シーン67:そういうのが一番暑いんだよ
「暑い。なんでこんなに暑いんだ、響」
「兄さんが、昼飯カップラーメンにしたからだよ」
「くっ。カップヤキソバにしとくべきだったか」
霧崎は、家で妹たちと昼食を食べていた。今日は終業式なので、学校は昼までで終わった。姉も兄も家にいないため、妹たちの昼食も霧崎が用意した。カップラーメンだが。
「ねえちゃん、ぼくもうちわあおいでー」隼がうちわを使っている響に頼んだ。
「自分でやんな。ほら、うちわ貸して上げるから」
「隼、ぼくをそんな目で見ないでくれ。あおがないからな。絶対にあおがないからな」
「ちぇっ。にいちゃん、ひどいなー」
「ひ、ひどくないもん。ぼくだって自分をあおぐだけで精一杯なんだもん」
「兄さん、ひどいなー」
「響までなに言ってんだ。ぼくは悪くない。悪くない、よな?」
「しかし暑いよね。外は雨だっていうのに」響は窓から外を見た。「いや、止んでる」
「そういうのが一番暑いんだよ。気温は下がらない、湿気は高くなる」
「降るか降らないかはっきりしてくれたらいいのにね。傘がいるのかいらないのかわかんないよ」
「ん?隼、どっか行くの?」
「うん、ねえちゃん。野球しに行く!」
「野球って、朝から雨降ってたから、できないと思うけどな……。それとも、室内野球場。いや、バッティングセンターとか………?」
「兄さん、ぶつぶつ言ってないで、訊いたら?」
「それもそうだ。ねえ、はやぶ――」
「ねえ、隼。雨降ってたのに、野球しに行くの?また降ってくるかも知れないよ」
「取られた……。言おうとしたのに取られた………」
「うーんっとね、そうそう、雨降ってるから野球は止めよーって話になったんだった。いけないいけない」
「ま、こんなくそ暑い日は家でじっとしてるのが一番だな」
「兄さんは年中家でじっとしてるけどね」
「………じっとなんてしてないもん。本読んだりゲームしたりしてるんだもん」
「そう、ゲーム!そうだ、にいちゃんもみんなと一緒にゲームやろーよ」
「隼、ゲームばっかりして運動しないと、ろくな大人にならないぞ」
「にいちゃんに言われたくないよ!」
「ぐはっ!は、隼にまでつっこまれた……」
「隼、ゲームばっかりして運動しないと、鋼兄さんみたいな大人になるよ」
「ふええ。気をつけないと」
「ううっ。二人ともひどい。いじけてやる」
「そこでいじけてる兄さんはほっといて、ねえ隼。さっき、にいちゃんもみんなと一緒にゲームやろー、って言ったよね。どういうこと?」
「このあとみんなでゲームやるから、にいちゃんも一緒にどうかなーって」
「みんなが誰かって訊いてんだよ」
「友達。えーと、だからね、野球やるのは無しになったから、うちでゲームやろーよって話になって」
「お友達が来るんだね。ったく、そういうことは早く言ってもらわないと。掃除しなきゃいけないんだから。それに、お菓子とかジュースとか出さなきゃ……」
「おれは自分の部屋に引きこもってればいいんだな?」
「兄さんもなんか手伝え!」
「……知らない子に会うとか、緊張するし」
「……小学生だよ?」
「関係ないね」
「なんで威張ってんだよ!ねえ隼、友達何人来るの?」
「二人だよ。最近友達になった、兄弟なんだ。あれ?女の子だから、姉妹っていうのかな?」
「へえ、女の子が来るんだ。隼、兄さんに似なくてよかったね」
「うん!」
「響、どういう意味だよ。そして隼、力強く返事するなよ」
「ん?兄さん、モテないでしょ?」
「まーな」
「ああ、けど、雨宮さんがいるからいいのか。もう、兄さん、オアツイねえ」
「雨宮さんは友達だって、何度も言ってるだろーが」
「ああほんと、甥っ子の顔が見れる日が楽しみだわぁ」
「無視すんな!」




