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シーン50:暑さを感じる季節

 響は目の前の兄の暗い顔を見て、ため息をついた。最近すごく明るくなったのに、うちではなにも変わらないんだな。というよりも、我が家の食卓では、か。

「ひ、ヒビキねえちゃん、どうしたの?朝だねおはよう、みたいな顔してるよ。ほら、ぼくのピーマンあげるから元気出して」

(はやぶさ)………。憂鬱な顔してると言いたいんだろうけど、わたし朝は強い方だよ。そしてピーマンは自分で食べな」

「えー。じゃ、ハガネにいちゃんあげるよ」

「…やっぱり自分が食べたくないだけなんだ」

 あ、兄さん食べた。弟に甘いな。


 夕食の後、響が霧崎の部屋を訪ねると、霧崎は「よっ」と片手を挙げて迎えてくれた。やっぱり明るくなったな、と思った。

「相変わらず汚い部屋だね」響は床に散らばっている本やらなんやらをどけて、一人分のスペースを作って座った。「掃除しなよ」

「やだよ、めんどい」霧崎も床にスペースを作って座っていた。いや、違う。兄さん、本の上に座ってる。

「兄さんは本を大事にしない人だね」

「本は読むものだからね」

 そんなもんか、と響は思った。

「で、なんか用?」

「最近雨降らないねえ」

「もうそんな時期も過ぎたんだろうな」

 あれからさらに数日経って、日々の生活に暑さを感じる季節になっていた。

「兄さん、あれから一回も雨宮さん家行ってないでしょう」

「そうだったかな」

「そうだよ。なんで行かないの?雨宮さんとの喧嘩は終わったよね。なのに……」

「あんときは響にも迷惑かけたなあ」

「かけられたねえ………。じゃなくて!要するに、わたしのせいなんだよね。わたしのこと心配してるから、雨宮さん()いけないんだよね。………そんなの、嫌だからさ」

「別に響のせいじゃないよ」

「いや、兄さんはわたしのこと心配してるよ」

「してないよ」

「してないの!」響は泣く真似をしてみせた。「兄さんがそんな薄情な人だとは思わなかったよ。うわぁぁん」

「……響、なんかノリが雨宮さんみたいだ……」

「とにかくわたしは大丈夫だからさ。兄さんは兄さんのやりたいようにやりなよ」

「……」霧崎はちょっと考えた。確かに最近の響は元気だ。帰宅する時間も遅くなり、友達と夕食をとってくることがあったくらいだ。もう部活を止めたショックは消えているのかもしれない。「じゃ、そうするかな」

「ほんと!」響は顔を輝かせた。「いつ?明日?ああ、楽しみだなあ。美羽ちゃんも美久ちゃんも喜ぶだろうなあ。わたし、わくわくしてきちゃったよ」

「なんで響がわくわくするんだよ。響が行くわけでもないのに……」

「えっ、行くよ?」

「行くの?!」

「だって、雨宮さん家よく行ってんだもん」

「…………え、今なんて?」

「だから、わたしよく雨宮さん家寄って帰ってるもん。このあいだなんか、夕食ごちそうになっちゃった!」

 霧崎は口をあんぐりと開けたままぽかんとしている。

「美羽ちゃんも美久ちゃんも兄さん連れて来いってしつこくてさ。ほんと、兄さん慕われてるよね」

「なんだそりゃあ!!!」霧崎は活動を再開した。「おれは今までなにしてたんだ?!」

「ねー。なにしてたんだろうねー」

「言えよ!雨宮さん家行ってんだったら」

「だってさ、兄さんのその反応が見たかったから。美羽ちゃん美久ちゃんにも話してあげようっと」

「なんだよそれ!……響はまともな人間だって、兄さん信じてたのに」

「いや、兄さん人のこと言えないって」


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