絶対に読むな!
書は知識をたくわえる上で、とても重要なものだ。
自ら書を綴り、他者の書を読み解き、人は賢き者へと近づいていく。
しかしこの世には絶対に読んではいけない本が存在する。
実際には読むことすら叶わない、触れただけで死する本。
魔女の知識……その一生が綴られた魔書。
その全てが集まってくるのが、ここ王立魔女図書館である。
──────────王立魔女図書館 最下層 魔書の洞
「っと」
禁書の棚、A列からZ列までの合計千二百五十二冊。
全ての魔書に問題なし。
ここ一ヶ月で増えた魔女の書はゼロ。
「よし」
バインダーに挟んだチェック項目の全てにレ点を打ち終え、俺は雁字搦めの鎖に鍵を掛けた。
王立魔女図書館。
グリモワール王国の最奥、世界樹の中に作られた世界最大級の図書館だ。
グリモワール王国は、最も多くの魔女を輩出した国であり、
最も多くの魔女を裁いた国でもある。
「アルファ、終わったのなら少し休憩にしよう」
「そうだなチャーリー。鍵を返したらすぐにいくよ」
そして俺たち”持たざる者“の仕事は、そんな魔女の縁の国で最も危険な“魔書”の管理である。
そもそも魔書とは、読んで字のごとく『魔法の書』。
という訳では無い。
中にはそれに近いものも存在するが、基本的には“魔的な効果を持ってしまった本”である。
人への恨みや呪いのような負の感情から出来た魔書から、喜び、感謝などの正の感情から出来た魔書まで様々だ。
そして、その魔書の中でも最も危険なものこそが“魔女の書”である。
「アルファの無名をもって施錠する」
呪言とともに魔書の鍵置き場に鍵を封印する。
こうすることで、魔女の書の管理者である俺たちにしかこの鍵は触れられず、鍵が封印されている事実により錠は絶対に開けられない存在となる。
それほどまでに魔女の書は危険なのだ。