表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/100

シーン46:メール

「で、あねき、どうすんだ?」

「おにいちゃんと仲直りしないの?」事の次第の説明を終えて、雨宮家には平穏が訪れていた。

「仲直りって。向こうが悪いんだからさ、向こうが謝ってこないことには、どうしようもないよ」

「けど、おねえちゃんだって、おにいちゃんの話ちゃんと聞いてあげなかったんでしょう?」

「そりゃそうだけど………」

「あーあ、これでもうハガネに会えねーのかなー」

「そんなことは、ないだろうけど………」

 ――そのときメールの着信音が鳴り響いた。

 ものすごい勢いで、雨宮は携帯を確認する。「………迷惑メールだった」肩を落とした。

「おねえちゃん、おにいちゃんみたいだよ!」

「霧崎みたい?」


・・・


――あるクラスメイト|(匿名希望)による霧崎鋼についての証言|(プライバシー保護のため音声は変えてあります)――

 正直言ってぇ、暗い、の一言に尽きますね。あいつが誰かと話しているとこ見たことないしぃ、休み時間とかぁ、いっつも本読んでるか、机にうつぶせて寝た振りしてるかでぇ。いや、みんな嫌ってるとかないですよ。なんていうか、空気?いてもいなくてもいい存在、みたいな?というか、いるのかいないのかわからないっていうかぁ。そうそう、あたしなんて、最近まで、顔も良く覚えてなくて、クラスメイトだってことがわからなかったし、名前も教えてもらうまで知らなかったんですよ。あははは。ほかのみんなも、そんな感じじゃないんですかねぇ…。


・・・


「………いやだぁぁぁ!あたしまでそんな印象になるのわぁぁぁ」

「おねえちゃん、肩を落としてる様子を言っただけだよ………」

「それにしてもあねき、ものすごい勢いで携帯に飛びついたじゃねーか」美羽はニヤニヤしている。「そんなに、ハガネからのメールが恋しいのかよ」

「なに言ってるの美羽。普通だよ」

「でもさー、今ごろハガネ、あねきにメール打とうとしてるかもよ?」

 別に、そんなもん求めてないもん、と雨宮は呟いた。




 夕食後、響が自部屋でくつろいでいたところ、ドアにノックがあった。開ける。そこには深淵の闇から現れたものがいた。

「妖怪?!………よく見れば、兄さんじゃん」

「人のこと妖怪扱いするなよ」

 いや、兄さんの顔はそれくらい暗くなっている。さっきもかなり暗い顔していたけど、今はさらに二乗された暗さだ。

 ………このまま行けば兄さんは本当に妖怪化してしまうかもしれない。いやいやいや、見たいなんて思ってない。思って、ないですよ?

「あー、兄さん、雨宮さんにメール送ったんだ。そして、冷たい返信があったんだね?」

 霧崎は首を横に振った。「なにを書いていいか、思いつかないんだ」

「あのねー兄さん。自分の思ったことを思ったとおりに書けばいいんだよ。それとも電話する?」

 霧崎はさっきよりも勢いよく首を振った。「そんなこと、できるわけないだろ!」

「じゃ、もう謝らなければいいんじゃない?別に謝らなくてもいいような人なんでしょう?」

「そ、そんな冷たいこと言わないでくれよ………。ぼくには、響くらいしか頼れる人間がいないんだ」

 はて……、この間まで、あたしのほうが兄さんに相談してたんじゃなかったっけ?なんでこんな急に立場が逆転してるんだ?

「ま、いいか。じゃあ、わたしがなんとかしてあげるよ。兄さん、携帯出して」

「はい」霧崎は簡単に自分の携帯を差し出した。この兄は、見られたくないとかないのだろうか。

 響はしばらく霧崎の携帯をいじっていた。それから「はい」と返した。

「なにしたの?」

「送っといた」

「………………はい?」

 確認すると、送信フォルダに、確かに雨宮宛のメールがあった。



件名:(なし)

本文:ごめんなさい



「これだけ?」

 響は笑顔を見せた。「こういうのは、変に装飾するよりも、スパッと伝えたほうがいいんだよ」

「そうかなあ………」

 着信音が鳴った。霧崎と響は、メールを確認してみた。



件名:Re.

本文:死ね



「ねえ兄さん、雨宮さんって、頭に『ヤ』のつく自営業の人?」

「………………………………違うよ」霧崎は消え入りそうな声で呟いた。




「………………あねき、なんでそんなの送ったの?」

「………………せっかく、おにいちゃん謝ったのに」

「自分でもびっくりだよ………」雨宮は頭を抱えていた。「メールが来たことにびっくりして、頭が真っ白になっちゃって、つい………」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ