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シーン85:プロはまずスライダーだ

 雨宮を残して、霧崎たちは入場した。

「客少ねーな。開館したてだから、まだ来てないだけか」

「よーし、じゃあなにして遊ぼっか?!」隼が言った。

「うーん、あたしは泳げないから、とりあえず浮き輪を……」

「プロはまずスライダーだ!!!」美羽が言い切った。

「ぷ、プロ……?あの、美羽ちゃん?」

「さ、さすが美羽ちゃんわかってらっしゃる!時間が経ってお客さんが増えてくる前に、滑っておこうという算段ですね!」

「……隼くんまでなにかおかしいよ」

「その通りだ!隼っ、成長したな。私は嬉しいぞ」

「ありがたき幸せ!」

「だが闘いはこれからだ。気を抜くな」

「はっ!」

「………なんだこれ」

「美久はまだまだ新米のようだな。だが大丈夫だ。私の元にいれば、いやでも成長するだろう。それまで死ぬなよ。隼、お前がしっかり守ってやるんだ!」

「はっ、かしこまりました。美久ちゃん、これから一緒に頑張ろう」

「………あ、いや、別にいいです」

「まずはスライダーだ。二人とも、監視員のにーちゃんたちに怒られないよう、決して走らず、しかし怒られないギリギリの早足でついて来るのだ」

「なぜそこまでする必要が?!」

「美久ちゃん、監視員のにいちゃんがメガホンを持ったら黄信号だからね。即座に通常の歩行に戻るんだよ」

「……む、難しいよ」

「よし、では出発!」

「はっ!」

「あ、ちょっと待ってよ!あたしも行く」



 更衣室から出てきた雨宮は、観覧席に一人座っていた霧崎を見つけて近寄っていった。

「よお霧崎待たせたな。みんなは?」

「ああ、雨宮さん」霧崎は雨宮の方を向いた。「あ」

「ん?なんだ?」

「………………」

「こっち見たまま固まってる?どうしたんだよ霧崎」

「………………」

「おーい、霧崎くーん、戻ってこーい」

「………………」

「おい、なんなんだよ。あたしどっかおかしい?」

「………………………………いや別に、なんでもない」霧崎は呟いた。

「隼と美羽ちゃんと美久ちゃんはスライダー滑ってくるってさ」

「なんだったんだ一体」

「その間に浮き輪の空気入れとけって言うんで、入れてるんだ。一個入れ終えて、残り二個」

「なるほど、がんばれ」

「手伝えっつーの」

「ちっ」



 美羽と美久と隼はスライダーの階段を昇っていた。

「よし、誰もいねーぞ。すぐに滑れる」一番に駆け上がった美羽は滑るのを待っている客がいないことを確認した。

「うゎあ高いところだね!」美羽の後から昇ってきたのは隼だった。頂上は鉄格子に囲まれているだけで、下が丸見えだった。「あ、あそこににいちゃんと美緒ねえちゃんがいる。あはは、ちっちゃいや」

「ひー、ふー、はー。ああ、やっと着いた」最後に昇り着いた美久は階段の最上段に腰を下ろした。

「美久ちゃんどうしたの!持久走ゴールしました頑張った賞ください、みたいな顔してるよ」

「高すぎるよここ。階段が長い。頑張った賞ください」

「美久も着いたな。順番どうする?一番に行きたいやついたら、じゃんけんで決めるけど」

「ぼくは何番でもいいよ」

「あたしは、ちょっと、休まないと」

「よし、あたしが一番だな。じゃ二人とも、下行って待ってるからな」

 美羽はスライダーのスタート台に座った。

 ようい。

 ドン。

「わぁ、早いなあ。あ、手を振ってる。おーい」

 隼はスライダーの途中で手を振ってきた美羽に手を振り返した。

「ゴールしたね。それじゃあぼくも行くけど、美久ちゃん大丈夫?」

「うん。隼くんが滑ってる間も休めば」

「しんどかったら、無理せず滑らないほうがいいよ」

「ダメ!ぜったい」美久はすごい勢いで頭を振った。

「滑らないなんて絶対ダメ。あたしは必ず、かならず滑るよ!!!」

「す、すごい執念だね。さっきはそんなに乗り気じゃなかったのに」

「あれは美羽ちゃんと隼くんのノリについて行けなかっただけで、スライダーは好きだよ。大好きだよ!」

「そ、そうなんだ」

「滑らないなんてダメ。どんなに疲れていようと、今日、三回は滑るよ。絶対」

「わ、わかったよ。わかったから落ち着こうよ」



 スライダーを終えて、子どもたちが帰ってきた。

「ハガネにあねき、ただいまっと」

「ただいまー。楽しかったよ」

「お帰り。美羽も隼くんも元気一杯だね」

「美羽ちゃん、早いよ。はー、はー。ただいまぁ」

「美久、お疲れさん」

「ほらみんな、浮き輪空気入ってるよ。受け取りな」

「なめんなハガネ!浮き輪なんてなくてもあたしは泳げるんだよ!」

「ごめんなさい。……ならなぜ空気を入れさせた」

「あとで使うんだよ」

「おにいちゃん、あたしは要るよ!ちょうだい!」

「なぜそんな強い剣幕で……」

「美久ちゃん泳げないんだもんねー」

「ああそっか」

「うう。おにいちゃんは泳げるの?」

「うん、まあ、一応」

「すごいなぁ。どうやって泳げるようになったの?」

「どうって……どうだったっけ」

 霧崎は腕を組んで空を仰いだ。

 昔年は天空にある。

 ああそうか。

「家族に教えてもらったんだよ。覚えの悪い生徒だったけどね」

「ふうん。でも泳げるんだったらすごいよ。あたしなんか全然」

「美久ちゃん、がんばってー」

「隼、泳げるんだっけ?」

「泳げるよ。5Mくらい」

「そっか。隼もがんばろうなー」

「うん!……なにを?」



「あねきから聞いたんだけどさー、ハガネ、なんか石化してたらしいじゃん。なんでだろうって、不思議がってたぞ」

「別に石化してねーよ。……ただ、水着だなあ、って思ってただけで」

「ほうほう、あねきにノーサツされてたわけですな」

「そんなんじゃねーっつーの。悩殺なんて言葉よく知ってるね」

「ん?……でも、あねき、あんなかっこだぜ?」

 雨宮の水着は、タンクトップ型にショートパンツ型だ。

「なんか、普段着と変わんなくね?」

「だからそんなんじゃねーっつーの」


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