シーン56:因果応報ってやつだな
「じゃ、恋の話略してコイバナでもしましょう」涼み終えてクーラーを消し、楊が部屋へ帰っていったあと、響が言い出した。
「なに言ってんだ響」
「兄さんはヘタレだからともかく、雨宮さんの本音を聞いておこうと思って」
「いいじゃん、あたしも聞きたいしな」美羽が賛同した。
「いえいえ、ここはオススメミステリー小説の話でも」
「あ、あたしはそれがいいな」美久は霧崎に賛成した。
「2対1か……、じゃ多数決でコイバナで」
「いや、2対2だろ?決選投票で雨宮さんの意向を訊くところじゃないの?」
「えっ?兄さんに投票権なんてあると思うの?!」
「響………、絶対変わったよ。ああ、優しかった頃の響が懐かしいなあ……」
響は兄の悲嘆を無視した。「では雨宮さん、単刀直入に訊きます。今、好きな人いますか?」
「ん?好きな人?」雨宮にこの場にいる全員の注目が集まった。
「いるよ」
「おお、いるんですか?これは名前を訊きたいところですね。兄さんも気になるでしょ?」
「ならねえよ」
「どーせ自分だってか?」美羽が言った。
「ちげぇ」
「とにかく、雨宮さん、その人の名前を!」
響が横目で霧崎を窺うと、明らかに霧崎はそわそわしていた。やっぱり兄さん、気になるんだな。
「美羽に美久」雨宮は答えた。
「へっ?!」
「いや、だから、あたしは美羽と美久が好きだよ」
「やだなあもう雨宮さんボケちゃって。異性ですよ、い・せ・い」
「楊かな」
「………」響と美羽はため息をついた。
「おねえちゃん、あたしも好きだよ」美久は喜んでいた。
「あねき、そういうことじゃねーよ。あたしも嬉しいけどさ」
「あ、雨宮さん、他にはいないんですか!」
「もういいでしょ響ちゃん。だから逆に質問。響ちゃんは好きな人いるの?」
「……さすが雨宮さん、卑怯だな」
「なんだよ霧崎。あんたも興味あるでしょ?」
「さあね」といいつつ霧崎も響の方を見た。
「いいな、あたしも聞きたい」美羽も期待に満ちた表情で響きを見た。
「みんな、どうしたの?」美久は不思議そうにみんなを眺めた。
「美久ちゃん、とりあえずここは響の方を見とく場面なんだよ」
「ふうん。じゃ、そうしよ」美久もニコニコと響を見た。
「ああ、視線が。なにかを待ち望むみんなの視線が痛い!」
「因果応報ってやつだな。おれは別に興味ないけど、断じてないけど、とりあえず言っちゃいなさい」
「いやそんな、いませんよ好きな人なんて。バスケ命だったんだからね、あたし」
「ええー響ちゃんそれは嘘だよ。気になってる人くらい、いるでしょう?」
「い、い、い、いません!!」
「赤くなってるね」「目が泳いでるな」雨宮と霧崎が響の顔を観察した。
「結論、ヒビキは好きな人がいる!」美羽が断言した。
「以上が我々の推理だけど、響さん、なにか言うことがありますか?」美久が言った。
「す、す、好きな人なんて、い、いないもん。バスケ部の男子に好きな人がいたり、しないもん。その子はちゃんと好きな女の子がいて、その子と付き合ってるんだもん」
「あ、みなさん、響はちょっとテンパってるみたいなんで、聞かなかったことにしてあげてください。兄として頼みます」
霧崎が頭を下げると、みんなうなずいた。
「練習してる姿がちょっといいなと思っただけだもん。好きなんかじゃないもん」
「うんうん。わかったから、みんなでアイスでも食べような、響」
「好きな人、か」
「どうしたの?雨宮さん。はい、アイス」
「ありがと」雨宮はアイスを受け取った。霧崎は妹たちにもアイスを配りに行った。「ま、別にどうなりたい、ってことはないからなあ……」




