シーン52:きょうだい仲良くか
件名:今日雨宮さん家で鍋をやることになった件について
本文:今日雨宮さん家で鍋をやることになりました
「なんてメールを送ってくるんだ、兄さん。件名の方が長いし」響は下校中霧崎からのメールを受け取った。さっそく返信を書くことにする。
件名:Re.今日雨宮さん家で鍋をやることになった件について
本文:わたしはつっこみ役じゃない!
うん、これでいいだろう。送信。
しかし鍋か。雨宮さんが言い出したことだろうけど、恐ろしい話だ。今何月だと思っているのだろう。それとも雨宮家では普通なのか?
「あ、響さんだ」かわいらしい声が聞こえて振り返ってみると、そこには美久の姿があった。
「おうヒビキ。うちに来る途中か?」隣には美羽の姿もあった。
「美久ちゃんに美羽ちゃん。いや、いったん自宅に帰るよ。二人も下校中?にしてはちょっと時刻が遅いか」
「あたしは図書館に寄ってたの。新しい本借りたんだ!」美久は元気よく答えた。
「………あたしは、宿題忘れちまってさ。居残りだよ」美羽は歯切れ悪く答えた。
「で、二人一緒になったわけだ」
「校門を出るときばったり会ったの」
「ふうん。美久ちゃんと美羽ちゃんは、姉妹仲いいんだね」
「うん!」
「まーな」
きょうだい仲良くか、と響は思った。素晴しいことだな。うらやましいと言うべきかも知れない。うちのきょうだいは、お世辞にも仲いいとはいえないものな。
「響さんも、おにいちゃんと仲いいよね」
「ええっ?!」わたしと兄さんが?そんなことないと思うけどな。「…てか、美久ちゃん、兄さんのことおにいちゃんと呼ぶんだね」
「…やっぱり、響さんは嫌かな。響さんのほんとのおにいちゃんだもんね」
「いや、別にいいよ。ただ、そんなに慕われてるんだな、と思っただけで」
「おかしいことはないだろ?」美羽が口を挟んだ。「ハガネはさー、あねきのだんなになる男だぜ」
「あ、やっぱり二人は付き合ってんだ」
「しらねーけど。フツーはそう思うよな」
「ねー。わたしもそうだと思ってんだよね」
「ねえ響さん。響さんも、今日夕ご飯食べにくるんだよね」美久が訊いた。
「そうだよ。兄さんも連れてくよ」
「そりゃいいな。じゃあ六人で夕飯食べることになるのか。うちの食卓も、ずいぶん賑わってきたなー」美羽がつぶやいた。
「……ねえ二人とも、このメール見て」響は霧崎から来たメールを見せた。「鍋らしいんだけど、こんな季節に鍋なんて、するの?」
「したことないよ?」
「暑いだろ。今だって暑いんだし」
「だよねえ」
「あ、響さんだめだよ。嫌でもちゃんとうちに来てね」
「大丈夫だよ。ちゃんと行くよ。楽しみだもの。美久ちゃんや美羽ちゃんとご飯食べるの」
「わあっ。うれしいな」
「素直に喜ぶよな、美久は。ま、あたしもうれしいけどさ。けど鍋かー。あねきも不思議なことするよなー」
「おねえちゃんもうれしいんじゃない?」
「なにが?」
「響さんがうちに来ること」
それはどうかな、と響は思った。響は最近よく雨宮家を訪れているからだ。
むしろ今日特別なことと言えば――
「思いつきましたか美羽さん」
「あなたも思いついたみたいですなあヒビキさん」二人顔を見合わせてニヘヘと笑った。
「え?なに?なんのこと?」美久は一人不思議がっていた。




