第一話
15才になり、他の人と同様にスキル授与の式典へと臨んだラック、そんな彼に与えられたスキルは、【ラッキーNo.7】というユニークスキルだった。
「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
僕は初め、目の前にある宝珠の中の言葉が本当にスキルの名前を表しているのか理解できなかった。
なぜなら、見たことも聞いたこともない名前だったからだ。
呆然とする僕に、先に正気に戻った神父様が声を掛けてくださった。
『まさか、自分のこの目でユニークスキルの授与に立ち会えるとは。おぉ、神よ………感謝致します。そこの少年、名前は確かラックだったね。』
「………………。」
『おーい、ラック少年。大丈夫か?』
呆然とするラックのことを心配した神父様が、彼の顔の前で手を振り、現実に呼び戻そうとしながら声を掛けました。
「は、はい………大丈夫………ではないですね。神父様、見たことも聞いたこともないスキルなのですが、これって一体?あと、宝珠が虹色に輝くなんて他の子のときは起きなかったような………それに先程、ユニークスキルっておっしゃってたような………」
興奮し過ぎて早口に捲し立てるラック。
次から次へと聞きたいことが溢れてきて、矢継ぎ早に質問攻めしてしまう彼の様子に神父様も困り顔です。
『まぁまぁ、落ち着きなさい。スキル名を聞いたことがないの当たり前ですよ。なぜなら、ユニークスキルなのですから。宝珠が虹色に輝きましたね。あれがユニークスキルである何よりの証拠です。これまでに一度も発現したことのないスキルであった場合、あのように虹色に輝くのですよ。まさか、この目でその輝きを見ることができるとは思いも寄りませんでしたが………』
神父様も興奮冷めやらぬ中、ラックの質問に丁寧に答えます。
『ユニークスキルを得た者は、望むと望まざるとに関わらず平穏無事な生活は送れないと聞きます。』
少し落ち着いてきた神父様が神妙な顔をしてそう言いました。
「そうなんですか………元々、僕は誰からも頼りにされるような立派なハンターとして、この世界を駆け巡りたいと考えていました。だから、波瀾万丈な人生は願ったり叶ったりです。」
心配してくれる神父様の不安を消し飛ばすように、ラックは笑顔でそう返しました。
ラックの夢は、世界一のハンターになることです。
今回のユニークスキルの獲得は、夢へと大きく近付く一歩となるはずだと考えました。
そんな希望に満ちたラックの目を見た神父様は、心配し過ぎるのも逆に失礼かと思い至り、
『そなたの旅路に幸多からんことを。』
と笑顔で送り出すことに決めました。
自分の授与にかなりの時間を掛けてしまい、後ろに並んでいる人たちに迷惑を掛けてしまったと恐縮しきりのラック。
しかし並んでいる人たちには、『すばらしいものを見ることができた。』とむしろ感謝されてしまい、益々恐縮してしまうラックなのでした。
ちなみに、ウィーシャ村は、人口150人ほどの狭い村です。
このとき既に村中では、ユニークスキルが発現した噂で持ち切りでした。
そのことを知らないのは、本人と教会にいる数名の子たちだけです。
“知らぬは本人ばかりなり”とは………………
そんな思いも寄らぬことで時間を取られてしまいましたが、スキル授与式も無事(?)に終わり、ラックは教会を後にしました。
ユニークスキルというこれ以上ないスキルを手にいれたラックですが、彼のハンター生活はまだ始まってすらいません。
まずはハンター登録をするために、ハンターギルドに向かうことにしました。
ハンターギルドとは、全世界どこの国にも存在する組織のことで、ハンターになるためにはここで登録してハンター資格を取得する必要がある。
ハンターは基本的にギルドで依頼を受けて、それを達成することで報酬を得たり、モンスターを狩って得た素材を売ったりすることができる。
ハンター資格を持たずに活動することもできなくはないが、そういった者は通称“モグリ”と呼ばれ、素材を売るにしても適正価格よりも安く買い叩かれることが多い。
そのためほとんどのハンターがギルドに登録しており、登録していないのは何かしら理由があるか、脛に傷のあるような日陰を好む人間しかいないのが現状である。
ハンターギルドは、村の中央にある一番大きく目立った建物です。
ラックはギルドに向かう道中、どうも村中の人が、こちらを向いてこそこそ話したり、自分を指差したりしているように感じました。
妙に人の視線も感じましたが、噂になっているなんて露にも思っていない彼は、きっと自分の気のせいだと考えました。
「よし、ここがハンターギルドか。」
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村の人々の噂を少し紹介
(彼がユニークスキルを発現させたらしいぞ。)
(きっと将来大物になるに違いない。)
(今のうちに唾つけとこうかしら。)
(あいつはやる男だって昔から思っていたんだ。)
(彼とは昔からの親友でね。)
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