続くのじゃな、馬車での会話
メガロも王女付きの専属従者達がクセが強いことは既に分かっているので、失礼な態度はスルーし、主従の話には区切りがついたのようなので話題を変える。
「コヒィーリア王女、あの、この後のご予定は?もし宜しければ私と」
「スモウを見に来た分、仕事が溜まってるの。悪いわね」
「あ、そう、ですね、はい」
メガロのお誘いはあっさり却下された…と思いきや、
「…ヤズミも働くことになるし、近いうちにちゃんこ鍋屋へ食事に行こうと思っているの。メガロも一緒にどうかしら?」
「宜しいのですか!?もちろんご一緒させて頂きます!」
成長しようとする者には飴をあげることも忘れないコヒィーリア。
先ほど言ったようにメガロはヨコヅナと関わるようになってから変わった。
以前より体が引き締まり、それでいて体幹は良くなっている。
また精神面でも無駄に高かった自尊心がなくなり、何事にも真面目に取り組んでいると聞く。
(ヨコヅナに決闘で負けて、自身を見つめ直すことが出来たのでしょうね……そしてラビスは)
今日コヒィーリアが訓練場に来た理由は、スモウの鍛錬を見に来たのと、実はもう一つ、ラビスの様子を見に来ていたのだ。
「ヤズミ…」
「あ!、は、はい」
ショックのあまり意識が薄れていたヤズミは、コヒィーリアに呼ばれて意識が戻る。
「今日、久しぶりにラビスに会ってどう思ったかしら?」
「ラビス、ですか?……正直に申し上げれ、相変わらず性根が腐っ、ごほっ、意地の悪い奴だなと…」
言い直した意味があるのかと思えるほど酷い言い様ではあるが、ヤズミに対しての言動だけを見れば否定出来ない。
「私には丸くなったように思えたのだけれどもね」
「……?、太ったようには見えませんでしたが…」
「外見ではなく内面の話よ」
「内面が丸くなった…???…それだとラビスの性格が、穏やかになった、優しくなった、という意味になってしまいますが」
「だからそう言っているのよ」
「???????????」
コヒィーリアの言っている事が理解できず頭の中が?で埋まるヤズミ。
「混乱しすぎでしょ…以前のラビスなら助言なんてしてないと思うのよ」
ラビスの基本方針は自分に利があるかどうか、それと楽しめるかどうか。こういう思考はコヒィーリアに似ている言える。
その方針からすれば、助言をする必要性は皆無だ。ヨコヅナが勝てば無償での労働力を得れて、かつ楽しむことが出来るのだから。
「…あれは助言などでなく、賭けに乗らせる為の誘導だったのではないかと私は思うのですが」
「……そういう考え方も出来るわね」
「姫様は先ほどラビスも成長していると仰っておりましたが、それはちゃんこ鍋屋と清髪剤の事業が好評だからでしょうか?」
そうであるなら下働きなどでなく、何としても経営に携わらなくてはと思うヤズミ。
「確かにプラス要素ではあるわ……ただ、気なることがあるのよね」
コヒィーリアがラビスの様子を見に来た理由。
「ラビスの報告書に…今だに書かれて無いよ」
「…何がでしょうか?」
「いつヨコの補佐を辞めて私の専属に戻ってくるのか…正確には戻りたいという旨の打診がね」
元々ラビスは自身の評価を上げる為に、ヨコヅナの補佐を務めている。
そして清髪剤、ちゃんこ鍋屋、共に今の時点では大成功であり、高評価に値する。
補佐の仕事の見切りをつけるタイミングとしては絶好と言えるのだ。
しかし定期的に送らてくる報告書にはそのような打診はなく、今日コヒィーリアが訓練場にいる間、ラビスは隣にいたが、その辺の話を振ってくる事はなかった。
「…事業を立ち上げたばかりで、安定してないからでは?」
「私やヘルシングの名の宣伝の効果は、当然日が経つ事に薄れ、これからはどうしても売上は下がっていくわ。それに安定させるだけなら、別の人間でも出来るのよ」
「まさか!私を後釜にして、自分が姫様の側近に成り代わろうという腹積もりなのでは!?」
「だったら賭けの内容を仕事の交代にするはずよ……そして以前のラビスならそうしてと思うのよね」
「……確かに。ラビスの行動としては不自然に思えますね」
そんなラビスの意図が分からなず、首を傾げる二人に、
「単にヨコヅナと一緒にいたいからでは?」
メガロが思いもよらない観点からの意見を出す。




