予定が空いてても行かぬがの
「それじゃ、清髪剤の方は私が責任をもって預かるわ」
「何一人占めしようとしてるのよアイリィ」
「一人占めなんてしないわよ、ちゃんと店の女の子たちと分けるわ」
「私も使うから、よこしなさいよ」
「オリアは弟のヨコちゃんからいくらでも貰えるでしょ」
「そんな厚かましいこと出来るわけないでしょ!」
清髪剤を巡って争うオリアとアイリィ。
そんな二人を他所に、
「ボーヤ、三日後に他のAランク選手の試合があるんだけど見に行かないかい?」
「三日後…だと無理だべな」
「本業の仕事で忙しいのかい?」
デルファは事前にヨコヅナが仕事に入れる日のスケジュール予定は聞いて、無理な日なのも知っているが、出来ることならAランク試合の雰囲気を味わっておいて欲しいと思って誘っている。
「オラ明後日から、しばらくちゃんこ鍋屋の厨房に立つ事になってるだよ」
「あれ、ヨコが店でちゃんこ作る時もあるの?」
アイリィとの奪い合いを止め、会話に入るオリア。
「そうだべ。オラのちゃんこが食べたいって言って予約してくれてるお客さんもいるから、予定は変えられないだ」
「それじゃ仕方ないね。オリアはどうする?一緒に行くかい」
「ううん、ヨコが行かないなら私も行かない」
オリアは裏格闘試合に行くのはヨコヅナが選手だからであって、そうでないなら寧ろ行きたくない場所なのである。
「……料理減ってきただな。ちゃんこ丼作ったらみんな食べるだか?」
ヨコヅナのその言葉に、みんなが声を合わせて、
「「「「「「食べる~!!」」」」」」
「はははっ、分かっただ。台所行ってくるだよ」
「本当に悪いね、ボーヤの昇格祝いなのに…」
忘れそうになるが今日の祝いはヨコヅナの昇格祝いである。
「構わないだよ。みんな美味しそうに食べてくれから、オラも嬉しいだよ」
「ふふ、さすがヨコさんね」
「……詳しいだな。アイリィも店に食べに来たことあるだか?」
「行ってないわ、私並ぶの嫌いだから」
「ははは、それじゃ来れないだな」
そう言って立ち上がり、台所へ向かおうとするヨコヅナに、
「ヨコ、手伝おうか?」
「オリア姉はお酒飲んでるから、座ってて良いだよ」
祝いの席なので当然をお酒も用意されているし、オリアもお酒が入っている。
「そんなに酔ってないわよ」
「酔っ払いはみんなそう言うだよ。