表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/100

シーン72:なにをやろうってわけでもないんだけどな

 雨宮は図書館の受付をしながら考え事をしていた。

 夏休みだ。

 掃除洗濯料理エトセトラ。

 宿題など勉強。

 妹の世話弟の世話。

 その他。

 全部やってもおつりが来るくらいの時間がある。

 なにをしよう。

 なにをすべきだ。

 なにがしたい?

「あ、すいません。これ借りたいんですけど」気がついて目を上げると、本を手に持った男子生徒が立っていた。本を受け取って貸し出しの作業をする。渡すと生徒は行ってしまった。

 お腹がすいたな、と雨宮は思った。時計を見ると、もうすぐ十二時になろうとしていた。

 夏休みの学校の図書館は、昼までで終わる。受付の当番の者は、補習が終わってからすぐ図書館に行き、受付をする。補習が終わってから昼までなので、図書館が開いている時間はわずかしかない。

 そんなわけで、利用する生徒もわずかしかいない。さっきのように貸し出しをすることはまれなことだ。

 図書館の方を見てみる。利用している生徒はいないようだ。そろそろ閉めるか。

 そのとき、トントン、とドアをノックする音が聞こえた。

 誰だろう。先生か?

 ドアが開いた。開けた人物は、雨宮に向かって「やっ」と手を上げた。

「霧崎、なんか用か?」

「いや、なにも?」

「ん?なんだその本?」

「さっき借りたんだよ。ここでね」

「へえ?」

「つまり、雨宮さんが受け付けをしてくれたわけだ」

「…………なるほど」

「いや、まさか完全にスルーされるとは思わなかった。そこまでぼくの存在感は希薄だとは」

「や、それはその………、そういうわけでは」

「ないの?」

「……ある。うん、あるね。霧崎、気配消しすぎだよ。お前はスパイかなんかになるつもりかっつーの。うん、だから、あたしが悪いわけじゃない!」

「……そうかよ。ま、いいよそれで。謝ったら雨宮さんぽくないもんね」

「喧嘩売ってんの?」

「事実を述べたまでです。じゃ、帰りますわ」

「あ、あたしももう帰るから、ちょっと待ってろ。一緒に帰ろう」



 施錠をして、雨宮は霧崎と歩き出した。

「なあ霧崎。夏休みだな」

「うん雨宮さん。言われなくても夏休みだね」

「霧崎は夏休み、なにすんの?」

「補習」

「それは当たり前だ。じゃなくてさ、なんか、ないの?小説を書いてやろう、とかさあ」

「雨宮さん、なに言ってんの?」

「いや、夏休みって、時間があるじゃんか。だから」

「自由研究とか?」

「自由研究か。懐かしいな。あたし、郷土史とか調べたことあるよ」

「うわっ、えらっ。おれ、ちゃんとやったことないや、自由研究なんて」

「さすが。霧崎はちゃんと霧崎だな」

「どういう意味ですか。でも、高校生にもなって、自由研究はないよ」

「あたしもやらねーよ。ていうか、なにをやろうってわけでもないんだけどな」

「なんだそりゃ」

「ただ、なにかやろうかな、って思ったってだけの話。あたしは部活をするでも、習い事をしてるでもないんだからさ」

 そう、自分はなにもしてこなかった。家のことを少しでも手伝えるようにと、なるべく家にいたからだ。

 手伝いは嫌いではなかった。特に料理を習うのが好きだった。台所に椅子を持ってきてその上に立ち、隣には姉がいて――懐かしい話だな。

「やること、ねえ。そうだなあ、毎日走ったら?充実感は得られると思うよ」

「この暑い中?」

「暑い中走ってこそ意義があるんだよ。目指せマラソン大会出場」

「そーか。頑張れよ」

「ぼくの話じゃないよ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ