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シーン89:テキトーにだらだら過ごそう

PM0:13

 少女は、兄と弟といつものように三人で昼食を食べる。昼食の用意は、少女がすることもあるし、兄がしてくれることもある。今日は兄が弁当を買ってきてくれた。

 テレビを見ながら、三人は食卓を囲む。

「あ、響、ぼく昼から出かけるから」

「ええっ!兄さん、ついに引きこもり脱出するの?!」

「引きこもりじゃねーっつーの」

「にいちゃん、引きこもりだっしつするの?!」

「隼はまねしなくていい」

「どこ行くの?」少女は訊ねる。

「どこでもいいだろ?」

「デート?」

「なわきゃねーだろ。美久ちゃんが図書館連れてけってうるさいから、連れてくんだよ」

「幼女を連れ歩くわけだね」

「そういうこと言うのはやめよう」

「よーじょをつれあるくわけだね」

「隼はまねすんなって言ってんだろーが。そういうわけで、留守番よろしく」

「了解。ああけど、雨宮さんが晩飯食べにおいでってさ」

「そう。じゃ、そのまま行くかな」

「んじゃ向こうで合流だね。隼はわたしと一緒に行こうね」

「んー、ぼく、にいちゃんと行くよ」

「え?」

「ぼくもにいちゃんについてく。今日することないから、にいちゃんと遊ぼうと思ってたから」

「隼、わかってるのか。ぼくが行くのは図書館だぞ。図書館に行くんだぞ」

「わかってるよー。図書館くらい」

「ぜってぇ静かにできないよ。美久ちゃんのコントロールできるかもわからないのに、隼まで……」

「ぼく、ちゃんと静かにするよ!」

「わかった、信じてやろう。……なんて言っても、どうせ騒ぐんだろうな。美久ちゃんと一緒に騒ぐんだろうな」



PM1:26

 出かける兄と弟を見送ると、少女は家の中で一人になる。物音のない家。がらんとした家。

 少女は時間制限のある孤独と自由を感じる。

 さて、暇だ。今日はなにも予定がない。

 ま、テキトーにだらだら過ごそう。



PM4:08

 少女はスーパーに向かい、兄の同級生の女性と合流する。

「雨宮さん、こんにちは」

「や、響ちゃん。わざわざメールくれてありがとね。でも、買い物くらいあたし一人でするのに」

「いやいやいやいや。晩ご飯をご馳走になるのに、なにからなにまで雨宮さん任せなんてわたしのプライドが許しませんよ。買い物だけじゃなくて、今日はなんでも手伝いますからね」

「いや、今日はたいした料理作るわけでもないし……」

「なんでもいいんです!なにかやらせてください!」

「わあ、すごい勢いだ。なんでそこまで」

「暇だったとかじゃないですからね。ただ純粋に雨宮さんのお手伝いがしたいだけで、一人で家に残されてさびしかったとか暇だったとかじゃないですからね」

「……わかりやすいね。よし!じゃ、今日は響ちゃんに色々手伝ってもらおう」



PM6:24

「ふう。料理は全部終わったから、響ちゃんは休んでていいよ」

「雨宮さんはなにかするんですか?」

「ふっふっふ。それは夕食後のお楽しみなのじゃ」

「なぜ魔女言葉?!」

 台所を追い出されて、少女はリビングに向かう。自分の家ではないが、よく来ているので他人の家という気がしない。

「みんな仲良くトランプですか」

 リビングでは兄と弟、それにこの家の女の子たちがトランプに興じていた。

「おー、ヒビキもやるか?」

「やる」

 少女も加わり、あらためてカードが配られる。

「雨宮さんの手伝いしてたんだって?偉いな」

「まあね。晩ご飯ご馳走になってるんだから、なにか手伝わないとバチが当たるよ。兄さんも、なんかしなよ」

「ぼくは皿洗うんだよ」

「ああ、そうなんだ」

「あたしは新聞取ったりしてるよ」

「あたしも風呂そうじとかやってんぜ。家のこと、あねきにばっか、押し付けるわけにはいかねーからな」

「なるほど。雨宮家はちゃんと助け合ってるんだ」

「ま、あねきが一番働いてることにはかわりねーんだけど」

「そういや、兄さんと隼と美久ちゃんは、図書館行ったんだったよね。どうだった?」

「楽しかったよ!」子ども二人は元気に言う。

「ふふふ。はははははは。今でも目に見えるようだよ。図書館の中をせまいとばかりに走り回る二人の姿が!」

「うん。兄さん、お疲れさん」


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