表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/168

わははっ、確かにの


 準決勝第二試合トーヤ対ダンバート。


 トーヤは本戦で最も小柄な選手だ、迷い込んだ子供と間違えるほどに。

 会場にいるほとんどの者がダンバートの勝利を信じて疑っていなかった。

 理由は体格差もあるが、これまでのトーヤが戦った試合の勝ち方にある。

 一回戦は闘技台際で相手の攻撃をかわし、足を掛けて場外に落として勝利。

 二回戦は相手が一回戦で怪我が負っており、そこを執拗に責めての勝利。

 つまり実力で準決勝まで勝ち上がったと思われていなかったのだ。

 すばしっこく、ずる賢いがそんなものはダンバートには通じない。

 誰もがそう思っていた、試合が始まるまでは。


 ズタボロになり床に倒れ伏すダンバートと無傷でそれを見下ろすトーヤ。


『そんな…』


 実況のステイシーも言葉がない。


『こういうことがあるから面白いのよね』


 予想外の状況を楽しむコフィーリア。

 今大会は波乱が多いがそれも極まれりといったところだ。

 優勝候補のダンバートが、無名で子供と見紛う程小柄な相手に圧倒されている。


「はぁ、はぁ、…くっ」


 痛みに息を乱しながら立ち上がるダンバート。


「……お前は、何者だ?」


 ダンバートがそう問いかけるが、首を少し傾けるトーヤ。


「…別に、ただの一般参加者」

「そんな訳があるか!」


 常に平常心が信条のダンバートがらしくもなく声を荒立てる。


「……逆に聞くけど、お前は何か特別なのか?」

「俺は………」

「別にどうでもいいけど、……まだ続ける?」

「当然だ!!」


 痛む体にムチを打ち構え、前に出るダンバート。

 無駄なく基本の型を具現したかのような鮮麗された突きや蹴り。

 それらを息のつく間もないほど連続で繰り出す。


「つまらない攻撃だな」


 逆に適当な動きで難なくかわすトーヤ、


『ダンバード選手の猛攻!しかしその攻撃はトーヤ選手に尽くかわされる!』

『動きは素人同然、相手の動きを読んでいるわけでもなさそうね』

『では何故?』

『……目が良い、唯それだけでしょうね』

『それだけですか?』

『もちろん回避するだけの速さを有しているけど』


 トーヤは速いが雑な拳を返す、それを腕で防御するダンバート。


「くっ!」


 突きの威力に後ろへ押される。

 小柄な体格からは想像できないほどの打撃の力。

 油断しないと心がけていてもトーヤの攻撃力を低く見ていたのが、ダンバートの劣勢の理由であった。

 しかし想像以上を想定内にしてしまえば対抗策は思いつく。

 少し距離ができた所でダンバートの体がぶれる。

 予備動作なく瞬時に移動する歩法、瞬歩。

 成功すれば相手の虚をつく攻撃へ繋げれるのだが。


「よっと」

「ぐっ!」


 トーヤは移動先を見切らり蹴りを合わせる。ボキっとダンバートの脇腹から嫌な音が聞こえた。

 だが蹴られたダンバートはトーヤの蹴りが引かれる前に足を掴む。


『ダンバート選手蹴り足を捕えた!』

『狙っていたようね』


 捕まえてしまえば回避能力は関係ない。

 ダンバートは足を掴んだまま上段突きを繰り出す。

 それを上体を後ろへ仰け反りかわしすトーヤ。

 突きはかわされたがダンバートはそのまま逃がさず押し倒しにいく。組み技に持ち込めば体格差で勝機があると考えていた。

 しかしトーヤは仰け反るのをやめず、後ろへ倒れていく。


「がはっ!?」


 ダンバートの頭が跳ね上がる。

 トーヤはまるでバク転をするように掴まれていない方の足で顎を蹴り上げたのだ。

 意識が飛びそうな痛みに足を放したたらを踏むダンバート、それでも立っているのはさすがと言えた。


 ダンバートはトーヤの動きを読みきれないでいた。

 本来相手の動きを読むのは経験や情報によって得た選択肢から予測するものだ。

 しかしトーヤの動きはその選択肢にないものなのだ。


「もうやめたら?」

「まだゃひゃ!!」


 蹴りで顎が砕けたためまともに喋れもしてない、だがその目の力は未だ衰えない。


「あっそ」


 トーヤの体がぶれる。


(瞬歩!?)


 驚きから背後を取られ無防備にトーヤの蹴りを腕に喰らってしまう。

 もはや限界を通り越して痛いかどうかもわからない。

 そでれも残っている方の腕で裏拳を放つダンバート

 ゴキっ!と骨の折れる音が響く。

 裏拳で腕が伸びきった所にトーヤが肘打ちを合わせたのだ。

 ありえない方向に腕が曲がっている。


「まだやる?」


 トーヤが再度問う。


 顎を砕かれ、両腕も使い物にならなくなった。


「かはっ」


 血が吐き出される。

 肋骨が折れ、内臓も痛めている。

 

『…もう止めてたほうが』


 見ている者が目を背けたくなるような状況。


『他人が決めて良いことでないわ』



 ダンバートは諦めない。

 デュランのように地位や名声が目的ではない。

 ヂャバラのように大切な人のためでもない。

 唯、自分の心にある信念のために。


「はあぁぁあっ!!」


 問への答えは気合と共に放たれた渾身の足刀蹴り。


「!!?」


 会場の全員が目を見開く。


 ダンバートの蹴り足にトーヤが乗っていたのだ。


 そのままダンバートの顔面を強烈に蹴り飛ばす。

 吹き飛ばされ転がるダンバート。

 会場が静まり返る中、審判が駆け寄る。そして両腕を頭上で交差させる。


『勝敗が決しました!勝ったのはトーヤ選手!優勝候補ダンバート選手を破っての決勝進出です!!』


 本来であれば賞賛と歓声の嵐となるところなのに、驚きのあまり観客も声が出ない。


『ここにきて最大の番狂わせね』

『ダンバート選手ひどい状態でしたが大丈夫でしょうか?』


 心配そうに担架で運ばれるダンバートを見るステイシー。


『大丈夫よ。殺す気で蹴ってはなさそうだったから』

『……トーヤ選手、瞬歩を使ったように見えたのですが』

『ええ、雑ではあったけれど確かに瞬歩だったわ』

『ケンシン流を習っていたのでしょうか』

『……違うでしょうね』


 それでは他の動きが素人なことに説明がつかない。


『おそらくダンバートが使うのを見て真似たのよ』

『そんなことが!?』

『普通は無理よ。でもトーヤには出来た』


 瞬歩はケンシン流の奥義、習得には血の滲むような鍛錬が必要になる。

 それを見様見真似でやってのけた。


『鬼才とでも言ったところかしら、決勝は面白い試合になりそうね』




「優勝候補とか言われてたけど、たいしたことなかったな」


 つまらなさそうに呟くトーヤ。


「まぁいいか。決勝の相手はもっと殴りがいがありそうだし」


 トーヤは通路で試合を見ていたヨコヅナの方へ視線を向ける。


 通路で試合を観戦していたヨコヅナは小柄な体格に見合わぬ攻撃の威力に見覚えがあった。

 カルレインの方を見る。


「あれってもしかして」

「うむ、体内魔力の扱いに長けておるようじゃの」


 以前カルレインが教えてくれた体内の魔力を打擊力に変えた攻撃。

 ヨコヅナもあれ以来意識して鍛錬しているが、成功した試しはない。


「ごくまれに習ったわけでもなく自然に出来る奴もおる」


 解説でコフィーリアがいった言葉通り、ヨコヅナの決勝の相手トーヤはまさに鬼才と呼称するにふさわしい者であった。


「よかったの。わざとじゃなくても負けれる相手との試合じゃぞ。わははっ」

「決勝じゃあ意味無いだよ…」


 勝っても負けても次が最後の試合なのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ