メイド部隊推参!
サブタイトルは辞書で推参の意味に招かれてもいないのに訪問することとかほにゃらら書いていたので~(笑)
これは皇太后ルクレツィアを日夜問わず護衛するメイド部隊の少女達と、その他諸々の4コマ的『日常』の物語である。
Episode:アヒル隊長
「ルクレツィア様」
「はあい」
「ルクレツィア様」
「はいはいなあに?」
「なんでもありません」
「まあまあ、そうなの?はおかしな子ねえ」
「えへへ」
「ルクレツィア様」
「どうしたの?」
「どうもしません」
「ふふふ。この後時間があるのならば離宮の裏山でピクニックでもしましょうか?」
「え?!いいんですか?暇です暇です。行きましょう!」
「楽しみねえ」
「楽しみですねえ」
美しく整えられた離宮の中庭。
濃い緑の匂いに、華やかな薔薇の香りが混ざり見る者の鼻や勿論目を楽しませている。
庭園を望むバルコニーの人影はふたつ。
背もたれの高いソファに腰掛ける柔らかな微笑みを浮かべた老婦人と、女性にしては背高のメイド服を着た女性。
微笑ましいと言うよりどこかイチャイチャしている感が否めない二人。視界にはお互いしかいない雰囲気に周囲は生暖かく見守って(?)いる。
「・・・眩しい」
「可愛い~」
「あれってなんだっけ?あれよあれ。木彫りの鳥の浮かぶ奴」
「て言うか、あれはもう親鳥の後を追う雛ですよね」
「隊長がお風呂で浮かべてるアヒルの木彫り、雛がくっついていく奴」
「「ああ、あれ」」
「「「アヒル隊長だ」」」
数刻後、昼夜勤の交代申し送りの場。
先程のとろけ具合が別人のようにキリッとした姿があった。
「シュドウ、リネン室に配達されたリネンに数枚仕掛けた物があった。外注された夏物の枕カバーだ。確認後報告を」
「はい」
「ジェニアとユリア。
庭園のバラの生け垣に不審な痕跡あり。庭園警備の当直者と共に調査しろ。一部の棘に布様の遺留物と人毛も確認している。露にさらされている事から昨夜未明から早朝の時間帯。
夜勤者と日勤者との申し送り時の可能性もあるが、庭園の見回り担当者からの報告が上がっていない。確認と報告を」
「「はい」」
「皇宮各部署からの報告と後は苦情だな。報告は各班長で精査し結果を上げてくれ、苦情は交代者控え室に張り出しておく。班員に周知させ改善させろ」
「「「はい」」」
「以上!解散。・・・私はアヒルの雛ではない」
バタン
「ふっ・・くっくっくっ」
「やはり聞こえていたか」
「半ゲート(約50M)は離れていたはずだけどお?」
「耳が赤くなっていたからな」
「「どんだけえ(あんたの視力が引くわ)・・・・」」
Episode:それって・・・まずい?
ひゅうん・・カッ!
「右、掌分」
ゅううん・・カカッ!
「リンダ二本同時はずるいよ!一本掠った!もう一本は反対側指一本分」
「中ってるじゃん、良くない?通算5本でリンダの勝ちって事で」
弓を引いた余韻のまま振り返り言う射手に矢の行く末を確認していた少女は首を振る。
「落とすどころか揺れもしてないじゃん。駄目だよ。はい、交代!リリアの番だよ」
ガサガサと枝を移動し下りてくる相手に、射手のこれも少女は頬を膨らます。
よく見れば葉が生い茂る不安定な枝の上での弓だった。素足で枝に立ち、狭い故に縮こまった体位で弓を射ていたのだ。
その上的はと言えば遙か遠く城壁越しに見えるマトバの樹、その大樹の茂りにポツンポツンと見える黄色い実。スモモに似た実はこの時期が旬で熟せば濃厚で甘く、未熟ならば百才は歳を取るかと思うほど酸っぱい。
少女達は賭けながら順に矢を射合っていた。
「行くわよ」
交代したリリアの声に渋渋従うリンダの視力も桁が違う。6.0はあるのではないか。
ひゅううん・・ガッ!
「中った!もう!負けたあ」
枝の上で地団駄を踏みかねない様子で叫ぶのへ、ふふんと自慢げに腕を組む。と、そのままの姿勢で下へと落ちる。
3メートル以上はある高さを腕を組んだ姿勢のまま平然と降り立つと、悔しがるリンダを促す。
「拾いに行くわよ!あの色はかなり熟してるから甘いわよ~」
「え?それって、まずいんですか?」
しれっと本気で聞いてくるリンダに女官長ははたと考える。考える。
「んんんん・・・まずいとかじゃないけれど、所詮命汚いあほボンだし?傷一つ無かったし?
一応あれでもこの国の最強権力者ですからね。対外的とか体裁とか・・そういうのがまずいのよ。多分」
「多分じゃ無い!絶対にだ。俺皇帝よ?君たちの上司になるからね?そこ気にしてお願いだから。
それに人に向けて矢を射るな!けが人が出たらどうするんだ。洒落にならんぞ」
「ちゃんと人が居ないか確かめてから射たよ。むしろなんで居たのさ」
「ずっと居た!」
「ププッ存在感が薄いから」
「聞こえているぞ女官長」
誰の話からと悩みましたが・・・どうでしたか?
読んでいただき感謝感激!