料理にはうるさいからの
「ほへはうはいの!ひははへにはひあひひゃ」
「何を言っているのかは分からないが、何が言いたいのかは分かる。今日のちゃんこ鍋も美味しいぞヨコヅナ、前とは違う味だな」
「今回は魚介を主に使ってるだよ」
ヨコヅナがやっていることの三つ目は料理だ。
これは手伝いというよりも、作りたい時に作っているだけだが、そもそもはヨコヅナのちゃんこ鍋を食べたいというリクエストがあったからだ。
「王都は食材の種類が豊富だがら、色々試せて作ってても楽しいだよ」
「モグモグ、ゴクッ、うむ、どんどん作って良いぞ、何心配せずとも余らすようなことはせぬ」
「カルが許可することじゃないだよ」
「ハハハっ、構わないさ。婆やも良いだろう」
「ええ、ヨコヅナ君の料理の腕はとても丁寧で上手ですから、安心して台所を任せられますよ」
この屋敷の台所を預かっているのは料理人兼メイドの婆や。
「料理に厳しい婆やがここまで言うのは珍しいのだぞ。私も昔料理を作ろうとしたことがあったが、すぐに追い出された」
「ホォホォ、そんなこともありましたね」
婆やは、爺や同様ハイネの生まれる前からヘルシング家に仕えてきた者だ。
「でも婆やさんの料理はほんと美味しいだよ」
「我も同感じゃ、そこらの店より婆やのが断然美味い」
王都にきてヨコヅナとカルレインは色々な料理店を食べ歩いたが、婆やの作る料理より美味しいと思える店はほとんどなかった。
「それならヨコヅナ君のちゃんこ鍋は王都にない美味しい料理ですよ」
「父上もヨコヅナが王都に住むこと自体には大賛成だった。きっとちゃんこ鍋をまた食べたいからだろうな」
病み上がりで初めて食べたまともな料理がちゃんこ鍋だったためか、ヒョードルにとってちゃんこ鍋は命を救ってくれた味のように思っていた。本当に命を救ったのは治療薬の激苦の味なのだが、それだけにヨコヅナのちゃんこが美味しく感じたのだろう。
またハイネもちゃんこ鍋を食べたいと希望したため、ヘルシング家の食卓に幾度か並んぶことがあったのだ。
「いっそ王都でちゃんこ鍋の料理店を出すのはどうですか?」
「……どうだべかな、家で数人に対して料理するのと、店で万人に対して料理するのとでは、全然違うと思うだよ」
「そうじゃの、ヨコヅナの手間暇を掛けて無駄なく料理する方法では、大きく利益を求めるのは難しいの、珍しさだけを売りに手間も減らし、利益を出すために大量の食材を無駄にできるのなら変わってくるが」
「そんな料理をするなら店なんて出さないだよ」
ヨコヅナも料理することについては中々のこだわりを持っていた。
味を落として客に売ったり、食材を大量に無駄にするなど論外である。
「開店日数を減らせば、無駄を最小限で味も落とさず料理をだせるじゃろうが、単価は上がってしまうの」
「…出来れば安くて多くの人に美味しい料理を出したいだな」
「では無理じゃな。薄利多売となればヨコ一人では手が回らぬ」
「そうだべか。まぁ、みんながみんなオラの料理を美味しいと思うかも分からないだべしな」
「我はそこは心配してないがの」
「私も売れると思うぞヨコヅナのちゃんこ鍋」
「店は無理でも屋台で出してみるのは面白いかもしれぬの」
屋台であれば、やりたい時だけで経費も少なく済む。一度に大勢を相手にするわけでないため作り手がヨコヅナだけでも回るだろう。
「だったら丁度もうすぐ建国祭だ。そこでちゃんこ鍋の屋台を出してみるか?」
「う~ん……うまくいくか心配だべな。それにお金足りるだか?」
「金は出してやるから心配はしなくていい」
「それは駄目だべ。ただでさえ住まわせて貰ってるのに」
「勘違いするな。勝算があるから投資するだけさ、儲けが出れば返してもらうし、損失分は働いて返してもらう」
「そうだべか……どうするべな~」
「ホォホォ、王都に来たのですから、何事も経験してみるべきですよ。当日は私も手伝わせて頂かせてもらいます」
「…そう言って貰えるならやってみますだ」
新しい挑戦に心配になりながらも、少しワクワクもするヨコヅナ。
「うむ、我も手伝うぞ」
「カルは料理しなくていいだよ」
「なんじゃと!!」
「では私が手伝おう」
「お嬢様…ですが」
「子供の頃は遊び半分だったため、台所から追い出されたが今なら大丈夫さ」
「だったら屋台用に試作するとき手伝ってみて貰うだよ」
「ああ、任せろ」
その後ヨコヅナからも台所を追い出されるハイネの姿があった。




