、イザベル、小父様がウィルをと考えたのはイザベルの入学後のことかもしれないし、それにイザベルは聖白百合学園に通えることになった時に『お母様と一緒の学校』って喜んでたじゃない。制服だって、家に見せに来たでしょ。だから、イザベルは聖白百合学園でいいの。」
イザベル様、制服姿をギルベルト様達に見せに来たんだ。可愛らしいイザベル様なら、とても素敵に見えたに違いない。今日の私の制服姿はそれと比較されたのか、、、
ケプラー子爵夫人に話しかけられる。
「殿下、御気分でも?」
「いえ、今日、ギルベルト様に私の制服姿をお見せして褒めていただいたのですが、可愛らしいイザベル様と比較されていたかと思うと、、、」
あ、言っちゃった。考え事をしている時に話しかけられると、つい考えている事を言ってしまう。気をつけなければ。可愛らしいイザベル様と比べられると思ったなんて、ここにいるグロリア様やイザベル様、ロイド夫人に「なんて厚かましい」と思われちゃったわ。これから付き合っていかなくてはいけない相手なのに。
グロリア様の表情が険しくなる。
「ギル、お屋敷から帰ってずっと機嫌が良かった理由はそれだったのね。私がギルのオヤツを取っても怒らなかったし、残った分を全部くれるから、何かいいことでもあったのか聞いたら『まあな』としか言わなかったけど、そんないいことがあったなんて!」
グロリア様、人のオヤツを取ったんだ。でも、良かった。私が可愛らしいイザベル様と比較されたかもという「厚かましい懸念」は本当に懸念だったみたい。
「ギル、私の時と態度が違う!私が見せに行ったらチラッと見て、『見たから、もういいだろ』って、武術の練習に行こうとするの。だから『何か言うことないの』って言ったら、『かわいい、かわいい』っておざなりな返事しかしなかったくせに。」
「私の時もそうよ。イザベルも覚えているでしょ、」
私の想定外のことでお二人がヒートアップしている。本当にいらないこと、言っちゃった。どうしよう、、、
でも、ちょっと嬉しい。あの可愛らしいイザベル様の時はおざなりな感想で、私の時は「みんなに見せて回りたい」って。お世辞だとわかっていても、嬉しい。
「今度、ゆっくり、じっくり制服姿を見せてくださいね。邪魔をされないように、あの侍女のいない時に。ああ、制服姿の肖像画を描いてもらうのもいいですね。そうすれば、殿下にお会いできない時も殿下のお姿を見ることができます。」
帰る時にそう言われたもの。
私が優越感に浸っている間に、お二人は更にヒートアップしていた。
「今から、ギルのところに行って抗議しましょうよ!」
「そうね、イザベル。そうしましょう。」
お二人が席を立つ。私のせいだわ。私がいらない事を言ったから。止めなくちゃ。でも、どうやって?
「イザベル。」
ロイド伯爵夫人が呼びかける。
「そろそろ失礼しましょう。」
「え〜、きっとお父様はお泊まりになるわ。私も泊まっていいでしょう?グロリアともっとお話したいもの。」
イザベル様の意識がギルベルト様への抗議よりも公爵邸へのお泊まりに向いた。良かったわ。
「ダメです。グロリアさんもギルベルトさんも明日から学校ですから。泊まらせてもらうのは、お休みの日にしなさい。」
イザベル様は不承不承帰ることにしたみたいだった。
私達も、お暇することにした。帰りの馬車でケプラー子爵夫人はロイド伯爵夫人にお茶会の招待を受けた事を話した。
「その話は私も伯爵から聞いているよ。ロイド伯爵はノーザンフィールド公爵のご友人で、ご息女のイザベル嬢は辺境伯の幼馴染。殿下が降嫁なさって辺境伯夫人となれば付き合わなければならない相手だから、政治的なことは抜きにしても一度は招待をしないわけにはいかないだろうし、仲良くしておきたい相手だろうね。それにご息女の婚約者のウィリアム・タイラー卿は王太子殿下の側近でいわば辺境伯の同僚。だから、断らない方が良いよ。」
ケプラー夫人は宰相夫人の招待ということで、政治的な問題が生じないか心配して返事を保留にしたらしかった。
「私ったら、そんなことも考えつかないなんて。『田舎者なので旦那様に相談してから』とお返事してしまいましたわ。すぐにお伺いするとお返事をします。」
そうか、そういうことも考えなくてはならないのね。それぞれの政治的立ち位置、王宮での役職、親族や閨閥、果ては交友関係まで頭に入れておかなくてはならないなんて。
「貴方がそう返事をすると思って、伺うと宰相に返事をしておいたよ。それから、伯爵と公爵は無二の親友だそうだし、今回は違うだろうけど、お茶会は女性の社交の場で女性同志の政治的駆け引きが行われることがあるから、気をつけて。」
なんて恐ろしい場なの!
お屋敷に帰るとロッテがむくれていた。昼間、ギルベルト様の前に出るなと言ったのが不服らしい。
「お帰りなさいませ。晩餐、楽しかったですか?」
うわ〜、不機嫌さ全開。こんなに感情を露わにするなんて侍女失格なんだろうけど、私は私に対して喜怒哀楽をはっきり出してくれるロッテが大好き。今迄、私の侍女は「王女の侍女」というステータスが欲しい人がほとんどだったもの。こんなにも私の一挙手一投足で機嫌が変わる人なんていなかった。
ロッテに抱きつく。
「ただいま、ロッテ。」
侍女に抱きつく私も王女失格。けれども、失格同士。これでおあいこ。
「ギルベルト様がね、ロッテのこと、私の事をとても思ってくれる頼もしい侍女だって。私もいつもそう思ってるの。とても頼りにしてるわ、ロッテ。」
「な、な、な、なんですか、突然そんな事を言って。そんな事を言っても、騙されませんよ。」
でもね、ロッテ。顔は嬉しそうだし、声もそう。態度は誤魔化せないみたい。
「はい、はい、そこまで。
殿下、明日はまだ学校が始まらないとはいえ、あまり遅くならないうちにお休みください。」
その夜、幸せな気持ちで眠りについた。
翌日、午前中はゆっくりして、昼過ぎにに伯爵邸に子爵夫人と一緒に向かう。私も緊張しているけれど、夫人も緊張しているみたい。
「何か粗相があってはと思うと。」
「多分、夫人は大丈夫です。問題は私です。お菓子が美味しくもなく、不味くもない事を祈ってます。」
私の言葉に頭に?が花盛りになる夫人。
「美味しければパクついて食べてしまうし、不味ければ顔に出てしまうし。
昨夜も出された料理が美味しくて、会話も忘れてパクついてしまって、、、」
晩餐の目的はご馳走を味わうのではなく、社交が主。故に会話もなく食事に没頭してしまった私は王女失格だ。
夫人は微笑んだ。ダメな子を温かく見守る笑顔だわ。
「主人の話によると、公爵は『あんなに美味しそうに召し上がってもらうと、夕食に招いた甲斐がある。我が家の料理人も腕の振るい甲斐があるというものだ』と、とても喜ばれたそうですわ。辺境伯も『あんなに幸せそうに召し上がる方と一緒に食事をするのはそれだけでとても幸福になれる』と。
せっかくお招きしたのに仏頂面で食事をされては招いた方はとても気が沈みますわ。」
たしかに、一生懸命に準備して招いたのに仏頂面では嫌な気になるよね。けれど、物事には限度がある。パクつかないように気をつけなければ。
ロイド伯爵夫人とイザベル様は玄関まで迎えに来てくれた。
「殿下をお招きしているのですから、正式なお茶会にしないといけないのでしょうけれど、殿下はあまり堅苦しいのはお好きではないと伺いましたので。無礼なのは承知ですが。」
お茶会が始まった。お茶会といってもロイド夫人が最初に断った通り、形式ばっておらず、気軽に過ごせるように趣向を凝らしてくれていた。
しばらく四人で話をしていたが、次第に夫人は夫人同士、娘は娘同士で話し始めた。ケプラー夫人はロイド夫人に聖白百合学園のことをいろいろ教わっていた。私の後見人として私が恥ずかしい思いをしないようにだと思う。私が学校に通ってみたい、と我儘を言ったせいで申し訳ない。
私はイザベル様から学校の事をいろいろ教えてもらった。私の周りで学校に通ったことのある人がいなかったから、いろいろ聞けて良かったわ。聞けないまま学校に行っていたら、大変なことになるところだった。自分がわからないからといって勝手に質問したり、疲れたから休憩にしてもらったり、とか。それが許されていたのは、生徒が私一人だったからなのね。
「殿下、二人だけでお喋りしましょうよ。
ねえ、お母様、殿下を私の部屋にご招待してもいいでしょう?」
「私も主人も一人娘で甘やかしてしまって。我儘で困ります。」
ロイド夫人はそう言って、困った顔をした。
私が言い出したならともかく、王女である私を自室に招くなど、イザベル様の申し出は少し非常識だから。
「あの、是非、イザベル様のお部屋を拝見したいです。可愛らしい部屋に憧れているんですけど、実際どのようにしたら良いのかよくわからなくて。参考にさせてもらいたいです。」
私のその言葉にロイド夫人は「まあ、娘の部屋が殿下の参考になるかしら?」と言いながらも、まんざらでもない様子だった。
イザベル様のお部屋は私の想像よりずっと可愛らしかった。可愛らしく上品にまとめてある。私の「部屋をすべてリッツェンで揃える」という案、あれはロッテの言うようにやめた方が良さそうだわ。
その可愛らしい部屋の昔風の衣装を来たクマのぬいぐるみがチョコンと座っている。椅子はぬいぐるみ用の特注みたいで、高さも大きさもピッタリ。あれは、きっと婚約者のタイラー卿から贈られたというぬいぐるみだわ。でも、顔も手も足も全部違う色や柄ね。賑やかで楽しそうと言えばそうだけど、余り布で作ったみたい。宰相の一人娘のイザベル様に余り布で作ったぬいぐるみを?それとも、有名なデザイナーの作品なのかしら?
イザベル様に促され、椅子に座る、イザベル様と私とクマの三人でテーブルを囲んだ。あのクマが気になるけど、聞いていいものなのかしら?余り布で作ったぬいぐるみを贈られるなんて、嫌ではないのかしら。でも、あの服は以前イザベル様が刺繍していた物だわ。あんなに手の込んだ刺繍の服を着せているくらいだから、可愛がっていると考えるのが自然ね。なら、聞いてもいいような気もする。
私の視線はクマに釘付けだったみたいで、イザベル様の方から話を振ってきた。
「殿下、リアム、かっこいいでしょう。」
クマの名前、リアムって言うんだ。
イザベル様は話を続ける。
「リアムはね、初めてウィリアム様とお会いした時にいただいたの。私がぬいぐるみを好きなのを聞いて、ご自分で作ってくださったのよ。」
リアムを膝に乗せて話を続けるイザベル様。
「ウィリアム様のお家が法服貴族なのは、殿下はご存知?
法服貴族の家はあまり裕福でないことが多いの。こんなことを言うのは良くないんでしょうけど、ウィリアム様のお家もご兄弟が多いのもあって、例外ではないらしいの。お父様のお話では私へのプレゼントを何にするかとても悩まれていたらしいわ。普通はペンダントとか、指輪とかのアクセサリーなんだけど、、、
学校のお友達のなかには、貧乏人だからそんなことしかできないんだ、気に入られようと必死すぎって言う人もいたけど、ウィリアム様は自分が、自分の力でできる精一杯を私のためにしてくださったの。だから、リアムは私の宝物なの。」
イザベル様は幸せそうにリアムを抱きしめた。
大国エルメニアの第一宰相の一人娘のイザベル様には法服貴族の次男なんかではなく、家柄的にはもっと相応しいお話がいっぱいあったはず。でも、ロイド伯爵は王太子殿下の乳兄弟とはいえ、余り裕福ではない法服貴族の子爵次男を婿養子に選んだ。きっと、家柄よりも大事なものがタイラー卿にはあったからだと思う。
私はイザベル様の婚約者のウィリアム・タイラー卿のことは王太子殿下の乳兄弟で側近ということ以外ほとんど知らないけれど、あの夜会の時に会ったタイラー卿はイザベル様のことをとても大事に思っていることが伝わってきたし、出世の糸口だから大事にするのなら余り布で作ったぬいぐるみなんかではなく、多少の無理をしても普通にアクセサリーを贈ったと思う。
婚約者のために、自分ができる精一杯を贈る。なんか、いいなあ。でも、私はイザベル様を羨む必要なんかない。私は自分の指に嵌めてある指輪を見る。これはギルベルト様が頑張って得た利益で贈ってくれた指輪。
精一杯の誠意よりも大きな宝石の方がいい、という人も世の中にはいるだろうけど、イザベル様は私と同じように精一杯の方が嬉しいらしい。
「そうですよね。どんなに大きくて立派な宝石でも自分で採掘するわけでも、加工するわけでもないですものね。そのクマのリアムは勉強や仕事で忙しい合間にイザベル様の為に作ってくださったものですもの。どんなに大金を積んでも買えない、とても尊いものですわ。
もっとも、大きくて立派な宝石もその人が頑張って得た利益で買ったものかもしれませんが。」
そう、返事をした。イザベル様はとても嬉しそうな顔をして「ありがとうございます」と言った。
私の指をじっと見るイザベル様。
「殿下も婚約者から頑張った証の宝石を贈られたのでしょう。その指輪、ギルが贈ったものですよね。」
え、なんでイザベル様がギルベルト様が指輪を贈ってくれたことを知っているの?
「ギルはね、殿下がご自分で刺繍をなさったハンカチを贈ってくださったことをとても喜んでいたわ。『あまり得意ではないから人に任せることもできたのにご自分でしてくださった』って。だから自分も人のものではなく、自分の力でできるものを贈りたいって。それで、自分が任されている領地で得た利益で買った宝石を贈ることにしたんです。でも、あまり利益が出なかったみたいで、そんなものを王女である殿下に贈るのは無礼なのではないか、国交に影響するのではないか、と宰相であるお父様に相談に来たんです。」
あんな酷い刺繍をだったのに、そんなに喜んでくれたんだ。イザベル様やハンナに相談して、また刺繍に挑戦しよう。
それからイザベル様と「ここでお話ししたことは内緒ね」といろんなお話をした。ほとんどはイザベル様の惚気話。婚約者の隣に座った、手を繋いだ、一緒にカフェに行った、などなど。イザベル様がどんなに婚約者のことを思っているかよくわかる。
イザベル様はとても嬉しいことを教えてくれた。
「ギルはね、先日、私に学校で流行っている雑貨店とかカフェとか聞いてきたの。なんでそんなこと知りたいのか聞いたら『お前には関係ないだろ』って教えてくれなかったけれど、きっと殿下と行くためだと思うわ。」
ギルベルト様とお出かけ。ケプラー子爵は許可してくれるかしら?




