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シーン53:名探偵がやりたいんじゃないのかな

「で、実際のとこ、どうなのさ、兄さん」

「ハガネの考えをここらではっきりさせとこうぜ」

「え?雨宮家に来るなりいきなりなに?なんの詰問?」

 霧崎が雨宮家のリビングに顔を見せると、そこにはソファに陣取った響と美羽の姿があった。

「つまり、兄さんの恋愛観をですね」

「響、熱があるなら帰りなさい」

「いや、真面目な話を」

「真面目な話ならニヤニヤするなよ」響も美羽もさっきからだらしないにやけ面をしている。正直、気持ち悪い。

「ねえおにいちゃん」座って本を読んでいた美久が顔を上げた。「なんでこの語り手の人、お馬鹿さんなの。誰が犯人さんなのかなんて、簡単にわかるのに」美久が読んでいるのはミステリーらしい。

「ワトソン役ってのはそういう宿命だからだよ。そして、犯人が簡単にわかるのは、美久ちゃんが頭いいからだよ」最後までおれはさっぱり犯人わからないからな。

「ハガネ、真面目に聞けよ!」

「おおっ。美羽ちゃんがいつになく真面目だ。そしてちょっと怒っている」

「好きなんなら好きってはっきり言えよこの根暗!」

「雨宮さんは友達だって言ってんだろうがこの小学生!」

「兄さん、真面目にキレない!」

「キレてないですよ。おれをキレさせたらたいしたもんですけど、キレてないですよ」

「けど…」響と美羽は顔を見合わせてニヤニヤした。「雨宮さんって一言も言ってないのにねー」

「なんで急にあねきの話なんだろうなー」

「こいつら……。早く帰って来い雨宮さん」

雨宮の名前が出て、「ああー」「やっぱりー」などと響と美羽は言い合っている。

「なんか、騒がしいね」リビングに楊がやってきた。

「おお、救世主よ。こいつらなんとかしてくれ」

 救世主は台所の方に行くと、冷蔵庫を開け、ジュースを取り出し、ドアを開け部屋に戻――

「ああ、救世主」

「楊に救いを求めるのが無理ありすぎだろ」

「大丈夫。ぼくは実はなんにも期待してなかった。楊くんだもん。あの楊くんだもん」

「ふっふっふ。どうするハガネ。いいかげん、あねきとの関係を認めたらどうなんだ」

「ええ認めますとも。雨宮さんは友達ですって」

「ふん、そんな言い逃れ――あれ、ヒビキ。どうしたんだボケっとして」

 響はリビングのドアを見つめていた。

「おーい響。うーん、これはなにかショックなことでもあったのかな?」

「けど、さっきまでは元気だったんだぜ?あの短いあいだに、なんかあったか?」

「皆さん、こんな簡単なことがわからないのですかな」耳慣れない話し方をする声の方を見てみると、口辺に微笑を蓄えた美久の姿があった。

「美久ちゃん?」

「つまりこれは簡単に推理できることなんだ。響さんはドアを見つめている。さっき、ドアを開けた人がいませんでしたかね?」

「ドア?楊くんが来てすぐ出て行ったくらいで――」

「そう!楊くんです。今回の事件のキーワードは、まさしく楊くんなのです」

「なあハガネー。美久どうしちゃったんだ?」

「たぶん名探偵がやりたいんじゃないのかな」

「一見して共通点がないように思える響さんと楊くん。しかし、共通点は存在するのです!」

「ええっ!」

「ハガネ、なんだかわざとらしいな」

「仕方ないでしょ、演技経験なんてないんだから」

「そう、二人は共に中学二年生なのです」

「なっ!そうか、確かにそうだ。けど、だからといってなんなんだ?」

「まだわからないのかい、おにいちゃん。同じ中学二年生だということは、二人は顔見知りの可能性がある、そして響さんが楊くんの出て行った方をずっと見ているということは――」

「はっ。そういうことか」

「そう、響さんは楊くんに少なからず興味を持っているということなのです。以上が、私の考えた推理です。ご理解いただけましたでしょうか」

「なんて完璧な推理なんだ!ほら、美羽ちゃんも言って」

「みくはすごいなあ」

「さて、では推理が合っているのかどうかを、犯人の方に教えていただきましょうか」

みなの注目が響に集まった。観念した様子で(?)響が重い口を開いた。「今の人、誰?」

「はあ?」

「泥棒じゃないの?あんな人、雨宮家にいなかったよね」

「………楊くん、響に認識されていなかったのか。響は何度かここに来てるのに」

「ま、楊だからな」




「うーんはずれてたかあ。名探偵って、難しいね」

「まあ、あれは小説の中だけの話だからね」


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