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シーン92:監視役なら監視しろってんだ

 ドアを開けると見覚えのある少女がいた。

 ドアを閉める。

 うむ、まだ夢を見ているんだな。

 時計を見る。十時だ。

 霧崎にとって、『まだ』十時、というべき時間帯だ。

 もう一度ドアを開ける。

 やはり少女がいた。今度は妹の方だ。

 ドアを閉める。

 霧崎は考える。

 そもそも、さっきドアの向こうから声が聞こえてきた。

「にいちゃん起きてー」

 声の主は確かにそう言った。それはまぎれもなく男の子の声だった。どんどんとドアを叩く音にも聞き覚えがあった。

 ドアの向こうにいた人間は確かに弟だったはずだ。

 わからない。

 ま、どうでもいい。とにかく寝たい。まだ起きるのには早い。

 霧崎はふとんの中に

「入ってんじゃねーよ」ドアが開いて美羽の声が聞こえた。

「美羽ちゃん、勝手に人の部屋のドア開けないでよ」

「一度自分で開けたドアだろーが。なんで閉めんだよ」

「あたしを見たときも閉めたねぇ」

「美久ちゃんもか。なぜ来たの、とはあえて聞かない。とにかくぼくは寝る。さらば二人とも。おやすみ」

「おやすみじゃねー。さっさと起きて、やんぞ!」

「なにを?」

「これ」

 美羽は両手を差し出した。なにか持っているようだ。

「ノートっぽいもの。……夏休みの宿題か」

「そうだよ。だからハガネも早く」

「なぜぼくも?」

「どーせやってねーだろーと思って」

「まあそうだけど。一緒にやる必要ないよね」

「誰か道連れにしねーと、あたしができねーんだよ」

「そのために美久ちゃんがいるんじゃないの?」

「え?おにいちゃん、あたしがまだ宿題やってないと思う?」

「……秀才め。じゃ、なぜうちに来たの?」

「おにいちゃんと美羽ちゃんの家庭教師を」

「いらないよ!」美久は小学四年生だ。

「ちなみにさあ隼」

「なに?」隼は振り向いた。

「いつの間にぼくの部屋に入り込んでんだよ。そして本棚を物色してんだよ」

「この本棚の本、並びがむちゃくちゃだよ。もっとちゃんとセーリセートンしないと」

「本棚に収まってるだけでも評価しておくれ」

「じゃ、向こうのおっきい部屋で宿題やろっか」

「リビングな。てか隼、ちゃっかりマンガを抜き取ってやがるな」



 霧崎と美羽は机に向かっていた。カリカリ、と鉛筆を動かしている。

 その横で、美久と隼がゲームで遊んでいる。


 カリカリ

 鉛筆はなかなか進まない。それでも必死で空欄を埋めていく。

「わー、美久ちゃん強いなー」

「隼くんも腕上げたねぇ」


 カリカリ

 面積を求めろだと?こんなでこぼこした形の面積なんて、どうやって求めろってんだ。

「次はこっちのキャラ使ってみよっかなー」

「じゃ、あたしはこのキャラにしようっと」


 カリカリ

 数学なのに英語の文字がある。意味不明。ていうか、そもそもbとdって、どっちがビーでどっちがディーだっけ?

「そろそろこのゲームも飽きてきたなー」

「次はこっちやる?」


 カリカリ

 カリカリ

 嫌になってくる。投げ出したくなってくる。それでも逃げずに、集中して、鉛筆を動かす。

「よーし勝てそう」

「わぁ負けそう。っていうのは嘘で、はい、逆転」


 カリカリ

 カリカリ

 カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ

「ふわぁ。次はなんのゲームするー?」

「そうだなぁ。これでも」


 カリカ

「いいかげんにしろ!!!」霧崎と美羽は同時に叫んだ。

 美久と隼はびっくりして振り返った。


「いきなり大きな声出して、どうしたの?」

「二人してあたしらの横で遊んでんじゃねーよ!」

「えー。別に邪魔してないじゃんか」

「気が散るしむかつくよ。そもそも、二人はなんでいるのさ!」

「おにいちゃんと美羽ちゃんの監視役」

「監視役なら監視しろってんだ」

「だってさー。にいちゃんも美羽ちゃんもちゃんとやってるから、つまんないんだもん」

「つまんないってなんだよ。勉強してる人の隣で遊んじゃいけません。いい?さっさとゲームは止めて、別のことしてなさい」



 十分後。

 にらめっこしましょう、あっぷっぷ

「は、隼くんの顔、面白すぎるよあははははは、はは、ははは」

「み、美久ちゃんの顔だって、面白いよー、あははは、あはは、はは」

 美久と隼はお腹を抱えて転げ回っていた。


「なーハガネ。あの二人を黙らせる方法はねーのかな」

「美羽ちゃん。気にしちゃダメだ。気にしたらぼくたちの負けなんだ」


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