ご馳走か、楽しみじゃの
ストックがきれてしまったため、更新が遅くなりました。
「医者が個人情報を話すわけじゃの」
本来医者が他の患者の個人情報を話すことはない。
だが国の軍部のトップ、元帥が命の危機となれば致し方ないだろう。
「オラひょっとして失礼な態度だったべかな」
「今さらじゃろ」
「治せなかったらどうするだか?」
治せなくてもヨコヅナ達が悪いわけではないが、国の一大事とまで言われているらしく不安になる。
「人はいつか死ぬ、早いか遅いかの違いじゃ」
「そんな理屈通じる状況じゃなさそうだべ」
元帥、ヒョードル・フォン・ヘルシングのいる寝室に案内されている途中だが、すれ違った人達は皆、暗い雰囲気を漂わしている。
「誰も我らに期待はしていないようじゃの」
ヨコヅナを見た者たちは皆、不審者でも見るかのような目をしている。
しかしそれも仕方ないだろう。
治療薬を作れる者を連れてきたと聞いて見てみれば、田舎者の大きい少年と小さい少女なのだから。
「こちらです」
カルレインと話している間に寝室に到着した。
執事が扉を開けてくれ、入ってみると中にはハイネと他の親族、あと掛かり付けの医者らしき人物がいた。
部屋の中も暗い雰囲気は変わらず、治療薬を作れる者が来たの知って期待の篭った目を一瞬向けたがヨコヅナ達を見てすぐに不安そうな顔になる。
そんな雰囲気の貴族ばかりの場でヨコヅナは何か言った方がいいのか迷っていると、
隣のカルレインが前に出る。
「我参上!!」
何故かポーズまで決めるカルレイン。
「「「「「「………………」」」」」」
「はぁ~カル、時の場を考えるだよ」
「…ハイネ、本当にこのお二人が?」
「はい、そうです母上。……よく来てくれたヨコヅナ、こっちだ」
「え、あ、ちょ」
出迎えてくれたハイネはヨコヅナの言葉も聞かず、腕を取って寝台へと連れて行く。
「父上だ。今は眠っている、日に日に起きていられる時間が短くなってきているんだ」
「……そうだべか」
他にも医者から細かい症状を言われるが正直ヨコヅナにはよくわからない。
部屋にいる全員が当然のように誤解しているが病状を見れるのはヨコヅナではなくカルレインなのである。
だがそれを正直に言うわけにも行かないため、
「申し訳ないだべが、詳しく容態を観たいから患者以外は部屋から退出してもらってもいいですだか」
見られないようにすることが良いと思ってそうお願いするが、
「そんなことができるわけないだろう!」
そう怒鳴ってきたのは部屋にいた一人でヨコヅナと同じぐらいの歳の少年だった。
「お前のような不審な者を」
「やめろ!フリード」
ハイネが少年の言葉を遮り、少し考えた後、
「……わかった、皆部屋を出よう」
「な!?ハイネ!」
「本当に大丈夫なの?」
他の者が驚く中、ハイネはヨコヅナの言う通り部屋を出ることを決める。
部屋に今の状態のヒョードルを会ったばかりの人間だけにするのは不安ではある。
しかし、
「今は信じるしか他に方法がないのです、母上」
「……そうね」
皆ヨコヅナを信用したわけではないが、ハイネに促されて渋々部屋から出ていく。
「どうかよろしく頼む」
そう言ってハイネも部屋から出ていった。
「全く信用されてないだべな」
「当然と言えば当然じゃの」
「じゃあなんでハイネ…様は信用してくれるだべかな?」
「さぁの?それより今大事なのは父親のほうじゃ」
「そうだったべ」
カルレインの診察が終わりヨコヅナは部屋の扉を開くとハイネが廊下の壁に寄りかかって立っていた。
「父上は容態は?、治るのか?」
どれだけの時間がかかるとかは言っていなかったのにヨコヅナが出てくるまでずっと待っているつもりだったのだろう。
「えーと観たところ、村長と同じ病気なので、オラが用意した薬は効果あると思いますだ」
「本当か!では治るのだな!!」
「ただ村長の時より病状が進んでいるので」
「な、治らないのか!?」
「最後まで聞いて欲しいですだ、治るかどうかは五分五分と言ったところだべ」
「五分五分……」
カルレインが観たところギリギリ治る段階だという事であった。
元帥だけあって体力もあるから大丈夫だろうとのことだが、絶対ではないという意味も込めて五分五分と説明することにしたのだ。
それでも、
「ありがとう」
目に涙を浮かべながら礼を言うハイネ。
高いとは言えないが、今まで死を待つしかないと思われていた状況だっただけにハイネにとっては五割でも十分希望が持てたのだ。
「……お礼はまだ早いだよ」
「分かっている…」
涙を拭いて気を取り直すハイネ。
「すまない。カッコ悪いところを見せた」
「別にいいだよ。……それでこれからのことですだが」
ヨコヅナがこの先のことについて相談する。
「回復するには時間が掛かるため、しばらくオラ達が通う必要があるだべが…」
「なにか問題でもあるのか?」
「泊まるところをどうするべかなと」
「そんなことか、当然こちらで宿を用意する。……いや、この屋敷に泊まってもらったほうが容態が変わったときにすぐに対応できるな」
ハイネはそう言ってヨコヅナ返事も聞かず使用人に客間の準備を指示する。
ヨコヅナ的には宿とってもらえる方が気が楽なのだが言い出せなかった。
「他に必要な物があったらなんでも言ってくれて構わないぞ」
「そうだべか……だったら早速で悪いんですだが…」
「ん…ああ!」
言い辛そうにするヨコヅナに、何を言いたいの察するハイネ。
「治療費、金の事かそれなら……」
「いえ、治療費とかはそっちで適用に決めてもらっていいですだ」
「え?こっちで?」
今回の治療費については今まで話はしていなかった。
コクマ病を治せるのであれば相応の謝礼を用意するつもりでいるし、今日の診察代としての金銭が欲しいというのであれば渡しても問題ないとハイネは考えているのだが、
今ヨコヅナが用意して欲しいのはお金ではなく…
「あ~と、お金ではなく……お腹が空いたから食事を容易していただけたら嬉しいですだ」
正確には「カルレインが」なのだが。
それを聞いたハイネは目を見開いてから、
「…ふふふ、そうだな、私もお腹が空いた。直ぐに用意させる、ヨコヅナは沢山食べそうだからご馳走を用意しよう」
笑顔で答えてくれる。
ハイネ自身素直に笑えたのは久しぶりのことだった。




