シーン62:二人より三人のほうが楽しいんだけど
霧崎は半泣きで隼を探していた。いなくなったことがわかってからすぐ、響に連絡して、響にも手伝ってもらっていた。
「ああ、幼い弟を見失うなんて。おれはどうしたらいいんだ」
「死ねばいいんじゃない?」
「………」
「本気の顔しないでよ。とにかく、今は探すことに専念しようよ」
「美羽さー、男子と仲良くなりたいとか言ってたよな。じゃ、隼と仲良くなればいいんじゃね?」美羽が言った。
「いいよー。美久ちゃん、仲良くしよーよ」
「んー、けどあたし、隼くんとは仲良くできそうにないかなあ」
「うわあ、美久ちゃんひどいなあ」
「だって、隼くん、本読まないでしょ?」
「本読まないと仲良くできないの?でもぼく、マンガは読むよ」
「あたしマンガは読まないからなあ」
「マンガ面白いよ!すっごく、楽しいよ。あと、えーと、えーと、すっごく、面白いし、楽しいよ」
「ゴイが少ないね。成績いいくせに」美久はため息をついた。
「とにかく、面白くて楽しいんだよ。じゃ、今度面白いの貸してあげるよ。読んでみて」
「貸してくれるんなら借りようかな……」
「……仲良くなりそーなんだかどーなんだか」美羽はやれやれと首を振った。
「なー隼、家の中にいてもつまんねえから、遊びにいこーぜ」
「いーよ。なにする?鬼ごっこ?」
「んなもんしねーよ、といいたいとこだけど、この辺じゃボール使えねーからな。とりあえず公園行って考えよーぜ」
「けど、美羽ちゃん、怪我したんじゃなかったの?」隼は美羽の怪我を見た。美羽の膝をガーゼが覆っていた。
「こんくらいなんともねーや。むしろ、動かないと体が腐っちまいそうだよ」
「うわあ、美羽ちゃん、やっぱり強いなぁ」
「感心してないで、美久も行くぞ!」
「ええっ?!……美羽ちゃん、あたしはいいよ」
「なーに言ってんだよ。美久だってたまには体動かさなきゃダメだよ。だから行くぞ!」
「い、いいよぉ。隼くん、助けて!」
「うーん、二人より三人の方が楽しいんだけど」
「うう。隼くんまで……」
「けど、嫌がる子と無理やり遊んでもつまらないな。だから、美久ちゃんがほんとに嫌なんなら、別にいいよ」
「ほんと?!隼くん、ありがとう!」
「チッ。隼、簡単に折れやがって」
「だってさー……。そりゃ、ぼくだって、美久ちゃんと遊びたいけどさ……」
「うわぁ、隼くん、すごく残念そう………。わかった、いいよ。じゃ、今日だけあたしも行くよ」
「ほんと!」隼は喜悦を浮かべた。
「ナイスだ隼。じゃーあねき、あたしら三人で、ちょっと遊んでくるから」
「ん。それはいいけどさ。隼くん」雨宮は隼のほうを向いた。「隼くんのお兄さんは、今なにをしているのかな?」
「にいちゃん?にいちゃんは今、高校生だよ」
「そういうボケはいらないんだけどな」
「うーんとね、にいちゃんはぼくと一緒に公園に――はっ。にいちゃん公園に置きっぱなしだ!」
「置きっぱなしか……。まあいいや、置きっぱなしにされたお兄さんは、どう思うかな」
「さびしがるね。にいちゃん、泣いてるかも」
「だったら、すぐ迎えに行ってあげないと!」
「うん!行って来る」隼は立ち上がると、一目散にドアから出て行った。
美久と美羽は取り残されてしまった。
「あたしら、ほって行かれちゃったなあ」
「……隼くん、楊くんタイプだね」
「ま、また会うこともあるでしょうさ。じゃ、美羽に美久、お姉ちゃんと遊びに行こうか!」
「っとその前に」連絡くらいしといてやるか、と雨宮は携帯を開いた。
件名:隼くんに置きっぱなしにされたお兄さんへ
本文:隼くんが拾いに行ってくれたから、公園でおとなしくしてるように
返信が来た。
件名:Re. 隼くんに置きっぱなしにされたお兄さんへ
本文:でうそてあまみやさんがはやふさのことすつつるの、ていうかへろうつてなぬ
うん、さすがにテンパってやがるな。しかし、意味がわからん。……『どうして雨宮さんが隼のこと知ってるの?というか拾うってなに?』かな、原文は。




