表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/100

シーン94:金貯めて、いつか絶対買ってやる

 陳列棚の上にはたくさんのパッケージが並べられている。

 その表紙はさまざまで、愛らしいキャラクターが元気にポーズを決めているものもあれば、少年がシリアスに佇んでいるものもある。どれも、自分を購買してもらおうと必死でアピールしているのだ。

「あった」

 霧崎は呟いた。手を伸ばしたその先には、太閤の一兵卒時代を思わせるイラストが描かれたパッケージがあった。

 霧崎はその箱を手に取ると、じっと表紙を眺め始めた。

「欲しかったのになあ……」

 慨嘆した。

「にいちゃん、なに見てんのー?」

「隼か。欲しいソフトは決まった?」

「ううん。まだ」

「じゃ、ぼくはこれ買ってきていいか?」

「ダメだよ。みんなが欲しいソフト買うって決めたんじゃんか」

「……ぼくの金なのに。美羽ちゃんと美久ちゃんは?」

「あっちにあるゲームやってる」

「店内体験用のか。店に来てまでわざわざやらなくてもいいのに」



 その日の午後も、霧崎の家のリビングで、美羽と美久と隼がゲームをしていた。

 部屋からリビングにやってきた霧崎が、彼らに言った。

「ちょっと出かけてくるけど、みんな留守番頼める?」

「にいちゃんどこ行くのー?」

「ん?ちょっとゲーム買いに」

「お、それいいなー。ちょーど、ここにあるゲームに飽きてきたとこだったんだ」美羽が言った。

「へえ、そう。でも、ぼくが欲しいゲームを買いに行くだけだから……」

「おにいちゃん、あたし、みんなで楽しめるゲームがいいなぁ」

「あれ?なんか文脈がおかしいな。ぼくの、ぼくによる、ぼくのためのゲーム購入なんだけど……」

「じゃあさー、みんなで行って、みんなで買うゲーム選ぼうよ」隼が提案した。

「賛成!異議なし」姉妹が言った。

 というわけで現在、霧崎たちはゲームショップに来ている。

 霧崎はもう一度名残惜しげにゲームの表紙を眺めると、静かに元の場所に戻した。

 いいさ。

 一緒にゲームする人がいるって素晴らしいよね。うん、素晴らしいさ。

 これは一人用のゲームなんだから、買わなくていいんだ。うん、いいんだ。

「……金貯めて、いつか絶対買ってやる」



 美久は陳列棚を気難しげに眺めていた。

 どうしよう。どれにしよう。どれもいいなぁ。

「美久ちゃん。どう?欲しいゲームは見つかった?」

「あ、おにいちゃん。うーん、これが欲しいんだけど……」

 美久は棚から一つ取り出して、霧崎に示した。

「……推理ゲームか。美久ちゃんほんとにミステリー好きだね」

「うぅん。ミステリー以外も好きなんだけど、今はハマッてるかな」

「でもこれはダメだな。一人用だし、あの二人は好きくないでしょ」

「そうなんだよね。ねぇおにいちゃん」

「買わないよ。一つ買うだけで精一杯なんだから」



 美羽はまだ店内体験用のゲームをしていた。

 その隣では、見知らぬ小学生くらいの男の子がコントローラを握っている。

「よーしあたしの勝ちだな」

 男の子は立ち去った。

「次、誰が相手だ?」

「ゲーセンじゃないんだから、知らない人と対戦するなよ。まあ子どもならいいけど」

「おっ、ハガネか。今んとこ、三人抜きだぜ」

「こういうのはずっとやってちゃダメだよ。ちゃんと他の人に譲らなきゃ。それはともかく、買うの決まった?」

「えーと、これ、結構面白いぜ?」

「これは新作で高いから無理。もっと古くて安いので」

「なんだよケチ」

「金がねーんだって」



 隼は怪訝そうな顔をしながら、ソフトを一つ一つ手に取り眺めていた。

「どうした隼」

「あっ、にいちゃん、これなに?」

「ああ、ファミコンのソフトだな。隼、ファミコン知らないのか……」

「知らないー。あ、けどこのゲームの名前は知ってる」

「RPGだな。このタイトルはまだ続いてるからなー」

「にいちゃんこれやったことある?」

「あるよ。今も家にあるはずだけど……あ、でもファミコン壊れてるからやれねーや」

「むーいいなぁ。にいちゃんこれ買って」

「買わないよ!そもそもソフトは持ってて、ファミコン本体が壊れてるんだって」

「じゃ、ファミコン買って」

「果てしなく今さらなので却下」



 喧喧諤諤の議論の末、買うソフトが決まった。

「みんな、異議はないね。じゃ、買ってくるよ」

「あ、でもさー、やっぱりにいちゃんはにいちゃんの欲しいゲーム買いなよ」

「は?」

「それは、あたしらが今度金出しあって買うからさー」

「……そういうことは先に言って欲しかった」

 霧崎はソフトを持って歩き出した。

「おにいちゃん、そっちはレジだよ。ソフト返すんならこっち」

「いいんだよ。ったく。そのかわり、ぼくもこれで遊ばさしてもらうんだからね。欲しかったゲームのことなんか忘れるくらい、遊ばさしてもらうんだからね。いいな!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ